ネモフィラの追憶
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遠い、遠い昔。
まだ私が平和な世界で生きていた頃。
毎年桜を見に近くの神社まで行っていたのを思い出した。
その神社は言わば穴場スポットで、週末でもあまり人が来ないため、ゆっくりと花見が出来た。
今世はそんな時間もない為、花見なんて一度も行ったことがないけど、いつか、一度でいい。
桜を見てみたい。
きっと綺麗なんだろうな。
ふわふわ、ひらひら。風に吹かれて散ってしまう桜たちが、まるで空中でダンスをしているみたいに。
そして、毎年、そんな桜の木の下でうたを歌うのだ。好きな歌を。毎回歌を変えて。
楽しかった。
幸せだった。
何気ないその一日が、その一瞬が。
今の私にはない平和なその一日が、とても幸せだった。
「いつから、間違えちゃったのかな」
零れ落ちた声は誰かに拾われる事もなく、静かに、空気へ溶け込んでいった。
両手にこびりついた赤い血は取れなくて、日を重ねるごとに酷く濃くなった。
一体どれ程の人を殺したんだろう。
前世の記憶があると役に立つと思っていたけれど、今はそれさえも苦しめる原因になってしまった。
「・・・早く迎えに来て、死神さん」
まだ見ぬ小さな探偵を、そっと声に出して呼んでみた。