【ヤマ太】紅葉色に染めて
ぶわり
途端に視界に広がるのは目に焼き付くほどの橙色で。空からおっこちるように心地よい風を受けながら、その橙色に飛び込むように体を翻す。
橙色のそれが紅葉だと分かったのは随分と降りてきたときだった。
そして俺の身体にまとわりついていた風がふわりと音を立てて紅葉を浮かせる。紅葉が散ったそこへ誘われるように手を伸ばせば、そこに見えたのは見慣れた姿で。
彼は紅葉に包まれ眠っている様に目を閉じている。
「たい、ち。」
その名前を呼べば、彼はゆっくりと目を開けてこちらを見つめる。その表情にはっ、と息をもらせば、彼はにっこりと笑ってその両の手を俺の頬に添えた。
「やっと落ちてきたな、ヤマト」
あぁ、あぁ、あぁ…!
自分で頬が赤くなっていくのがわかる。自身にまとわりついてふわふわと浮いていた紅葉もまたどんどん紅へと染まっていく。
この恋が、熟してしまったというのか。
「……あぁ、落ちてきちまった。」
そう言って俺が笑えば、太一もまたにぱっ、と笑った。
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