【ヤマ太←光】深碧の瞳
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『喧嘩しちゃった。』
ピロン、無機質な通知音が部屋に鳴り響いた。光子郎は自身のスマホを手に取り画面を見る。『すぐに行きます。』と、手短に伝えるとすぐに手荷物をまとめて上着を着る。太一の家に着くと一応チャイムを鳴らしたが、返事も玄関に駆けてくる足音も聞こえない。こういう時はだいたい家の鍵は開いていて、自分が入ってきても太一は何も言わないことを、光子郎は知っていた。
「………失礼します。」
光子郎は重い玄関の扉を開けると、とたとたと太一の部屋へ向かう。扉を開けると太一はベッドの上、布団を被って体育座りをしていた。怒りに震えているのではなく、こうして自分の殻にこもり悲しみが去るのを待つ姿は、ただの言い合いや殴り合いではなくもっとひどい喧嘩をしたのだろう。
「……太一さん、大丈夫ですか…?」
「……………こうしろー…」
「はい、なんですか?」
「…………おれ…きらわれたかもしれない……」
震えた彼の声が泣いているのだと理解するのに時間はかからなかった。光子郎はカバンの中から救急箱を取り出すと、太一が座っているベッドの上へ移る。
「…怪我、してないですか?」
「…………してない…」
「痛みは?」
「………ない…」
「そうですか、良かったです。」
ぽろぽろとこぼれ落ちる涙をハンカチで拭いてあげながら、ただ寄り添うように隣に座った。カチッ、カチッ、と時計の音だけが響くが、この沈黙の空気を別に居心地悪いと思ったことはなかった。
「………こうしろーは…優しいな…」
ふと、太一がそう呟いた。そんな事ないですよ、と返すと、またこの部屋に沈黙が訪れた。
自分は優しくなんかない。
今だって、弱っているあなたにつけ込んで自分のものにしたいと思っている。
あなたをすぐ泣かせるような彼なんか放っておいて僕のところへ来て欲しいと思っている。
そんな自分の気持ちを、光子郎は飲み込んだ。ピンポーン、チャイムの音が響く。このタイミングでの訪問など、あの人しかいない。太一も光子郎もわかっていた。
「……太一さん、出ますか?」
「………うん。」
「じゃあ僕が呼んできますね。」
そう言うと光子郎は立ち上がり、荷物をすぐにまとめるとカバンを背負う。それでは、と短い挨拶をすると、弱々しいけれどいつも通りの「こうしろー、ありがとな。」という太一の声が聞こえた。光子郎はその言葉を受け止めると、部屋をあとにし、玄関の扉を開ける。そこに居たのは予想通りちょっと気まずそうに立つヤマトの姿だった。
「お前、来てたのか…」
「はい。太一さんは自室にいます。」
「そうか、ありがとう。」
そう言うと、ヤマトは玄関に入り靴を脱ぐ、それと並行するように光子郎は靴を履き再び扉を開けた。
「お前も大変だな。毎回落ち込んだ太一の相手してるのか?」
その言葉に、光子郎は何故かむちゃくちゃ腹が立った。
踵を返し部屋へ上がろうとするヤマトを押し倒す。いてっ!と声を上げるヤマトを無視して、光子郎は倒れたヤマトを見下ろした。
「…僕が欲しいものを何でも持っているあなたに何がわかる…?…………僕がどうしても欲しかった彼の隣も彼自身も持っているあなたになにがわかる?………嫉妬に狂う僕の目には、さぞ緑が映えるでしょうね。」
そう言い放つ光子郎の目のなんとも言いがたいどろどろとした『緑』に、ヤマトは一瞬息が止まった。呆然と固まるヤマトを尻目に、光子郎は太一の家をあとにした。胸の中に残るどろどろとした感情を押さえ込んで、急ぐように自分の家へと駆け出した。自室に飛び込むと、そのままベッドに横になる。ポケットから取り出したハンカチには、まだ太一の涙のあとが残っていた。そのあとを優しく撫でながら、光子郎は目を瞑った。
