ネモフィラの追憶
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「沢山の人が死に、沢山の悲しみと絶望でこの世は染まってしまった。
─────原因はただ一つ。
鬼が居るからこうなった。
…こんな悲しい世界、一体誰が望んだの?」
ぽつりと呟いた名前さんからは酷い怒りの匂いがした。でもそれと同時に深い悲しみの匂いもした。
やっぱり名前さんは鬼を恨んでいるんだろうか。
誰よりも優しく、鬼になってしまった禰豆子に唯一、柱合会議の時、庇うことこそしなかったがそれでも、柱の中で一人だけ、敵意を出さなかった人。
だからこそ、忘れていたんだ。
鬼殺隊に入る人はほとんどが大切な誰かを鬼に奪われた人達だという事を。
名前さんだって例外じゃないはずだ。
大切な誰かを失い、そうして柱にまで上り詰めたのだろう。その悲しみはきっと誰にも計り知れない。
「…私はね、炭治郎」
すぅ、と小さく息を吸ったかと思えばゆっくりとこちらに振り向いた名前さんは、いつもの優しい顔ではなく、何処か悲しみの色を帯びていた。
「…私は、鬼が嫌いだとかそんなんじゃないの。そりゃあ勿論鬼に対して良い思いはしてないよ。だけどそうじゃない、鬼をつくってしまった神そのものが私は嫌いなの」
「…え」
「人は皆神に救いを求めるけれど、神が人の味方だった事は一度もない。もし味方になっていたらこの戦いは数百年もしていないでしょう?」
そう言われてふと考えると、確かにそうだ。
けれど俺にはよく分からない。全ての原因である鬼舞辻無惨が悪いのでは?
今もこうしている間に、あいつは鬼を増やし続け、力を強めていっている。
鬼の頭領である鬼舞辻無惨を悪だと言うのなら納得行くものの、神様について話しだした名前さんが、俺にはよく分からなかった。
「分からなくていいんだよ。炭治郎は炭治郎の中の悪を倒せばいい。これは私の中の悪についてのお話なんだから」
「よく、分からないです。俺の中の絶対的悪は鬼舞辻無惨ですが、名前さんの場合は神様なんですよね?なぜ、神様が悪なんですか?」
「…こんな悲しい世界を作ったからよ。鬼も人も、救われない世界なんて創らなければ良いのに」
「……」
「きっとね。炭治郎は一生分からないと思うよ。私でさえ分からなかったもの」