恋歌を抱えてローが戻ってきたため、ハートの海賊団は、恋歌が怪我をしたのかと慌てたが、眠っているだけだと告げられ、静かにしろと怒られた。

自室のベッドに横たわらせ、布団を被せてやると、恋歌の寝顔を見ながらベッドの縁に座りふぅ、と息をはく。

ロー「（ったく…無茶しやがって）」

身体を何度調べても、疲労で眠っているだけとしかわからず、まだ少し汗が滲んでいる額を拭ってやる。

まだしばらく起きないだろうと、ローは音を立てないようにそっと部屋から出た。






『ん…

ん？』

目が覚めた恋歌は、最後の記憶が外なのに、室内でしかも見覚えのあるベッドに寝かされていることに気づいて、身体を起こして辺りを見渡した。

『（運んでくれたのかな）』

掌を見て大体の体力が回復したことを確認し、ベッドから出ようとすると、控えめな音で扉が開いた。

ロー「…なんだ

もう起きて大丈夫なのか？」

『はい、ご迷惑かけました』

手にいろいろ持っているローは、もう起き上っている恋歌に驚いたように目を見開いたが、ベッドから出ようとしていることに気づき、すたすたと近寄ってきた。

ロー「無理するな

お前が倒れるなんて相当だろう」

世界最強と言われる桜姫が倒れたという噂は頂上戦争以外ない。

よっぽど疲れたのだろうと、軽く肩を押してベッドから出るなと伝え、手に持っていたものをベッドの上に置く。

『どれぐらい眠ってました？』

ロー「倒れてから20分も経ってねぇよ」

ローが手に持っていたのは服やバスタオル、こんなに早く起きると思っていなかったのか、本や簡単な食べ物。

『力の使い過ぎなので、20分も寝かせて頂けたならもう大丈夫です

ありがとうございました』

ロー「……」

へらっと笑う恋歌に、眉間に皺を寄せたローだったが、その言葉に嘘はないとわかり、諦めたようにため息をついた。

ロー「汗かいてただろ

シャワーでいいならこの部屋にある

着替えも貸してやれるが、どうする」

『借りて…いいんですか？』

ロー「ああ」

元々そのつもりで服やバスタオルを持ってきていたローは、ベッドから先に立ち上がってシャワールームに向かう。

ロー「着替えとタオルはここに置いておく

中の物は好きに使え

ゆっくり…はできねぇかもしれねぇが、急がなくていい」

『はい、ありがとうございます』

脱衣所にいろいろと準備してくれたローにお礼を言って、ベッドから立ち上がった恋歌は、シャワールームへ。

ロー「他に必要な物があれば言え

用意できるものはしておく」

『いえ、お風呂を貸してもらえるだけで十分です』

ロー「わかった」

ぽん、と背中を押された恋歌は、またお礼を言って扉を閉めた。