Valentine present(黒澤和光)


「そりゃアキの気持ちも分かるけど」
「けど、なによ?」

コレ美味しく出来てるじゃん、と華が言いながら

「言い訳くらいさせてあげたら?」
「何の?彼女の前で他のオンナのコからのチョコ受け取ってたんだよ?」
「でもさー。あのクロサー君だよ?
アンタ以外のコから“ありがとう”って受けとるとは思えないんだけど」
「………でも持ってたもん」




10粒収まっていたケースはすっかり空で

夕日が入る教室で、私は大きくため息をついた。


―最悪のバレンタインデー。







ガタガタガタ…

突然机の上の携帯が鳴り出した。

バイブにしていたそれは全身を震わせながら私を呼ぶ。



華が持ち上げて「クロサー君」と差し出すけど


「とりたくない」


私はフイっと横を向いた。



「あ、そ。じゃあ私が…

え?!

「ちょっ「あ、クロサー君?華です。こんにちは―」


「華!!」

「そうなんですよ―。
え、あそうだったんですか?
へー。
あ、今?
うん、大丈夫大丈夫。
で?」


………

私が目の前でじっと睨んでも、
華は笑ってヒラヒラ手を振る。






「…じゃあ、そう言うことで」


一頻り喋ると、華はパチンと携帯を閉じた。


そして


ニヤニヤしているだけで、何も話さない。


3/5ページ
スキ