しばらく5人で街を回り、大体の事はそつなくこなすローに、恋歌は称賛の言葉を送り、気恥ずかしそうに帽子を目深にかぶるというのを繰り返した。

ペ「いやいや、おれたちのキャプテンはほんとにかっこいいよな」

『はい、そうですね』

称賛の言葉を送るのは恋歌だけではなく、他の3人もで、ローのかっこいい姿に悶えていた。

ロー「ちっ…」

『？』

恋歌はローに手を引かれて歩いていたが、ふいにぴたっとローが立ち止まったので、全員が足を止める。

ローの視線の先には同じ最悪の世代であるキッドとキラー、そして何人かの部下を連れていた。

向こうもローとハートの海賊団の存在に気づき、お互いが嫌そうな顔をする。

ロー「恋歌、おれの後ろに隠れてろ」

『？はい』

ぐいっと手を引かれてキッド海賊団から見えなくなるように背中に隠され、近くに来たキッドたちを睨みつける。

キッド「まさかお前らもこの島に来ていたとはな」

ロー「それはこっちの台詞だ」

ばちばちと視線で威嚇をしあっているが、いがみ合うなら話しかけなければいいのにと思うが、それを伝える事の出来る勇者はいない。

『(仲悪いのかな…)』

大人しく背中に隠れている恋歌は、ローと背中合わせになるように隠れている。

キッド「てめぇらと話すことはねぇ、退け」

ロー「！！」

『わっ、』

話す事は何もないとキッドがローの肩を強く押して目の前から退けようとしたため、その衝撃に備えていなかった恋歌は、ローの背中に押されるようにして前のめりにつんのめった。

ロー「悪い、大丈夫か」

『あ、はい』

キッド「桜姫…」

咄嗟の衝撃を恋歌が後ろにいる事で避けられなかった為、無事かどうかを確認してくれるが、ふらついただけで特に何もないので大丈夫だと笑って返す。

しかしその所為で恋歌の存在に気づいたキッドが驚いて目を見開いている。

キラー「この間の恋歌も美しかったが、今日は一段と綺麗だな」

『え…』

恋歌がいるとわかった瞬間キラーが仮面を取って、視線を合わせるように片膝をついた。

ローと繋いでいない方の手を握り、手の甲に口づけを落そうと顔を近づけたが、それをローが許すはずもなく、キラーの手を蹴り飛ばそうと足を振り上げたが、キラーは軽々とそれを裂けた。

ロー「てめぇ…こいつはおれのだって何回言わせんだ」

((お？))

びきびきとこめかみに青筋を浮かべているローは、キラーの視線に恋歌を入れないように、もう一度背中に隠した。

キラー「今はお前の女だろうと奪えばいいだけの話だろう？」

ロー「奪えるわけねぇだろ」

今度はローとキラーが視線で威嚇を始めてしまい、なぜかキッド海賊団とハートの海賊団での睨みあいが始まってしまう。

ロー「…無駄な時間だ

行くぞ」

だが、この無意味な睨みあいを続けている間に、恋歌と過ごせる貴重な時間が無くなっていくと気づいたローは、恋歌とクルーたちに行くぞと声をかけて、キッド海賊団を無視して歩いていく。

キラー「おい待て！」

しかし、そんな簡単に諦めてくれるはずもなく、なぜか後ろをついてくる。

ロー「ったく、お前はほんとに厄介な女だな」

『？』

四皇の船に乗っている事も、世界最強であることも、男を魅了してしまう事も何もかも。

それでもこの厄介な相手を好いてしまい、傍にいたいと自分自身が望んでしまったからには、手を離すつもりは毛頭ない。

やっと恋歌から気持ちを言葉にして返してもらえたのに、そんな簡単に邪魔されてたまるかと握っている手に力を入れた。