君となら(河内鉄生)

「イヤだ!!」
「いいじゃね―か!」
「ぜぇ―ったいイヤ!!」


久しぶりのデ―ト、
“今日はどこへでも連れていってやる”
そう約束した鉄生に、私は遊園地に連れてきてもらった。


「オレだってあんなモン、乗りたくねぇのに乗ったんだぞ!」

ビシッと指差す先に見えるモノ、それは恋人達のお約束“観覧車”。


「だからってあれはムリ!!」

負けじと私が指差すのは巨大な絶叫マシン…

グリングリンとあり得ないくらい宙を旋回していて、
こんなとこまで轟音と悲鳴が聞こえてくる。

あんなのに乗ったら確実に死ぬ!!



「イヤだ―っ!!」
「うるせぇ!!今度はお前が付き合え!!」

同情じみた回りの視線を浴びながら、半ば引きずられるように私は絶叫マシンに乗せられた。


「安全ベルトを確認します」

見回る係員のおじさんに「降ろして下さい!!」そう涙目で必死に助けを求めたが
「大丈夫、大丈夫」と、笑顔で返された。


隣でワクワクしながら待つ鉄生が憎らしい。



ガチンっ

体を固定するその音に、私は芯から凍り付いた。

逃げられない…


マジでこわい…


目の前にある手すりを渾身の力で握りしめる。
もうすでに生きた心地はしない。



こわい…


ギュッと目をつぶったら、
血の気の引いた私の手に鉄生の手が重ねられた。

見ると、鉄生は笑っていた。


「オレがいるから大丈夫だって。
もし万が一があっても、二人一緒だからな」

その言葉に、私は思わず手すりを離し鉄生の手を握りしめた。


ピピピピピ…と合図の音が聞こえ、ゆっくりとマシンが動き出しす。


うっ、風が痛い…



いや、ここわい、やっぱりこわい!!


カタカタとレールを上がっていくマシン、



いっ、や






カタリ、と、
マシンが止まった次の瞬間、


ひっ、

私の体がフワリと浮いた。







「鉄生のばかーっ!!」


私はそう叫びながら、晴れた秋の空を落ちていったのだ。









ガクガクする足と、まだ血の気が戻らない指先、



「ああ面白かったな」

隣で満足げに笑う鉄生を私はにらんだ。

「もうアンタとなんか絶対来ない!!」




だけど、



私たちの手はずっと繋がれたままで、


“二人一緒だからな。”って



あの時もらった言葉が、今の私の幸せなんだ。




End.
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