『もう二度と私の前に現れないでください

もしこれ以上私の友達に何かするというのなら西城グループがなくなることになりますので』

「姫様これを」

倒れたまま動かない隼人を振り返ることなく、そう言い残すとルフィを優しく抱き締めたままエースたちがいる方へ歩き出す。

途中で鞘を拾って持ってきてくれた部員に刀を預け、泣くのを懸命に我慢しているルフィの背中をポンポンとリズムよく叩く。

ル「ねぇちゃん…おれ…こわかった…」

『ごめんね、私のせいで怖い思いさせて…』

ル「でも…たすけにきてくれた…

あ゛りがどう゛…」

恋歌の制服を一層強く握り締め、泣き顔を見られないように恋歌の胸に顔を押し付ける。

ナ「お疲れさま」

『うん、今日もサポートありがと』

ナ「私の計算に狂いはないのよ

場所バッチリだったでしょ？」

『いつも助かってます』

胸を張って言うナミにくすくす笑いながら恋歌が頭を下げる。

ニ「あとは我々に任せて今日はお帰りください

その子もゆっくり休ませてあげたいですし」

『……そうだね』

まだ泣いているルフィを親衛隊全員が心配そうに見つめる。

幼い子を巻き込んでしまって、みんな心配しているのだ。

『話したいことがあるから私の家に来てくれる？』

エ「え？俺？」

『うん、後でサボとニーナも来てくれる？』

サボ「りょーかい」

ニ「なら私はここが片付いたら行かせていただきます」

『なら私は帰るね

また明日学校で』

「「「お疲れさまでした」」」

戸惑うエースの腕を引っ張って恋歌がすたすた歩いていく。

後ろには恋歌に頭を下げる女たちと手を振るナミ、苦笑いをするサボが二人を見送っていた。











暫くしてエースの腕を離し、歩くスピードを緩めゆっくりと歩き出した恋歌。

ルフィをあやすようにリズムよく背中を叩く手は休めずに沈黙だけが、恋歌とエースの間に流れる。

連れてこられた倉庫は思ったより近い場所だったらしく、歩いて帰れない距離ではないということが街並みを見てわかった。

すでに夜も遅い時間帯のようで、人通りは少ない。

『あの…』

倉庫からずっと沈黙していた恋歌がエースの方を振り向かず、歩くことも止めずに声を発する。

『……怒ってる？』

エ「は？」

やっと喋ったと思ったら意味のわからないことを言われてエースは変な声がでてしまった。

エ「なんで俺が恋歌に怒るんだよ」

『だって…巻き込んじゃったから…』

エ「………」

『エースとサボに怪我させて…ルフィくんには怖い思いをさせた

大事な友達を…私は…傷つけた…』

立ち止まった恋歌の肩が震えているのを見たエースは一瞬手を伸ばしかけたが、すぐに引っ込めた。

自分なんかが恋歌に触れてはダメだと…そう思ったから。

ルフィをあやしていた手も止まり、強くルフィを抱き締める。

ル「恋歌ねぇちゃん？

どうしたんだ？ないてんのか？」

恋歌の手で眠気を誘われ、寝かかっていたルフィだったが、恋歌の異変に気付き顔をあげる。

小さな手を精一杯伸ばして恋歌の頬に伝う涙に触れる。

ル「どっかいたいのか？」

心配してくれるルフィに首を振って返すことしかできない。

声を殺して泣いていると突然温かい何かに包まれた。

すぐにルフィごとエースに抱き締められていると気づいて、顔をあげる。

だが、エースの顔は恋歌の肩口に埋められていて見ることができない。

『エース？』

エ「泣くな」

『え？』

短く、たったそれだけ言われた言葉になぜか涙が止まる。

エ「恋歌のせいじゃねぇよ

あいつに喧嘩売ったの俺だし、自業自得だ

自分から巻き込まれに行ったんだよ

だから…泣くな」

『でも…あの日私と一緒にいなければ…』

エ「ばーか

帰り道一緒なんだ

なんで"友達"の俺たちが一緒に帰っちゃいけねぇんだ」

『それは…』

エ「いいから気にすんな

それに結局助けられたしな

ありがとう」

優しい声でそう言ってくれるエースにまた涙が溢れそうになり、恋歌はエースに更に引っ付いた。

それに一瞬びくっ、としたエースだったが恐る恐る恋歌を抱きしめる腕に力を込めた。

エ「(なんだこの状態！///

離すタイミングどこだ!?///)」

おろおろしているのを悟られないようにしているが、このあとどうしたらいいかわからないエースは頭がぐちゃぐちゃだ。

そんなエースを助けてくれたのは…

ル「いてぇ…」

恋歌の腕の中で大人しくしていたルフィがあげた抗議の声だった。

その声を聞いてぱっと離れたエースは恋歌からルフィを預かる。

エ「わりぃな

さ、帰るか」

『うん！』

そこからはルフィを真ん中にして三人で手を繋いで帰った。