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【ヤマ太♀】decrescend



(そういえば音、聴こえないな。)

マグカップに口をつけて初めて空になったのだと思い出し、ヤマトは重い腰を上げて立ち上がる。そこでふと、先程まで別室からもれていたピアノの音が聴こえないことに気が付いた。ポットにお湯を入れてスイッチを押す。一人暮らしのときは鍋に水を入れて火をつける作業に面倒くささを感じなかったが、太一と同棲を始めてからは「いちいちめんどくさい!」という太一の言葉により、電動式ケトルを買った。ゴボゴボと音を鳴らしながら温まっていく湯を確認して、ヤマトはピアノのある部屋の扉を優しくノックする。

「太一…?」

少し控えめに名前を呼ぶが、中から返事はない。ヤマトはそっと扉に耳を当てる。やはりピアノの音は聞こえない。ゆっくりと扉を開けると、蓋が閉まったアップライトピアノの上に腕を乗せ、もたれ掛かるようにして太一が座っていた。近づいて顔を覗けば、すぅ、すぅ、と規則正しい寝息を立てて眠っている。ヤマトはため息をつくと太一の髪をくしゃりと撫でた。「んんっ、ぅ…」とくすぐったそうに身をよじりながら太一は呻くが、起きる様子はない。ヤマトは一度リビングへ戻ると、大きめのブランケットを取り出して部屋に戻った。起こさないように優しく肩にかける。ほんの少し微笑んだ太一に苦笑しながら、額にちゅっ、とキスを落とした。パチリと部屋の電気を落として部屋を出る。それに合わせたようにカチリとケトルの音が鳴った。





「ん、んんぅ~~~~………」

「太一、起きたのか?」

「んんぅ~……」

扉が開く音が聞こえてヤマトが振り返れば、太一がまだ閉じた目を擦りながらよたよたと部屋から出てきた。「目を開けないとぶつかるぞ」と声をかけた瞬間、壁にゴツンと頭をぶつけたらしく「う"ぅ"~~…!」と唸る。そのままふらつく足取りで洗面台へと向かうと、バシャバシャと水が飛び散る音が聞こえた。顔でも洗っているのかと思ってヤマトはソファに座り直す。時計をちらりと見れば、針はちょうど夜の10時を指していた。マグカップに微妙に余った珈琲を飲み干して流しへ置くと、色が移らないように水を流し込んだ。洗面台からシャカシャカと歯磨きの音が聞こえる。そういえば明日は一限目から授業があるとか言っていたな、なんてヤマトは思い出す。

ふと、先程見た太一の寝顔を思い出す。もう冬だというのに首周りがヨレヨレのTシャツを部屋着にしていて、鎖骨から胸元にかけてがよく見えていた。時折ひくつく唇の厚みを思い出しながら、ヤマトははぁ、と一つ息を吐いた。それに熱が帯びていることを、ヤマトだけが気付いていた。

太一は眠い目をこすりながらとたとたとキッチンへ移る。冬に近づいてくるとどうしても喉が乾燥してしまう。時折けほけほと咳を零しながら太一は蛇口を捻って水をコップにたっぷり注いだ。そのまま喉に流し込むと、乾燥してかさついた喉が潤っていくのを感じた。先程まで感じていた咳の感覚がなくなり、ほっと腕を下ろす。コップを定位置に戻して、寝るか、と腕を上へ伸ばした途端、上げていた手をぐいっと横に引っ張られた。「うわっ…!?」と小さく声を上げながら太一は足を出そうとするが、もつれて上手く支えきれない。倒れる…!と目を瞑った瞬間、ぼすんと固い何かに支えられた。視界に広がる見慣れた部屋着に、太一は顔を上げて睨みつける。

「おまっ、危ねぇだろ、!っんむぅ…!」

顔を上げた途端頬を掴まれ、唇を塞がれた。抵抗を見せようと、とんとんとヤマトの胸元を軽く叩くが、それも許さないと片手で手首を掴まれてしまった。もう片方の手は離さないと言いたげに太一の腰に添えられてぐっ、と引っ張られる。豊満な胸元がヤマトの鍛えられた胸に押し付けられて、それだけでヤマトは興奮を抑えきれずに顔を顰める。逃げようとする太一の舌を吸って、怯んだその隙に自身の舌と絡み合わせる。執拗に唾液を流し込み、上顎を撫でてやれば、最初は睨みつけるように鋭かった目が、今は耐えるようにぎゅっ、と閉じられている。時々震える睫毛が愛おしくてそればかり目で追ってしまった。ふるふると小刻みに震える太一に気が付いて、ヤマトはゆっくりと口を離した。つぅ、と繋がる銀の糸を舐めとるように太一の唇に再度触れるだけのキスを落とせば、「んぁ…」と可愛らしい声がもれた。はー、と震えた息を吐く太一の髪を撫でれば、太一は潤んだ瞳で睨み付けてきた。

