Valentine present(黒澤和光)
しばらくそこで待っていたけど
華は帰ってこなかった。
私は仕方なく一人で正門に向かった。
とにかく和光に謝ろう…
「…よう」
正門を抜けると、和光はいた。
壁に背をつけたその足下には、沢山の吸い殻があった。
「………和光…」
「誤解は解けたのか?」
私は小さく頷いた。
「勝手に誤解して、ごめん…」
「あの状況じゃな、」
和光はいつもと変わらなくて
「帰るぞ」と素っ気なく言ってくれた。
だけど、私は一歩も踏み出せずにいる。
「あのね和光…」
「何だ?」
もういっこ、ごめんなさいがある。
「あのね…和光に渡すチョコ…腹いせに食べちゃったんだ…」
いいながら涙がうかんだ。
私ほんとバカだ…
バレンタインなのに何にもない、
「ああ聞いた。“私が食べた”って、さっきお前の友達が言ってった」
華が?
「気にするな」
「………」
「得したから」
?
「それ」
和光の視線が、私の小指に注がれた。
「リボン?」
「ああ。
チョコね―から代わりにお前くれんだと」
え?!!
「これそういう意味のリボンなの?!」
「みたいだぜ?」
華のヤツっ!!
「だからチョコは気にするな」
行くぞ、っと
思いがけず手が差し出された。
クールな和光がそんなことをするのは初めてで
驚いたけど
「うん」
私は素直に手を伸ばした。
指が触れた瞬間
?!
ぎゅっと、
力を込めて掴まれた。
「貰った」
ぼそっとした声に顔を上げると
照れて視線をそらす和光がいて
………
私はまた、
恋をした。
(言っておくけど、返品不可だよ?)
(…当たり前だ)
End.