『い、いいのかなぁ…』

ツ「大丈夫よ

あたくしの息子たちは顔だけじゃなく剣の腕もいいんだから」

さぁさぁと引っ張るツェリは至極楽しそうだ。

ちらっと今日の護衛対象である村田を見ると視線に気づいたのか笑顔で手を振られた。

『じゃ、じゃあ…行く…』

ツ「そうこなくっちゃ！

みんな誘いましょう！」

引きずられるように連れて行かれる様子をご愁傷とでも言いたげな目で見送った。

渋「なんか…さすがツェリ様って感じ」

村「うーん、やっぱり…」

渋「やっぱり？」

村「筋肉つけようかなぁ…」

腕を組んで真剣な表情でそう呟いた村田。

渋「なんのはな…

あー…さっきの話ね」

唐突な筋肉の話に最初は意味がわからなかったが村田は先ほど恋歌の想い人がヨザックのような筋肉の持ち主であることを言っているのだと理解した。

渋「無理だと思うぜ？

俺たちみたいな平均的でごく一般の日本人じゃ」

村「やっぱりそうだよね…」

はぁ、と重々しいため息をついた村田を慰めるようにユーリぽんぽんと背中を叩いてやった。

渋「ん？ていうか女の人たちで風呂って…まさか…」

コ「おそらく魔王専用風呂かと…」

渋「やっぱり」

コ「すいません」

申し訳なさそうに告げるコンラッドにいいよいいよと手を振る。

渋「みんな誘いましょう、とか言ってたしアニシナさんとかギーゼラも呼ぶんだろうし」

風呂は広いほうがいいだろうと思ったユーリの今日の風呂は自室の魔王専用風呂よりは小さめの風呂だ。

渋「村田今日はこっちに泊まるのか？」

村「んー…護衛の恋歌さんは捕まっちゃったしね

そうさせてもらうよ」








場所は変わって魔王専用風呂。

ツェリが呼んだのは赤い悪魔ことアニシナ、癒しの手を持つギュンターの養女ギーゼラ、ユーリの愛娘グレタの3人。

服を脱いで浴槽につかる5人がまず始めたのは自己紹介。

ア「お初にお目にかかります

フォンカーベルニコフ・アニシナです」

『あ、この翻訳機の

わたしは恋歌です

これありがとうございます』

ア「いえ、お役に立っているのなら光栄です」

ギ「わたしもはじめましてですね

フォンクライスト・ギーゼラと申します」

『はじめまして

フォンクライストというとあのユーリの王佐さんの…』

ギ「はい、父です

と言ってもギュンターは養父でわたしは養女なんですけど」

グ「最後はグレタだね！

グレタの父上はユーリなんだ！」

元気に手をあげながら話すグレタ。

その可愛さに自然と笑みがこぼれる。

ツ「これで自己紹介は済んだわね

なんだかこんなのんびりした時間も久しぶりね」

ア「ええ

みなでお風呂など何年ぶりでしょう」

まったりのんびりとした空間と時間。

ほんの20年ほど前では考えられなかった。

ユーリが魔王となってからだ。

こんな時間や空間が当たり前になったのは。