ネモフィラの追憶
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きっと貴方は私を忘れていくでしょう。
覚えていない方が幸せだと笑うでしょう。
私は、貴方を置いて逝ってしまって、
貴方は、私じゃない誰かに生涯添い遂げたのだから。
愛していました──────零さん。
.
別れは突然だった。
不慮の事故に巻き込まれた私はあっという間に命を落としてしまって、独りぼっちを嫌う貴方を置いて逝ってしまった。
何度も、何度も死ぬなと、泣いてくれた貴方を置いて逝ってしまった事だけが心残りでこの世に留まっていたけれど、長い年月が経てば貴方は悲しみを乗り越えたかのように私じゃない別の人と結ばれてしまって。
幸せそうに笑う貴方を見て、悲しいけれど、私の居場所はもう無いから諦めて成仏したら、なんの縁か分からないけれどまた生まれ変わってしまった。
それも私が死ぬ前までの同じ世界に。
最初は驚いて混乱したけど、また零さんに会えるならって嬉しかった。
けれど運命は残酷で。同じ日に私は命を落としてしまう。そしてまた零さんが悲しみを乗り越えて新しい別の人と結ばれるのを見て強制成仏の繰り返し。
何度も命を落として、何度も何度も大切な人が悲しみ、別の人と結婚するのを見るのはだいぶ心が疲れた。
もう、こんななら、最初から出会わなければ良かったんだと避けてみるも運命は絶対に私を零さんに逢わせて結婚をさせるよう仕向けるのだ。
どうせすぐに死んでしまうのに、と何度も思った。
そしてそんな事を繰り返している内に疲れきった心が限界を迎え、ある時些細な喧嘩の時に思わず不満が漏れしまった。
「零さんだって!!私が死んだら私じゃない別の誰かと結婚するくせに!!!!」
「……は、」
「……っあ、ご、ごめ」
「…どういう事だ」
「っ!!」
「!おい待て!」
怒りを抑えたような声に怖くなり、思わず自室へと逃げてしまった。
間一髪扉を閉め、鍵を閉める。
ガチャガチャとする零さんに、やめて、と怒るとドアノブを開けようとするのはやめてくれた。
しかしドアの前に立っているのは変わらないし、怒っているのもドア越しに伝わってきている。
けど、けど…私の話をした所で分からないでしょう。
貴方はきっと、そんな事ないって言うもの。
分かってる。
でもね、そんな事が有り得てるんだよ。
私は何度も体験した。悲しかった。
私はもう一緒に生きられない。どれほど願っても零さんのそばに居る事は叶わない。
そんな中、零さんの隣に知らない女の人がいて、女の人も零さんも、幸せそうに笑ってる。
そんなのを見て正気で居られるわけないじゃない。
「…こんなにも好きなのに、……ぁ」
思わず零れた本音に静かだったドアノブか大きく音を立てたかと思うとドアノブが壊れ、零さんが部屋へ入ってきた。
その顔は未だ混乱したまま、それでいて何処か嬉しそうな顔で。