「いいか？

お前に拒否権など最初からない」

『…私があなたに出した条件はクリアされたんですか？』

恋歌は睨むように男の目を見るが男は軽く笑うだけだった。

「ああ…あの意味のわからないお前が出した条件か

あんなものとうにクリアしたに決まっているだろ？

大体比べる対象がおかしい」

『ならば…それを試させていただきます』

「はぁ？どうやっ…っ!?」

恋歌がなにかをしようとする前に恋歌は後ろに引っ張られ、男は鈍い音とともに自分の車にぶつかった。

『え、エースさん？』

恋歌の腕を引っ張って下がらせたのも、それとは逆の腕で男を殴ったのも今まで黙って話を聞いていたエースだった。

恋歌は急なことに驚いて目を見開いている。

エースはさらに恋歌の腕を引いて自分の後ろに隠して男から見えないようにする。

「貴様！この俺が誰だかわかっているのか！」

殴られた頬を押さえながらエースに噛みつくように怒鳴る男。

エ「知ってるさ

正確にはさっき思い出したんだけど

あんた西城隼人だろ？」

そう、この男は学校でサッチが話していた西城グループの御曹司。

長男というか一人息子である彼は次期西城グループの総帥というわけだ。

近頃桜姫の正体を掴んだとわざわざテレビに出てまで宣言していたのでたまたまエースも顔を少しだけ覚えていたのだ。

エ「興味なかったからわすれてたんだけどよ

そのむかつく顔」

『あの…エースさんを巻き込むわけには…』

自分の問題にエースを巻き込みたくない恋歌は前に出ようとするがそれをエースは許してくれない。

隼「関係のないやつは下がっていろ！

これは俺たち二人の問題…」

エ「あんた相手にされてないのわかってるか？

俺が関係ないのは認める

だけどこいつからしたらお前も関係ない人間なんだよ

だいたいさっきから話聞いてたらお前ただのストーカーだろ？」

隼「なっ！」

エ「こいつが携帯とか家とか変えたの知ってたり、父親が本当の父親じゃないってこと調べたりとかな

他のやつが聞いてても絶対ストーカーだと思われるぜ？」

隼「俺をストーカーなど下等な人間と一緒にするな！」

隼人はエースの胸ぐらを掴んで怒鳴るがエースは隼人の目を殺気を込めて睨む。

それに隼人は青ざめ、冷や汗を流す。

エ「人間に下等も何もねぇんだよ

金持ちだからなんだ？

頭がいいからなんだ？

それだけで人間の価値なんか決まらねぇ

それとなたとえ義理だろうとなんだろうとそいつが家族だと認めたら誰がなんと言おうと家族だ

こいつの…恋歌の認めた家族のことに関係ないお前が口出すな！」

最後の言葉を頭突き付きで隼人に贈ると隼人はエースの胸ぐらから手を離し、額から軽く血を流す。

隼「お前…俺にこんなことしてただで済むと思うなよ！」

そう捨て台詞を吐いた隼人は車に乗って立ち去って行った。