青くまどろむ
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前々から申請していた休暇の日。
凛音は先日訪れた際に気になった店へ再び足を運び、久しぶりのショッピングを楽しんでいた。
屋敷を出るとき、XANXUSから無駄に念を押されている。
『携帯は絶対持っていけ』
理由はわからなかったが、珍しく強い口調だったことが気になっていた。
それでも今日は、少しだけ日常を離れる時間。
カバンに買ったものをしまいながら、気持ちを切り替えて街を散策する。
「このあとはどこを見るんだぁ?」
背後から、聞き慣れた低い声。
「えぇっと……あとは食材を買って帰ります。
スクアーロ様は何か見なくてよろしいのですか?」
実は――スクアーロがお供についてきていた。
屋敷を出た瞬間、
『丁度休暇だぁ。付き合ってやる』
と勝手に同行。
荷物をひょいと奪い取り、気づけば完全な護衛兼荷物持ちと化していた。
「今日のお礼です。スクアーロ様、何か食べたいものありますか?」
「マグロのカルパッチョ。……てか街中で“様”はやめろ」
「すみません、つい癖で」
二人の会話は普段通り。
イタリアの柔らかな陽射しの中、ゆるやかな時間が流れていた。
――その“異変”を見るまでは。
歩いていると、通りの向こうから日本人の姿が目に入った。
イタリアで日本人を見るのは珍しくない。
それなのに、なぜか視線が離れなかった。
その人物が凛音の横を通り過ぎようとした、その瞬間。
「……お久しぶりです。お嬢さん」
「えっ……、!?」
時間が止まった。
耳が覚えている。
心が覚えている。
――とうの昔に、死んだはずの人物の声。
咄嗟に振り返る。
しかし男はそのまま歩き去っていき、雑踏に紛れた。
凛音の足は地面に縫い付けられたように動かない。
胸が強く締め付けられ、息がうまく肺に入らない。
「凛音……凛音!」
ごそっと肩を掴まれ、やっと我に返る。
「ぁっ……スク……スクアーロ様……」
「……帰るぞぉ」
低く押し殺した声だった。
凛音の表情――
一瞬だけ“昔に戻ったような顔”をした、その変化。
スクアーロはその意味を理解していた。
予想よりも早く、事が動き始めている。
舌打ちが喉奥で響く。
(……クソッ。もう動いてやがるのか)
スクアーロは凛音の腕をしっかりと掴み、歩き出す。
呼びかけても返事が遅れる彼女の様子も、震える指も、すべて見逃さない。
「……」
二人とも一言も話さないまま、夕暮れの街を早足に歩いた。
買い物の袋を抱えるスクアーロの横で、凛音はただ俯いたまま。
あの声が、何度も脳裏で反響していた。
――“お嬢さん”
屋敷に戻るまで、暖かな陽射しはもう一度凛音を照らしてくれることはなかった。
凛音は先日訪れた際に気になった店へ再び足を運び、久しぶりのショッピングを楽しんでいた。
屋敷を出るとき、XANXUSから無駄に念を押されている。
『携帯は絶対持っていけ』
理由はわからなかったが、珍しく強い口調だったことが気になっていた。
それでも今日は、少しだけ日常を離れる時間。
カバンに買ったものをしまいながら、気持ちを切り替えて街を散策する。
「このあとはどこを見るんだぁ?」
背後から、聞き慣れた低い声。
「えぇっと……あとは食材を買って帰ります。
スクアーロ様は何か見なくてよろしいのですか?」
実は――スクアーロがお供についてきていた。
屋敷を出た瞬間、
『丁度休暇だぁ。付き合ってやる』
と勝手に同行。
荷物をひょいと奪い取り、気づけば完全な護衛兼荷物持ちと化していた。
「今日のお礼です。スクアーロ様、何か食べたいものありますか?」
「マグロのカルパッチョ。……てか街中で“様”はやめろ」
「すみません、つい癖で」
二人の会話は普段通り。
イタリアの柔らかな陽射しの中、ゆるやかな時間が流れていた。
――その“異変”を見るまでは。
歩いていると、通りの向こうから日本人の姿が目に入った。
イタリアで日本人を見るのは珍しくない。
それなのに、なぜか視線が離れなかった。
その人物が凛音の横を通り過ぎようとした、その瞬間。
「……お久しぶりです。お嬢さん」
「えっ……、!?」
時間が止まった。
耳が覚えている。
心が覚えている。
――とうの昔に、死んだはずの人物の声。
咄嗟に振り返る。
しかし男はそのまま歩き去っていき、雑踏に紛れた。
凛音の足は地面に縫い付けられたように動かない。
胸が強く締め付けられ、息がうまく肺に入らない。
「凛音……凛音!」
ごそっと肩を掴まれ、やっと我に返る。
「ぁっ……スク……スクアーロ様……」
「……帰るぞぉ」
低く押し殺した声だった。
凛音の表情――
一瞬だけ“昔に戻ったような顔”をした、その変化。
スクアーロはその意味を理解していた。
予想よりも早く、事が動き始めている。
舌打ちが喉奥で響く。
(……クソッ。もう動いてやがるのか)
スクアーロは凛音の腕をしっかりと掴み、歩き出す。
呼びかけても返事が遅れる彼女の様子も、震える指も、すべて見逃さない。
「……」
二人とも一言も話さないまま、夕暮れの街を早足に歩いた。
買い物の袋を抱えるスクアーロの横で、凛音はただ俯いたまま。
あの声が、何度も脳裏で反響していた。
――“お嬢さん”
屋敷に戻るまで、暖かな陽射しはもう一度凛音を照らしてくれることはなかった。
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