愛の痕(武田好誠)

胸から腕にかけて刻まれた、色鮮やかなタトゥー。



貴方の一部になれたそれに
私はいつも、ひどく嫉妬する。










汗ばむ肌の上ではさらに美しく、




抱き合いながらも、
私は悔しくて


このまま、貴方の体に溶け込みたい、
私も、貴方と一つになりたい、

そう、切望する。






だけど貴方はその願いを叶えてはくれない。



だから

私は、自分を見失う瞬間

力を込めて貴方の両腕に“私”を刻む。



薄れゆく視界の中で見えるのは、
その痛みに耐える貴方の顔。








私が残した爪痕が、貴方の綺麗なタトゥーを汚す、




ねぇ、どんなに貴方を愛しているか

思い知って?







小さな小さな傷跡だけが
愛しい貴方の一部になれる。





私の嫉妬だけが

貴方の体に刻まれる。







狂気じみたそれは
愛の跡

End.
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