ピロン、無機質な通知音が部屋に鳴り響いた。光子郎は自身のスマホを手に取り画面を見る。『すぐに行きます。』と、手短に伝えるとすぐに手荷物をまとめて上着を着る。太一の家に着くと一応チャイムを鳴らしたが、返事も玄関に駆けてくる足音も聞こえない。こういう時はだいたい家の鍵は開いていて、自分が入ってきても太一は何も言わないことを、光子郎は知っていた。
「………失礼します。」
光子郎は重い玄関の扉を開けると、とたとたと太一の部屋へ向かう。扉を開けると太一はベッドの上、布団を被って体育座りをしていた。怒りに震えているのではなく、こうして自分の殻にこもり悲しみが去るのを待つ姿は、ただの言い合いや殴り合いではなくもっとひどい喧嘩をしたのだろう。
「……太一さん、大丈夫ですか…?」
「……………こうしろー…」
「はい、なんですか?」
「…………おれ…きらわれたかもしれない……」
震えた彼の声が泣いているのだと理解するのに時間はかからなかった。光子郎はカバンの中から救急箱を取り出すと、太一が座っているベッドの上へ移る。
「…怪我、してないですか?」
「…………してない…」
「痛みは?」
「………ない…」
「そうですか、良かったです。」
ぽろぽろとこぼれ落ちる涙をハンカチで拭いてあげながら、ただ寄り添うように隣に座った。カチッ、カチッ、と時計の音だけが響くが、この沈黙の空気を別に居心地悪いと思ったことはなかった。
「………こうしろーは…優しいな…」
ふと、太一がそう呟いた。そんな事ないですよ、と返すと、またこの部屋に沈黙が訪れた。
自分は優しくなんかない。
今だって、弱っているあなたにつけ込んで自分のものにしたいと思っている。
あなたをすぐ泣かせるような彼なんか放っておいて僕のところへ来て欲しいと思っている。
そんな自分の気持ちを、光子郎は飲み込んだ。ピンポーン、チャイムの音が響く。このタイミングでの訪問など、あの人しかいない。太一も光子郎もわかっていた。
「……太一さん、出ますか?」
「………うん。」
「じゃあ僕が呼んできますね。」
そう言うと光子郎は立ち上がり、荷物をすぐにまとめるとカバンを背負う。それでは、と短い挨拶をすると、弱々しいけれどいつも通りの「こうしろー、ありがとな。」という太一の声が聞こえた。光子郎はその言葉を受け止めると、部屋をあとにし、玄関の扉を開ける。そこに居たのは予想通りちょっと気まずそうに立つヤマトの姿だった。
「お前、来てたのか…」
「はい。太一さんは自室にいます。」
「そうか、ありがとう。」
そう言うと、ヤマトは玄関に入り靴を脱ぐ、それと並行するように光子郎は靴を履き再び扉を開けた。
「お前も大変だな。毎回落ち込んだ太一の相手してるのか?」
その言葉に、光子郎は何故かむちゃくちゃ腹が立った。
踵を返し部屋へ上がろうとするヤマトを押し倒す。いてっ!と声を上げるヤマトを無視して、光子郎は倒れたヤマトを見下ろした。
「…僕が欲しいものを何でも持っているあなたに何がわかる…?…………僕がどうしても欲しかった彼の隣も彼自身も持っているあなたになにがわかる?………嫉妬に狂う僕の目には、さぞ緑が映えるでしょうね。」
そう言い放つ光子郎の目のなんとも言いがたいどろどろとした『緑』に、ヤマトは一瞬息が止まった。呆然と固まるヤマトを尻目に、光子郎は太一の家をあとにした。胸の中に残るどろどろとした感情を押さえ込んで、急ぐように自分の家へと駆け出した。自室に飛び込むと、そのままベッドに横になる。ポケットから取り出したハンカチには、まだ太一の涙のあとが残っていた。そのあとを優しく撫でながら、光子郎は目を瞑った。
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