『今日もルフィくん迎えに行くんだって？』

エ「今日はサボがバイトだからな

なるべく俺ら二人のシフトが被らないようにしてもらってバイトのないほうが迎えに行くことになってるんだ」

『へぇー、いいお兄ちゃんだね』

前よりは恋歌とちゃんとした会話が成立していることに安堵するエース。

それからも他愛のない話をしていた。

だが突然恋歌の横に車が一台停まった。

その車を見て恋歌が一瞬顔をしかめたのをエースは見逃さなかった。

「よう、恋歌」

『…こんにちは』

窓を開けて中から顔を出したのはサングラスをかけた若い男。

声をかけられ渋々と言った感じで挨拶をする恋歌。

エ「？誰だ？」

『えっと彼は…』

「彼女の許嫁だ」

エースが恋歌に聞いたのだが答えたのは男の方だった。

エ「い、許嫁？」

『ち、違うの！

彼が勝手に言っているだけで…』

若干ショックを受けたエースだったが、恋歌が即座に否定してくれた。

「心外だな」

男はサングラスを取って車から出てくる。

エ「あれ？こいつどっかで見たことあるような…」

「俺に対して失礼な態度をとるとはな

しかも俺を知らないときた」

エ「あ？」

男の言い方にイラッとしたエースは少しだけ男を睨んだ。

「はっ、貧乏人が俺を睨むなんて無礼にもほどがある」

エ「なんだと？」

『失礼なのはあなたの方です』

今にも殴りかかりそうな勢いだったエースを止めたのは恋歌だった。

エースの挙げかけた腕を軽く握って目で止めるように伝える。

それを読み取ったエースは渋々ながらも力を入れるのを止めた。

「なぜそんなやつを庇う

お前は俺にだけつくしていればそれでいいんだ」

『私はあなたと結婚するつもりはないと何度言えばわかっていただけるんです？

お父様もあなたにそう言ったはずです』

「確かに断られはしたさ

だが、彼は君の本当の父親ではない」

『!!どこでそれを…』

「俺に調べられないことはない

例の桜姫のこともね」

『…そのお話何度も伺っていますが、彼女は桜姫ではありません』

「それは彼女が君のくだらないトモダチだから庇っているのだろう？」

『…私の友だちを悪く言うのは止めてください』

「まぁそれは正体を明かしたあとでということで

それより恋歌

また家と携帯変えたんだな」

『…』

「いくら俺から逃げようとしても無駄だ

俺はお前を諦めるつもりはない」

『あなたがほしいのは私ではなく私の地位や財産でしょう？』

「それも魅力的だけどね」

男は恋歌の顎をつかんで自分から目を反らせないようにする。