アルコールがみせた夢



「飽きられたのかなぁ」


2杯目のジョッキを空けたところで、ポツリと溢された言葉。
普段は弱音を吐かないが、飲みに誘われるほど溜まってるのかと、二つ返事で誘いをうけた。


好誠が忙しくて、なかなか会えないとか、最近は電話どころか、ラインさえ既読がつかないとか、
アルコールも手伝ってポロポロと不安が言葉にされる。
そして、言葉にした不安が自らの耳に入り、今にも泣きそうな顔になる。

好誠の立場から誰にでも言えるわけじゃないから自然とオレが誘われるわけだが、まるでオレが泣かしてるみたいだ。


「なわけねーだろ」

二人でいる時のアイツの顔を思い浮かべて、事実を口にする。
女心なんてのは分からないが、男心は分かる。
好誠にあんな顔をさせられるのはコイツだけだ。


「だってさー、、、」


それでもこんな時は何を言ってもダメだと分かっている。
だから、ひたすら溜め込んだものを吐き出させて聞いてやる。辛抱強く。

出すだけ出して、自分では八方塞がりになったところでシンプルに確認してみる。


「じゃあ、別れるか?」
「イヤ」
「辛いんだろ?」
「でも、好きだもん」

知ってるよ、と思わず笑いが出てしまう。


店に入って三時間。

そろそろだ、と、会計を済ませて店を出ると「おせーよ」と、暗がりから声がかかり、はたして何本目なのか、タバコを咥えた好誠が寒そうに待っていた。



驚く顔にそっと耳打ちしてやる。
「惚れてなきゃ、迎えにこねーよ」
と。


「帰るぞ、歩きだけどな」

好誠が差し出した手、それを取ったのを確認したらお役御免。
じゃあまたな、と背を向けた。



「柳、ありがとう」



背後からのその声に、振り返らず片手だけ軽く上げ、今の今まで散々愚痴だのなんだのを言っていた顔を思い出し、愛しむように目を細めた。




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