「~~~ヤマト…!!」

「すまん………太一、シたい…。」

そう言って太一の肩に顔を埋める。ヤマトの熱い吐息にびくりと太一は身体を震わせながら「…ッ、やだ…!明日、授業あるんだよッ…!」とヤマトの胸元を押した。その力が随分と弱くてヤマトは顔を近づけた。それを塞ぐように太一がヤマトの顔を手で覆うが、ヤマトは目を細めるとペロッとその手を舐める。「ひっ…!」と引きつった声を上げる太一に気を良くし、そのままはむはむと甘噛みしながら指に舌を這わせた。わざとらしくぴちゃぴちゃと音を鳴らせば、はっ、と太一が息をもらす。ヤマトは指を優しく口の中に迎え入れるとじゅうっ、と吸い付く。

「や、めっ…!」

「やめないよ、太一。」

ヤマトは太一の耳元に顔を近づけて囁く。そのまま耳内に舌を入れ込み入口を舐める。音を立てて唾液を塗れば、太一はぎゅうっ、とヤマトの背に手を回して服を掴んだ。ヤマトは太一の腰を引き寄せると足の間に自身の足を入れ込む。そのまま身長差を利用してぐっ、と持ち上げれば、服の上から刺激されて太一は甘い声をもらした。そのまま強弱をつけながらソコを刺激する。どんどんとソコが熱を持っていくのが自身の太ももから伝わってきた。蒸れる感覚に、あぁ今こいつ濡れてきてるななんてヤマトは考えてしまう、じゅるっ、と耳元で音を立てて甘噛みをすれば、太一は震える瞼を大きく開いた。

「ひぁ…!や、やまと、やだ…!やめて、イッ、イッちゃ、!やまと!ヤダ、やだって…!ぁ、ぁ、イく…、!ンん、やぁ…!」

「ふっ、んむっ、…イけ、太一。」

「はっ、ぁ"、────あああ…!!」

ビクンッ、と背を仰け反らせて太一は絶頂した。ぎゅっ、と力の籠った足指が縮こまり、痙攣のせいかカリカリと爪が床を引っ掻いた。縋り付くようにヤマトの胸元の服を掴み、止まらぬ痙攣に「はっ、ぁ、…!」と甘い声をもらす太一に、思わずヤマトはちろりと自身の唇を舐めた。とん、とん、と太一の背中を優しく叩いてやれば、息の仕方を思い出したようにゆっくりと呼吸を始める。そのまま足で支えて太一をもたれさせる。肩に顔を埋めてすぅ、と息を吸えば火傷しそうなほど熱の篭った体から漂う雌の香りに頭がクラクラした。

「太一……ベッド、行こう…」

懇願するようにヤマトがそう呟けば、太一はヤマトの頭をくしゃりと撫でて「…かってにしろ……。」と呟いた。





「結局こんな時間だよ…」

「すまんって、太一。飲み物いるか?」

「………お茶。」

ぶすーっ、と頬を膨らませながら太一は唸った。太一が手に取ったスマホには「3:00」の文字が表示されている。おれは何時間寝れるんだよ、と愚痴をこぼしながら痛む腰を押さえた。歯磨きも風呂も先程ヤマトに手伝ってもらいながら済ませた。もうあとは寝るだけだと枕に顔を埋める。ぱたんと扉が閉まる音がして太一が顔をあげれば、申し訳なさそうに眉を下げてコップを手に持つ恋人の姿が見えた。

「太一、お茶持ってきたぞ。」

「んっ!起こして!」

「はいはい。」

コップを近くのテーブルに置いて背中に手を回す。優しく起こしてやれば「腰いって…」と太一が顔を顰めた。許しを乞うように頬にキスをすれば、「早くお茶ちょーだい」と流されてしまった。コップに並々と注いだお茶を勢いよくあおる。ほんのちょっとだけピリッとした痛みをあげていた喉が安らいだ気がした。明日声枯れてないといいな、なんて思う。コップをテーブルに置いてベッドに寝転がる。ヤマトも空いてる場所に横になって太一の髪をといた。

「明日寝坊したらヤマトのせいにするからな…」

「ちゃんと起こすよ。」

「7時ね…ちゃんと………起こせよ…」

「わかってる。」

会話している間にもどんどん太一の瞼は降りていく。抗おうとぱちぱちと動く睫毛が可愛らしい。ヤマトが優しく抱き寄せれば、温もりを欲したのか胸元に額を擦り付けてそのまま規則正しい寝息を立て始めた。ヤマトもそのまま目をつむる。胸元から伝わってくる温もりを逃がさぬように強く抱き締めた。

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