『何もわからないし、わかりたいとも思いませんよ

わたしはわたしを大切に思ってくれる人の側にずっといたいですから』

ヴ「………僕だって…ユーリの側に…」

『死とはそんなに軽いものではないのですよ』

にこっ、と笑いヴォルフラムの拘束を解いた。

そのまま力尽きたように膝をつくヴォルフラムにユーリが駆け寄った。

『感情を表に出すことはいいことですが、それを出してもいい相手なのか考えることも大事ですよ』

ヴ「…喧嘩を売る相手は選べということか」

『はい

一国の王様の婚約者ならその一言が、行動が、誰にどんな思いをさせているかわからないですから特に』

ヴ「…わかった

僕の負けでいい…

悪かった」

素直に負けを認め、謝ったヴォルフラムに兄と双黒の2人は目を見開いた。

あのわがままプーが！？と。

その言葉に満足した恋歌は刀を指輪に戻した。

『この子を使うまでもなかったね』

村「その刀もまた特別な力があるのかい？」

『うん

炎の魔術を使うって聞いたから一応氷の力が使える刀をね』

村「ちょっと見てみたかったけど使えばウォンビーレフェルト卿がどうなってたかわからないもんね」

『当てるつもりはなかったよ

威嚇にでもなればと思って用意しただけだしね』

村「ところでさ」

『ん？』

村「もしかして今回の決闘を受けたのは彼にこのことを言うためかい？」

『まぁそれもあるしやっぱり悪いことをしたらごめんなさい、でしょ？』

恋歌の言葉に村田は昨日の出来事を振り返る。

確かに自分の婚約者であるユーリにどこの女とも知れない恋歌が触れて怒るのはいつものことだからわかる。

だが、料理全てを無駄にすることはなかっただろう。

せっかくシェフやメイドたちが作ってくれたというのに。

それに対しての謝罪がなかったことは確かだ。

そのことを思い返して恋歌の言いたかったことを理解した。

村「確かに…

悪いことをしたらごめんなさいが鉄則だね…」

『ね？そうでしょ？』

理解はした。

けれど、それを十貴族であるウォンビーレフェルト卿ヴォルフラムに誰が言えるだろう。

言えたとしてもきっとユーリや村田、コンラッドの声には耳を貸さない。

『あのごめんなさいが自身の命を軽んじた謝罪ならあとであの料理を作ってくれた人たちにも謝りに行かないとね』





後日、厨房でぶっきらぼうでも謝ったヴォルフラムを見てギーゼラを呼ばれたのはまた別の話。