樹海で見る夢(天地寿)

彼は

いつも突然、
連絡もなしにやって来る。




「寿…」


ただ、一方的に


「っ!…ちょ…待って…!」
「黙れ」


私を抱きに。









気付けば行為は終わっていて

寿は大抵そのままぐったりと眠る。



愛なんてものを求めれば、
氷のような目を向けられるだけだろう。


そう、これはただの欲望の捌け口。



だけど、



私の気持ちは…








考えるだけ無駄な事だった。




ベッドの周りには剥ぎ取られた服が散乱している。

服を着けなければ、そう思っても体が動かない。













うとうとと微睡む中

「行く…な…」



微かな声に目が覚めた。



「寿…?」

今、なにか言った?



小さく声をかけたが返事はない。

眉間に険しく皺を寄せ、寿は変わらず目を瞑っている。



寝言…




だけど次の瞬間、

右腕の違和感に気付く。





知らずに捕まれていた腕、



ああ…





彼は、

寂しいんだ。









目を覚ましたら、きっといつもの彼




「ここにいるよ…」


私はここにいる。





そっと彼の体に添い、
私はもう一度目を閉じた。




樹海で見る夢。



(いつかこの温もりが、さまよう貴方の心に届きますように―)



End.
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