雪-天使がこぼした涙―(我妻涼)

ガチャリ

重たい扉をわずかに開くと、そこには透き通るように白い顔をしたレンが立っていた。



「呼んだでしょう?」

囁くように言ったその言葉に、オレの眉間がピクリと動く。



一度深く目をつぶり、オレは扉を大きく開いてレンを中に入れた。











部屋の真ん中でコートを着たまま立っているレンを後ろから抱きしめた。

その体は、恐ろしく冷たい。




《何で来るんだ…》



「リョウの声が聞こえたから」


ゆるめた腕の中でくるりと振り向くと、レンはそう微笑んだ。




ああこいつには、
声にもならない声が、レンには伝わってしまう。



「リョウ、雪が降ってたよ…
まるで、天使が泣いてるみたいだった…」



抱いた腕にもう一度力を込める。




もし、願い事が叶うなら、

1つだけ。






なぁ頼む。

オレの最期には、

たとえオレが呼んでも、来ないでくれ…











レンの髪に顔を埋めると、
冷たくて清らかな雪の匂いがした。






End.
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