『(いつもより体力の消耗が激しいけど…この程度ならまだ大丈夫か)』

思ったより体力を奪われた恋歌は、回復の為に眠気が襲ってきているが、まだバスターコールが収まっていない。

バスターコールを何とかするまで眠ってはいけないと、ぱちん、と頬を叩いた。

「ちょっと待て！」

バスターコールを止めに、海まで向かおうとすると、大きな手に腕を掴まれた。

掴まれている腕をたどれば、最悪の世代の１人であるキラーが息を切らせている。

キラ「あんた、どこに行くつもりだ」

『どこにって…まだバスターコールが継続しているのでそれを止めに行きます』

それがなにか？、というように首を傾げている恋歌の腕を、ぎりっと強い力で握られ、普通の女であれば軽く骨が折れているだろう力にさらに首を傾げる。

ロー「おい、その手を離せ」

ぐいっと反対の手を引かれた恋歌は、一色触発の雰囲気にどうすればいいのかとおろおろしている。

ル「あのマスクのやつなにしてんだ？」

キッド「……」

キラーと初対面の恋歌はなぜ引き止められているのかわからないが、一刻も早くバスターコールを止めに行きたいので、掴まれている両腕をぶんぶんと振る。

『話があるなら後で聞きます

今はこの手、離してください』

ロー「……」

あとで自分の元に戻ってくると約束したため、先に素直に離したのはロー。

キラ「…わかった」

その姿を見てキラーも渋々といった感じに手を離した。

『ではまた後で』

ル「ああ！」

ルフィに笑顔で見送られ、その場からいなくなった恋歌は、一瞬後には軍艦を破壊していた。

ロー「麦わら屋、恋歌を追いかけるぞ」

ル「おう」

恋歌を追いかけたローに続くようにルフィも海岸に向かい、取り残された他の最悪の世代たちは、無言でその場に立ち尽くす。

強くなったつもりでいたが、こうも完璧に守られ、直感的に勝てないと思ってしまった相手に無傷で勝利していた、世界最強の肩書を持つ桜姫に、憤り、怒り、妬み、感謝と様々な感情が渦巻いている。

キッド「…おい、キラー

おれたちも行くぞ」

キラ「あ、ああ」

ローとルフィの後を追ったキッドたちを見て、最悪の世代たちもつられるように海岸へと向かった。






「桜姫！」

「本物！！」

「ってことはバレットは倒したのか！？」

海岸に行けば見た事もないような海賊たちが応戦しているが、恋歌の刀のおかげで、海賊たちに酷い怪我をしている者たちはいないように見える。

黄「んー、君と戦うのはこりごりなんだけどねぇ」

『わたしだってそうですよ』

頂上戦争でも唯一スピード負けした黄猿は、大将の中でも厄介な存在と認識している恋歌は、ここにいる大将が黄猿であるということに、自分の運の無さを感じていた。

藤「……」

戦いにくそうにしているのは黄猿だけではなく藤虎もで、ぽりぽりと頭をかきながら困ったような表情を浮かべている。

『…今回はバレットを引き渡します

それでおとなしく引き下がってくれませんか』

黄「…そうしたいのはやまやまなんだけどねぇ

君を捕らえる絶好のチャンスでもあることにかわりはない」

『…どうしてそう思うんですか？』

黄「だって君、いつもより元気がなさそうだからねぇ

バレットとの戦いで消耗でもしたってところかなぁ」

『まさか…あなたを退けるぐらいの体力は残ってますよ』

黄「おー、怖い」

額から伝ってくる汗が、もう少しで体力の限界が来ることを知らせてくる。

正直黄猿と藤虎を退け、軍艦を潰す体力までは残っていない。