暫しの沈黙。

部屋の中は三蔵と悟浄の煙草の煙を吐き出す音しか聞こえない。

風呂場の方から微かに音が聞こえ、恋歌が上がったのだとわかる。

悟空「俺…どんな顔して恋歌に会えばいいんだろう…」

悟浄「ばーか

さっきまでと同じでいいんだよ」

悟空には難しい言葉はわからなかったし、何故恋歌がそんな目にあうのかもわからなかった。

わかるのは長い時間の孤独がとても寂しいものだということ。

自分には三蔵が迎えにきてくれた、手を差し伸べてくれた。

でも恋歌は？

500年待っても来てくれない。

自分と同じく過去の記憶がない。

じゃあ自分にできることは？

悟空「……決めた」

三蔵「ああ？」

悟空「俺、恋歌の側にいる

恋歌のことをまだ誰も迎えに来てないなら、迎えに来るまでずっと俺が側にいる」

八戒「悟空…」

「…きっと恋歌様は喜ばれるだろう」

悟浄「このくそ猿がいっちょまえにかっこつけやがって！

あんな美人の側にいるなんざ100万年はぇえよ！」

悟浄が嬉しそうに悟空の頭をぐちゃぐちゃに撫でてやる。

そこでまた喧嘩が始まるがいつものことだと三蔵も八戒も気にしない。

八戒「そういえば恋歌さん遅いですね」

先程出てきた音が聞こえてから随分と時間が経っている。

「見てこよう」

「「「「は？」」」」

がたっ、と椅子から立ち上がった男に全員の視線が向けられる。

その視線に構わず風呂場に行こうとする男の着物の袖を慌てて八戒が掴む。

「なんだ？」

八戒「えーと…

つかぬことをお聞きしますが、あなたと恋歌さんはどのようなご関係で？」

「関係？」

顎に手をあてて考える。

関係はなんだろう。

「まぁ…主従関係が1番近いんじゃないだろうか」

八戒「で、ですよね？

主人である恋歌さんのお風呂なんか覗いていいもんなんですか？」

「？

恋歌様には何も言われた事はないが…？」

それがどうしたと言わんばかりに男は首を傾げる。

次にかける言葉が見つからない中、がちゃ、っと風呂場の扉が開いた。

『あ、あの…お風呂ありがとうございました』

八戒「いえ、どういた…し…」

男が覗きに行くのを阻止できたとほっとし、後ろを振り返ると全員が固まった。

「恋歌様

そのままでは脚が冷えます

髪も乾かしませんと…」

『そうなんだけど…』

申し訳なさそうに八戒のもとへ行き、手に持っていたものを渡す。

『すみません

これ…履いても落ちてきちゃって…』

綺麗に畳まれたまま渡されたのは先ほど渡した自分のズボン。

八戒「えーと…な、何か他に…なかったですか？悟浄」

悟浄「や、俺のもお前と同じようなもんだって」

『あの…このままでも大丈夫です…すみません…』

いやー、ダメだろ…という視線に気付かない恋歌。

八戒の黒いTシャツのみ着て、下には何も履いていない。

身長差や体格差があるため、Tシャツは恋歌の膝上15センチぐらいまでは裾がある。

だが、日焼けや怪我など一切したことなどないような真っ白な肌。

少し力を入れれば折れてしまいそうな脚の細さ。

小さすぎず、変に大きすぎない程の形の良さそうな胸。

着物ではわからなかったスタイルの良さが全面に出てしまっている。

悟空「お前ら何慌ててんの？」

悟浄「ばっかお前なぁ！

あの姿の恋歌ちゃん見て何にも思わねぇのかよ！」

悟空「？

別に？」

きょとんとした顔の悟空に悟浄が1発入れ、悟浄と八戒が急いで何か代わりになるものを探しに自室へ走った。

三蔵「馬鹿ばっかりだな」

お茶をすすり、我関せずを貫いているものもいたが…。