先程までは桜の木は一本しか咲いていなかったが、辺り一面全て桜の木にかわる。

八戒「これは一体…！？」

悟空「すげー！！」

悟浄「お子ちゃまは気楽でいいな…」

三蔵「……」

絶景とも言える光景に無意識に惹きつけられる。

「恋歌様…

お目覚めください」

女…恋歌の手を強く握り、懇願するように目を伏せる。

だが男は確信していた。

必ず恋歌は目覚めると。

『………さく、ら？』

「恋歌様！！」

恋歌は目を開け、言葉を発した。

男の嬉しそうな声に桜に魅入っていた4人は恋歌の方に振り返る。

三蔵「！！？？

これは！！」

悟浄「こりゃ…噂もされるわな…」

八戒「ええ…

顔を隠していたのは正解だったみたいですね」

悟空「………」

振り返った先には先程までは靄がかかって見えなかった恋歌の顔がはっきり見えた。

そこには今までに見たことがない、絶世の美女の噂に相違ない女がいた。

『随分と…久しぶりな感じ…』

「はい…

お久しぶりでございます

お身体にお変わりはございませんか？」

『そうだね…

すごく…すごく長い時間眠っていたような気がする…』

そうですね、と返す男にふんわりと笑い返す恋歌の視界に草履が見えた。

がばっ、と起き上がり三蔵を見つめその奥にいる3人を見つけると怯えた目をして後ずさる。

『あ…』

「恋歌様！」

三蔵「あ？

なんだってんだよ」

がたがたと震える恋歌を男が抱きしめ、大丈夫ですよと声をかける。

悟浄「三蔵様の顔が怖かったんじゃねぇの？」

三蔵「殺すぞ」

八戒「あの怯え方、尋常じゃありませんね

三蔵を見てというより、僕たち全員を見て怯えたような…

あ、悟空…！」

男にしがみついて震える恋歌に悟空が駆け寄り、しゃがみ話しかける。

悟空「なぁなぁ」

声をかけられた瞬間に恋歌の肩が跳ね、男の服を掴む。

悟空「どうしたんだ？腹減ってんのか？」

震える恋歌に心配そうに声をかけ、手を伸ばす。

「この状態の恋歌様に触れてはダメだ！」

悟空「え？」

男が焦ったように恋歌を抱き込むが、悟空の手は恋歌の手に触れてしまった。

『っつ…！』

「恋歌様落ち着い…！！」

声にならない悲鳴を上げた恋歌は、自分を抱き締めている男から無理矢理離れた。

『あ…

嫌だ…もう…』

「恋歌様！

大丈夫です！ここの4人はあいつらとは違う！」

三蔵「あいつら？」

頭を抱えて怯える恋歌に、男が必死に呼びかけるが聞こえていないのか震えているだけ。

八戒「なんかワケありっぽいですね」

悟浄「みてぇだな…

どーすんだよ、三蔵」

三蔵「俺の知ったことか

どんな事情があろうと連れて帰る」

悟浄「言うと思った」

悟空「俺…なんか悪いことしたのかな？」

悟空が触れてから更に様子のおかしくなった恋歌を見て悟空が申し訳なさそうに恋歌を見つめている。