Last present(河内鉄生)

二人とも、ここから見える風景が好きだった。


ケンカしても、ここで並んで空を見てると、いつの間にか仲直りしていた。





―あれは



クラクラするほどの青い空を、
鉄生が仰いだ時。



「こんな空飛べたら気持ちいいだろうな―。鳥みてーにさ」


「鳥?」

柄にもないと、笑って鉄生をみれば

眩しそうに空を見て目を細めたその横顔が、
怖くて、

顔がとかじゃなくて、
本当に飛んでいきそうで


私は無意識に鉄生の腕を取った。



「何だ?」
「イヤ、別に…
空なんか飛んでも退屈だよ…
大体、鉄生には無理、重いから飛べない。墜落するよ」

「何だと?!」
「あはははは」


いつもの鉄生なのに、
手が放せなくて



「どうした?」

「行かないでね」
「あ?どこに?」

「…空」

泣きそうで、声が震えた。


「バカ行くかよ。オレはここにいる」


大きな手が私の頭をわしわしと撫で、
愛しい顔が照れたように笑った。


その顔を見て、私はようやく腕を緩めた。







あの時、貴方の腕を放さなきゃ良かったって、
今でも思うよ。

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