家の戻り、恋歌はソファに寝かせて布団をかぶせてやる。

ヴォルフはすぐに目を覚まし、椅子に座っている。

気持ちを落ち着かせる為にそれぞれがシャワーを浴びに行っている間にローが診察を始める。

「恋歌、撃たれたんだよね…？」

「ああ…」

血はほとんど出ていないが、太ももに何かが刺さった痕がある。

おそらくここから何かが注入されたのだろう。

体内を調べれば薬が体内を回っていたのでそれは取り除いた。

もうしばらくすれば目を覚ますはず。

「(魔力は…もう少しか…)」

胸元の紋章を確認していつもより少し薄くなっているそれを回復させる為に手を繋ぐ。

『ん…』

「恋歌！！」

ゆっくりと目を開けた恋歌に、ベポが半べそをかきながら抱き着く。

ベポに抱き着かれたまま視線を泳がせて、家に戻ってきている事に気づいた恋歌は、身体を起こした。

「気分はどうだ？」

『…なんとも、ないよ』

心配をかけまいと嘘をついている事は顔色を見れば明らかだった。

魔力も少なくなっており、身体の中に打ち込まれた薬は、強制的に人を眠らすには十分な量。

おそらく恋歌には量が多すぎたため、気分は優れないはずだとローにはわかっていた。

「恋歌！

良かった、目が覚めたんだな」

ペンギンとシャチが風呂から戻ってきて、起き上っている恋歌に笑顔を見せる。

だが、顔色が悪い事に気づき２人とも眉間に皺を寄せた。

「くそ…あいつら…」

恋歌を守ると決めたはずなのに、守る事が出来なかったと悔しそうな表情を浮かべている。

「おれたちに魔法使ってくれたから魔力足りない…？」

『ううん、大丈夫だよ

ありがとう』

へらっと笑う恋歌にいらっとしたローは、まだ抱き着いたままのベポを押しのけ恋歌の頬を挟み込んだ。

『ん！？』

「「「！！」」」

全員が見ている前でキスされた恋歌は驚きで身体が固まり、他の4人も口を開けたまま固まっている。

魔力が急激に回復していく感覚に意識を持っていかれそうになるが、その前に唇が離れた。

「え…？」

「…シャワー行ってくる」

ぽかんとしたままの全員を置いていき、ローはシャワーに行ってしまった。

「えー…っと、いつの間にそんな関係に…？」

『そんな関係…？』

赤くなった顔を手で扇ぎながら元に戻している恋歌に、シャチが効くが恋歌は意味がわかっていないようで首を傾げている。

「いや…いつからキスなんて…」

ペンギンに”キス”と単語を出されて、また徐々に顔に赤みが戻ってきた恋歌は、違うんだと首を横に振る。

『ローの、魔力の量が多い、っていう話は、したことあるよね？』

「あ、ああ」

『わたしたち、星の魔女は…目と口が、特殊

だから…魔力を、もらうのは…さっきの方法が、一番早いの…

ローは…わたしに、魔力をくれてるだけ』

「な、なるほど？」

恋人なのかという事を聞きたかったのだが、この様子では違うのだろうとなんとなく感じ取った。

ローの様子を見た感じでは、ただ魔力を渡すための義務的な行為には見えなかったが、その話はまた今度にしようと、取り敢えず恋歌が元気になったことを喜んだ。