『……私のこと…変だと思う？』

エ「え？」

今度の沈黙を破ったのは恋歌の弱々しい声だった。

目はエースに合わせることなく、コップに視線が注がれている。

『学校で名前を変えて生活して、部活で親衛隊なんてものをつくってもらって…女なのに強くなるために色々して…

婚約する条件が私に勝つことだなんて…

変…だよね？

女の子ならおしとやかに、振る舞いもちゃんとしなくちゃいけないのに…

財閥の令嬢となればなおさらそれを強要される…

でも私は…それを拒否して…勧められる婚約も全て拒否して…会社を自分で継ぐということも拒否した』

恋歌のコップを握る手に力が入り、震えているのがエースにもわかった。

エ「(泣いてんのか？)」

『そんな私の我が儘をお父様は文句も言わず聞いてくださって…

私が選んだ人ならそれでいいと…無理に結婚なんかする必要ないって…

それに甘えて…こんなことを続けて…』

エ「別にいいんじゃね？」

『え？』

ばっ、とエースの声に反応して顔をあげた恋歌の目にはうっすら涙が浮かんでいた。

それに気づかないふりをしてエースは言葉を続ける。

エ「金持ちの世界のことは俺にはわかんねぇけど好きなやつと結婚したいってのは男も女も関係なくみんな同じだと思う

親衛隊のやつらだって恋歌のこと慕ってるからあんな危険なところにもついてきてる

それに女が弱くなくちゃいけないなんて誰が決めた

あそこまで強くなるにはそれ相応の修行とかしなくちゃならねぇ

自分のために強くなって何が悪い

家族のために強くなって何が悪い

俺はルフィやサボを守るためならどんなことだってする

恋歌だってそうだろ？

大事な人やものを守りたいから強くなった」

『うん…私は…お父様との今の関係を守りたくて…もう何も失わないように強くなった』

エ「だったら別にいいじゃねぇか

そんだけ恋歌は父親のことが大好きだってことだろ？

父親も恋歌のことが大事だから好きにさせてんだよ

だからその持ってる力に胸を張ればいい

俺は別にそれが変だとは思わねぇよ」

『うん…ありがとう』

エースの言葉を聞いた恋歌は一粒だけ涙を流して嬉しそうに笑った。

エ「どーいたしまして…///」

恋歌の笑顔にドキッとしたエースはお茶を一気飲みすることで、赤くなった顔を隠した。

その直後にぶー、ぶー、と着信を知らせるバイブが鳴った。

『あ、ニーナからだ』

鳴っていたのは恋歌の携帯のようで、ニーナからメールがきたらしい。

『終わったから今からこっち来るって』

エ「ニーナも親衛隊の一人何だよな？」

サボがニーナも家庭部だと言っていたし、今回も来ていた。

『うん

ニーナは桜姫親衛隊斬り込み隊長

多分私の次に強いかな』

エ「え、ニーナって強いのか？」

『強いよ

サボと同じぐらいじゃないかな？』

エ「(サボと同じぐらいって俺と同じぐらいって言ってんのとおんなじだぞ？

しかもそれより恋歌は強いって…)」

軽くショックを受けたエースははぁ…と小さくため息をついた。