恋歌は事の成り行きを見守るために村田の後ろに控えている。

ちらっと村田が恋歌に目配せをすると恋歌から小さな頷きと微笑みが返ってくる。

村「恋歌さんがこの世界に来た理由を君たちにも知っていてほしい」

渋「恋歌さんがこの世界に来た理由？

それって俺のスタツアに巻き込まれたんじゃ…」

ユーリの問いに村田はゆっくりと首を振る。

村「確かに巻き込まれたのは事実だ

だけどそれは眞王の意思

それも彼女はたまたまこちらの世界に来たのではなく選ばれてこちらに来たということだ」

グ「なんだと？」

眞王の意思が関係しているのは知っていたがわざわざ恋歌を選んだことは知らなかった。

村「そしてその理由は…」

すっ、と視線をユーリに向けると自分を指差してん？と首を傾げている。

渋「おれ？」

村「そうだ

恋歌さんは君を守るために異世界からやってきた

あちらの世界では最強と言われる女性なんだよ」

渋「え？俺を守るため？え？

どうして…っていうか俺のせいで恋歌さんは…」

混乱しているユーリは情報の整理がうまくできていない。

村「ひとつずつ話そうか

まず渋谷、君は今何者かに命を狙われている」

「「「！？」」」

ギ「げ、猊下何者かとは…」

村「わからないんだ」

グ「わからない？」

村「そう、わからないからこそ恋歌さんをわざわざ異世界から呼んだ

眞王には彼女ならきっと渋谷を救ってくれるという確信があったんだと思う

何を根拠にしてるかはわからないけどね

渋谷が命を狙われているのを知っていたのは僕と恋歌さん、そして…ウェラー卿」

渋「え？コンラッドも？」

コ「申し訳ありません…」

意外な人物の名前があがり、ユーリはさらに戸惑う。

ヴ「ではあの日恋歌が毒味をしたのは！」

渋「毒味？」

村「ウェラー卿がいないから彼女がやってくれた」

ヴ「それで恋歌が死んでいたらどうしていたんだ！」

ギ「お、落ち着きなさいヴォルフラム」

今にも掴みかかりそうな勢いのヴォルフラムをギュンターが止める。

渋「ちょ、ちょっと待てって！

なんだよ毒味って！

そんな話一回も…」

村「あの盗賊団の事件があった日

君たちと食べた昼食、誰が一番に食べてたか覚えてるかい？」

渋「誰がって…だって…あれは…村田が恋歌さんに楽しんでもらうためって…」

あの日を思い出して誰が最初に口をつけていたのかを思い出す。

そう、どの料理も恋歌が最初だった。

村「まぁそれも本心だったさ

でも、どこに暗殺者がいるかわからない以上毒味は必要だった」