Looking For You(阪東秀人)

色のない日々、

それでも時は誰にでも平等に過ぎていく



気づけばもう春で、
ふと見上げた空をサクラが彩っていた。









「そういえばこの間、ユキさんに会ったぞ」


打ち合わせの休憩中、
ヒロミの口から出た名前に、オレは驚いた。


「おい“ユキさん”ってだれだよ?」
「あーお前知らないのか、阪東が昔付き合ってた女」
「へー」




「元気そうだったか?」

辛うじてそれだけを尋ねる。


「ああ、今はT駅前のファミレスで働いてんだと」



意外に近くにいたんだな、

そうか、元気か…




一人になりたくて外に出たオレを
ヒロミが追ってきた。




「おい阪東、火ぃ、貸せよ」
「………」


手渡したライターでタバコに火を付けると
ヒロミは「全く」っと呟いた。


「会いに行けよ」
「はっ、今さら…」



「なぁ、今を逃したら死ぬまで後悔するぞ?」
「………」
「アンタは大事なことを見落としてんだ。
それがなんなのか、自分の目で確かめてこいよ」




見落としてる?



何を?


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