人には言えない、心うち(武田好誠)

『どこに惚れたんだ?』


ふと部屋で、

昼間聞かれた柳の言葉を思い出す。



そう問われても、
全てだとしか思いつかなくて、
だが、そんなことを臆面もなく言うのはさすがに照れる。




「どうしたの?」

「いや。柳に返事してねーな、って思ってな」

何を?と、覗かれるように聞かれても、こっちもこっちで答えにくく、


忘れた。そう、片腕で軽く抱き寄せれば、何それ、と、目を細めて笑う。



その顔に、
我ながら情けなくも骨抜きだ・・・





「好誠?顔赤いよ?」

「・・・なんでもねぇ」






ー 人には言えない、心うち ー





答えるまでもなく、
見るやつが見れば、

全部まるわかり。



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