指先から伝わる愛(柳臣次)

急に放り出された手は、
行き場をなくしていた。

手にはまだ、熱にも似た温かさが残っていて、
それが宙に溶け出さないように手のひらを握りしめる。



「…オレも帰るわ」


そう立ち上がったオレに鉄生と将五は気まずそうに軽く頭を下げた。
好誠の方を見ると、おう、と笑って手をあげた。



さて、と、

後を追って外へでる。
まだ近くにいるはずだ。



店を出て最初の角を曲がると、やっぱりいた。
後ろ姿を見つけた。


「お…

声をかけようとして、止めた。

チラリと見えたその横顔がまだ赤くて可愛かったから、
このままもうしばらく見ていたい、そう思った。





アイツがオレに気づいたら、横に行って、今度はオレから手を取ろう。
きっと今よりも更に赤くなるだろう。




そしてオレからちゃんと伝えよう…





ピタリと歩みを止めた背中が
ゆっくりとこちらを振り向く

「や、柳?!」

「よう」




“好きだ。”

そんなセリフ、女の方から言わせるのは格好悪いからな。







End.
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