村「そしてそこでたまたま耳にした恋歌さんの宝石の価値

今日取引があるからすぐに足はつかないと思ったんだろう」

奪ったものをずっと持っていては探されれば見つかってしまう。

だが奪ったその日に売ってしまえば取引先は捕まっても自分達の捕まる可能性は低くなる。

ヨ「運が悪かったということですね」

『運が悪いのはどちらでしょうね』

渋「？それはどういう…」

『しー

ネックレスの気配が地上に出てきた

そろそろ移動するみたいね』

表現しがたい笑みを浮かべた恋歌にその笑みの意味を聞こうと思ったが男たちが移動を開始した。

ヨ「一応血盟城に報告だけはさせてもらいますよ

援軍はいらないと伝えておきますんで」

『お願いします

ヨザックさんは単独で動きますか？』

鳩に小さな紙をもたせて羽ばたかせたヨザックはうーん、と顎に手を当てて目を瞑る。

ヨ「坊ちゃんたちが心配ではあるんですけどね

お任せしても？」

『もちろんです

この3人の安全はわたしが保証します

あ、一人で行くならこれ持って行ってください』

恋歌は屋根の上から男たちを追跡しようとするヨザックを引き止めてひとつの珠を渡した。

ヨ「これは？」

『それを持っていればヨザックさんがこの世界のどこにいてもわかるようになります

あともし何かあった時に割ってくださればすぐにでも助けに行きます』

ヨ「こりゃいいもんもらいましたね」

『一応カモフラージュのために二手には別れたみたいです

気配はあちらから

なので取引場所はあちらの方角だと思います』

ヨ「助かります

では、坊ちゃん、猊下、閣下

恋歌さんの言うことをちゃんと聞くんですよ」

母親のような言い方にはーいと素直に返事するユーリと村田。

少し拗ねたようにふんっ、とそっぽをむいたヴォルフラムに苦笑いしてヨザックは屋根の上から男たちを追った。

『じゃあわたしたちも行こうか

向こうも歩きみたいだから顔見られてるし一定の距離を保って歩こう』

こくりと頷いた3人を確認して人混みに紛れて男たちの後をつけた。











約1キロ程の距離をずっと保ちながら無言で恋歌を先頭に4人は人混みに紛れながら尾行を続けていた。

だが、10分程歩いたところで途中でまた二手にわかれた。

そしてさらに10分後にまた二手に。

『これで４つにわかれたね』

ヴ「どういうことなんだ？」

『わからない

でもわたしのネックレスの気配はこっちの方角であってる

ヨザックさんは…

私たちとは違う方について行ったみたいね』

村「彼なら一人でも大丈夫さ

しかしこんなに分裂するのはなにかおかしいね」

『うん

3人とも私のそばを離れないでついてきてね』

相手側の意図がわからない以上ここで帰れと言うわけにもいかない。

再度自分の近くにいるようにと注意された3人はだんだんと緊張のせいか顔が強張っているが力強く頷いた。