『【(変身(トランス)　人魚(マーメイド))】』

一瞬目の前がくらむほどの光が恋歌から発せられ思わず目を閉じ、目を開ければ人魚になった恋歌がおり、ローはゆるく口を開けて驚いた顔をしているが、男は冷や汗をかいてごくりと喉を鳴らした。

「人魚…！奴隷として最高の価値だ…！！」

ロー「あ…？」

聞き捨てならない言葉をはいている男を睨みつけるが、男は興奮でローの視線に気づいていない。

『(これで呼吸の心配はない)』

ごぽ、と口から空気が漏れるが、息苦しくはない。

この世界で水中最速と言われる人魚の能力をそのまま使えるので、ロボットのサメに捕まる事はなく、襲い掛かってくるサメの攻撃を全て避けている。

ロー「(なんでもありな能力だが、やっぱり疲れ始めてる

おれがこいつをなんとかできれば…)」

僅かではあるが表情が硬い恋歌に、疲労がたまり始めているということはわかっているが、手助けをしてやることができない。

何度舞台や檻をスキャンしてみても、今までに感じた事のない感覚がし、ROOMの中に入れてどこかと入れ替えられないかと能力を繰り返し使っているが、何も解決策は見つからない。

男がいじっている機械も壊してやろうかと思ったが、その所為で恋歌が出て来れなくなる可能性もある。

男を気絶させることはできるが、そうするとゲームが進まなくなり、恋歌も仲間も出てくる事が出来なくなる。

ロー「(あと少しだ…頑張ってくれ…)」

サメの攻撃から逃げ続けている恋歌に、心の中で声援を送り、見守る事しかできない不甲斐なさに、鬼哭を握る手にも力が入る。

『(もうすぐ10分)』

サメにつけられたタイマーが10分を刻んでおり、もう少しで0になる。

あと残り10秒ほどとなったとき、攻撃をするために刀を握ったが、その直後サメの口が開き、何かの棒が現れた。

『(？

なに？)』

「くらえ！！」

「「「恋歌！！」」」

なにか出てくるのかと身構えたが、男がスイッチを押すと、ばりばりと電気が起こり、水中にかなりの電圧の電流が流れた。

「はっ、これで気絶しねぇ奴は人間じゃ…」

自分で自分の電流でダメージを受けたサメのロボットが爆発し、水も一瞬にしてなくなりもくもくと黒い煙が上がる。

『(自爆してくれて助かった…)』

ぽたぽたと滴り落ちる顔の水気をはらい、ふぅと息をはいている恋歌は人魚の変身を解いており、傷一つない状態で立っている。

「ほんとにあいつは…人間…？いや、人魚…？」

『次、お願いします』

「ちっ、次こそ…！」

”98”と表示された瞬間、四方から銃口が向けれられた。

『(今さら銃…？)』

銃弾が効かないということは今までの流れでわかっているだろうとは思うが、当たれば痛いので盾でも出そうかと考えた。

「焼け死ね！！」

『焼け？』

その言葉の直後に四方の銃口から炎が噴き出し、舞台の中全体が炎に包まれた。

「死ぬ直前に出してやるよ！ぎゃはははははは！！

…ん？」

良い金になるとわかっている恋歌を殺すつもりはないらしく、これで倒れるだろうと高らかに笑っているが、舞台の中の炎の威力が弱くなっていることに気づいた。