形ないもの(戸川将太)

「おーい蓮ちゃん!!」

後ろを振り返ると店の前まで鉄生さんが出て来て、「また遊びに来いよ~!!」っと手を振っていた。

その声が嬉しくって、笑って手を振り答えた。






「ねぇ、」
そう言って将太の手を取り、将太の指に自分の指を絡めた。

「どんなに素敵な人が現れても、私は将太だけだよ?」

「ばか、当たり前だ。こんなに惚れてんのに取られてたまるか」


へへっ

「今度、一緒にブライアン行ってもいい?」
「あぁ、行こうぜ」


(―…目に見えないものは不安…)


「でも鉄生さんって面白いね―」
「ああ見えてすげーいい奴なんだぜ」
「将太の兄弟分だもんね!」



(―…でも、だからこそみんな
一生懸命に恋をするのかもしれない。
見えないモノを伝えるために、
恋しい人に恋しい、愛しいと伝えるために…)





“将太、大好きだよ…”

私の形ないこの思いも、将太に伝わりますように…
そう願って、絡めた指に軽く力を込めた。





End.
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