バイバイ(小林政成)

三人でそのまま話し込んだ。
高校生活はどうだったとか、これからどうするのかとか、そんな話を沢山した。

ふと、「マサ、タバコ買ってきてくれ」

そう秀吉がマサに頼み、おお、と席を立った時だった。

「なぁ、アレ、嘘だろ?」
「何が?」
「男いるって」
「ああ、うん。嘘だよ。
今さらどうこうなる気はないの。
ちゃんと失恋したかっただけだから」

ふふっと笑ってそう答えた。

「そうか。なら言うけど、オレはお前に惚れてたぜ?」

………

「はあー?!!」

「やっぱ気づいてなかったな。
あの時のチョコがマサに渡す為だったなんて、ムカツクぜ?」

フンっと笑いながら、秀吉はタバコを吹かす。


あー…、

「全く、世の中上手くいかないね」

あの頃アリサちゃんは
ずっと秀吉が好きだったんだ。


あーあ、今日ここで、みんな笑って仲良く失恋。



「秀吉、こっちに帰ってきたらまたみんなで飲もうよ。
だからちゃんと帰ってきなよ?」

「考えとくよ」

そう言った秀吉の顔はまんざらでもなさそうで。


「おい、お前ら抜けて次ぎ行こうぜ」

タバコを片手にマサがそう呼ぶ。
ずっと心にあったモノが抜けて軽くなった。

「いいけど、帰りはちゃんと送ってよね?」

「おう」


あの頃言い出せなかった言葉もすんなり出てくる。

遅れ馳せながらも、
私はやっとマサに失恋できた。


バイバイ、マサ。
アンタと出会えて、好きになって良かったよ。

「ついでに、おごってね!!」
「ばか、割り勘だ」
「女に払わせんの?」
「う゛…」



―ありがとう。






End.
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