目線で会話をしているので、何を話しているのかはわからないが、ルフィがぱくぱくと料理を食べていくので、手元の料理がなくなっていく。

ル「なんでギザ男の所にいるんだ？」

『ギザ男？(キッドさんのことかな？)

呼んでもらったの』

ル「へぇ…じゃあこの手、なんだ？」

にこにこしていたルフィが、すっと真顔になって恋歌の腰に回されているキラーの手を見下ろした。

『…なんでか、ってのはちょっとわからないけど…』

ル「なぁ母ちゃん…

よく、わかんねぇけど…こういうの、嫌だ」

歯切れの悪いルフィにどうかしたかと首を傾げ頭を撫でてやるが、言いたいことがまとまらないのか、難しい顔をしている。

『わかった

キラーさん、手を離してもらえますか？』

キラ「え…あ、ああ」

ルフィが嫌そうな顔をしているのは何か理由があるのだと、キラーに手を離してほしいと伝え、手を離してもらう。

ル「にしし！」

キッド「てめぇ…！離れやがれ！！」

ぎゅーっと抱き着いてくるルフィを、キッドが無理やり剥がそうとしてくるが、ルフィは恋歌から離れない。

キラ「恋歌…ほんとに、麦わらの…母親、なのか？」

『生みの親、ではありませんけどね』

ぎゃーぎゃーと騒いでいるルフィとキッドを周りが遠巻きに見て、誰もかかわらないようにしている。

『ルフィ、他にも美味しそうな食べ物たくさんあるだろうし、宴に戻ってきたら？』

ル「んー…母ちゃんはここにいるのか…？」

『まぁ、ほかに行くところもないしね』

腕を組んで唸っているルフィは、食べ物と恋歌を天秤にかけ何かを悩んでいる。

ル「なんかこう…ここは危ねぇ気がして…」

『危ない…？

わたしの正体知ってる人たちだから大丈夫だよ』

桜姫とわかっているのであれば、簡単に手を出したりされないだろうと、笑ってルフィの背中を押してやると、不服そうな顔をしていたが、新しく運ばれてきた肉料理に顔を輝かせ一目散に走っていった。

キッド「麦わらのやつ…なにしに来やがったんだ…」

嵐のように騒ぎだけ起こして去っていたルフィを見送り、キッドが疲れたように腰を下ろした。

キッド「(この女…麦わらの母親、って割には若すぎる

あのバカ猿は嘘なんてつける性質(タチ)じゃねぇ)」

ルフィに恋歌の腰から手を離せと言われ、恋歌もルフィの嫌がる事だからと、もう一度手を回そうとするキラーにダメだと注意をしている。

年齢を聞きたくなったが、女性に年齢を聞くことは躊躇われ、聞く事が出来ずに、もやもやとしたまま時間だけが過ぎていく。





宴が始まってから数時間。

夜になり、酔いつぶれている海賊たちも増え、最初よりは騒ぎが落ち着いている。

『(なんか…変な感じがする…)』

「「……」」

いつもより揺れる視界と少し熱い身体に違和感を感じるが、何が原因かわからないため、まだ体力が完全に戻っていなかったのかと、揺れる視界を元に戻すように軽く目を閉じる。

肩にぬくもりがきた直後とん、となにかにもたれかからされた為、目を開けてもたれかかっている先を見る。

キラ「気分が悪いならもたれてていい」

『いえ、大丈夫です…』

キラ「(抵抗も弱いし顔が赤い…)」

肩に触れられている手を退けようとするが、うまく力が入らず抵抗が弱々しい。

『あの…そろそろわたし…戻ります』

キラーの胸を押して離れようとするが、離してくれず立ち上がる事が出来ない。

キラ「おれたちの船で休んでいくか？」

くい、っと顎を掴まれいつの間にかマスクを外したキラーに顔を覗きこまれる。

『いえ、戻るなら…ルフィの船に…』

司会が揺れる中白ひげの船まで戻る事は難しいかもしれないと思い、戻るならサニー号に戻ると言えば、キラーにぎろっと睨まれ、獰猛な目をした獣に睨まれているような感覚に陥った。

キラ「おれたちの船に来い

寝かせてやれるかは…恋歌次第だがな」

『(どういうこと…？)』

ほんのり色づいた頬、少し涙で滲んでとろんとした表情に、キラーの心臓もどくどくと脈打っているが、恋歌がキラーの言っている意味がわからず首を傾げている。

もうほとんど小柄な恋歌を押し倒してしまいそうな勢いで覆いかぶさっているキラーは、ごくっと唾を飲み込んで恋歌の唇に噛みつこうと唇を寄せた。