ネモフィラの追憶
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「最近はだいぶ暖かくなってきましたね」
『む、そう言われればそうだな!だがまだ夜は冷えるな!』
「そうそう。夜は暖かくして眠らないと風邪を引いちゃいそうです」
『君は存外体を壊しやすいからな!十分に気をつける様に!』
「…分かってますよ。自分で管理くらいできます。杏寿郎さんにはいつも口酸っぱく言われてきたのでそこら辺は大丈夫ですよ」
『本当か?まあ君がそう言うのなら信じよう!』
そう言って少しだけ彼女がちらりと何処か遠い場所を見つめているので視線を辿ると1本の木が生えていた。
「…ああ、杏寿郎さん。見てください、あそこの木、少し蕾がありますよ。……梅でしょうか?」
『ああ!あれはきっと梅だろう!しかし咲くのはまだまだ先の様だな!』
「まだ先……ですね。でもきっと綺麗でしょうね。あんなに立派な木なんですもの。沢山咲かせてくれるはずです」
『ああ…、あれだけ大きな木だと咲いた時は見事だろう』
「…ふふ、こんな事を話していたら春が近づいているのが余計に分かりますね」
『そうだな!梅の次はきっと桜が咲くだろう!ここから少し下の麓に桜の木があるから梅を見たら次は桜を見に行くと良い!』
「そうですねぇ、梅の次は桜。なんてのも良いですね」
『桜は君にとても良く似合う花だな。出来れば庭に埋めて一緒に夜桜でも見てみたかったものだ。君は恥ずかしがって嫌がるだろうか』
「…私は貴方と見たかったです。貴方と一緒に梅も、桜も、色んなものを…、杏寿郎さん。貴方と一緒に」
『……よもや、君はそんなに積極的だっただろうか!』
「私がこんなに積極的になったのは、杏寿郎さんが中々誘ってくれないからですよ、この意気地無し。私は貴方からのお誘いならなんでも嬉しかったのに」
『む!それはすまない!意外に緊張してしまって中々誘えなかった!存外恥ずかしいものだった!』
「そう言えば誘いたいのに誘えなくて悶えていた杏寿郎さんはとても可愛らしかったですよ」
『よもや!!君そんな事を思っていたのか!?と言うより気付いていたのか!全く持って恥ずかしい!!』
「貴方はずっと気付かれていないと思っていたみたいですけどね。案外分かりやすかったですよ」
『よもや……』
「……ああ、そんな話をしていたらもうこんな時間。今日はそろそろ帰りますね」
『む、もう帰るのか!』
「日が傾くと鬼が出ますからね。明るい内に帰ります」
『それもそうだな!気を付けて帰りなさい』
「…杏寿郎さん」
『む?どうかしたか?』
「私、……やっぱり貴方と見たかったです。春も夏も、秋も、冬も。色んな所へ貴方と一緒に出掛けて色々なものを見たかった」
『……』
「また、貴方の居ない春が来ます。……もうずっと独りのまま、幾度季節を繰り返したか忘れるくらいに。」
『…名前、「なんて!少ししんみりさせてしまいましたね!すみません。それじゃあそろそろ本当に帰ります。おやすみなさい、杏寿郎さん」……ああ、おやすみ。』
『……すまない。君を一人にしてしまった。共に生きると約束をしていたのに。君を悲しませないと、約束していたのに』
もしも来世があるのなら。
今度こそ君を一人にしないと誓おう。
もう二度と、君を悲しませる事がないように。
願わくば、来世で──────────