出会いから出航まで
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最初は恋歌の気まぐれかとも思っていたが、数日間もの間、恋歌がローの自転車に乗ることはなかった。
帰りはいつも待ってくれている誰かと帰っていたが、あの日からロー以外の3人の予定を聞いて、3人の誰かと帰る約束をしている。
ベポはまだ自転車の2人乗りに不安があるので、主にペンギンかシャチだったが、ベポしか時間が合わない時でもローに頼むことはなかった。
家での会話も少なくなり、視線すら合わなくなってきたような気さえする。
「お、おい…そろそろローさんの機嫌が…」
「わかってるって!
けど…俺たちにはどうしようも…」
夕食の支度をしているベポと恋歌はリビングにはいないが、リビングではローの機嫌がマックスに悪く、重苦しい空気が流れている。
原因は恋歌だとわかっているが、恋歌も頑なに避けている理由を言わないので、解決方法がわからない。
「…なんじゃガキども
辛気臭い顔しおって…」
最後に帰ってきたヴォルフが、重苦しい雰囲気に首を傾げながらリビングに入ってくる。
この時ばかりはペンギンとシャチには、ヴォルフが救世主に見えた。
「ほれ、ここにシワばかり寄せとると、こういう顔になるぞい」
「うるせぇ…」
ぐりぐりとローの眉間のシワを解してくるヴォルフの手を軽く払い、ローは小さくため息をついた。
「女に相手にされないぐらいで情けないやつじゃ」
「は?」
「いいかクソガキ
時には力づくで話をする場所を設けるのも大切じゃ
特に…言葉数が少ないあの子の場合はな」
「ガラクタ屋…」
ローが不機嫌な理由は何年も一緒に過ごしてきたからわかっている。
ローが自分のアドバイスを受け入れるかはわからないが、恋歌の事はこの中で一番長く見てきている。
何か言いたそうにローが口を開いたところで、キッチンからベポと恋歌が料理を持ってきたため、話は中断されることになった。
夕食後。
『おやすみ』
「「「おやすみー」」」
風呂も入り終わったパジャマ姿の恋歌に挨拶をし、自分の部屋に戻っていく背中を見送る。
「おれたちも寝るか」
「だなー」
同室の2人も寝ると言って部屋に戻っていく。
「ローさん、おれたちも寝る?」
「ああ」
読んでいた医学書を閉じ、ベポと一緒に席を立って、自分たちの部屋に戻る階段を上がるが、部屋の前で足を止めた。
「ローさん?」
「悪いベポ
先に寝ててくれ
後から戻る」
「?
アイアイ」
こんな夜中にどうしたのかと疑問に思ったが、深くは追求せずベポは部屋に入った。
「(ったく…仕方ねぇ…)」
こんこん、と恋歌の部屋の扉を叩けば、中から足音が聞こえがちゃりと扉が開かれる。
「…話がある」
『…』
断れなさそうな雰囲気に小さく頷いた恋歌は、どうぞと身体を横に避け、ローを部屋に通した。
ベッドに横並びに座り、すこしの沈黙の後ローが口を開いた。
「最近、おれを避けてるよな?」
ローのその言葉に恋歌は肩を揺らし、また小さく頷いた。
≪ごめんなさい…≫
「それはいい
ただ、理由もわからねぇまま避けられるのは…正直きつい」
その言葉を聞いて、申し訳ない事をしたと、すべてを話す事を決めて、事の発端となった本を取り出した。
「それは…?」
≪この本魔女の身体の仕組みについて書いてあるの≫
「身体の仕組み!?」
その本の内容はローがずっと知りたかった事で、恋歌から本を受け取るが、魔女の文字で書かれている為、ローには読むことはできない。
「恋歌、これ翻訳してくれねぇか!?
魔女の身体の仕組みを理解してりゃお前に何かあった時…?」
これで恋歌が何かあった時に処置が出来ると、興奮したように恋歌に顔を近づけると、ぼんっと顔を赤くして遠ざけるように胸を押された。
「わ、悪い…」
そういえば避けられていたんだったと思いだし、気持ちを落ち着かせて恋歌から離れる。
ぱらぱらと読めない本を捲っていると、挿絵のあるページがある為そこで手を止めた。
そのページだけでも理解できないかとじっと見ていると、すっと恋歌の手が視界に入ったので、顔をあげる。
≪マシューとの戦いの時…ローがわたしに…魔力をくれたよね?≫
ロー「あ、ああ」
徐々に染まっていく頬につられてローの顔も少し赤くなるが、これだけで避けられていた理由がわかった。
≪その本にも…そのことが書いてて…
思い出しちゃったの…≫
「…嫌だったのか?」
やっぱりか、と予想通りの理由と、大きく首を何度も横に振る姿を見て、嫌われたわけではなかったのだとほっとした。
≪恥ずかしかっただけ…≫
「そうか…」
赤くなった顔を隠すように俯いてしまった恋歌の頭を見下ろし、もじもじとしている恋歌の手を握ると、びくっと身体を揺らした。
「恋歌…」
本を横に置いて、恋歌の顔を見る為に頬に手を当てて視線を合わせる。
『(な、なに…?
心臓が…うるさい…)』
真剣な顔をしているローの視線から目を逸らす事が出来ず、ばくばくと鳴る心臓を落ち着かせる為に胸に手を当てる。
「嫌じゃ…なかったんだよな?」
それが何を意味するのかがわかった恋歌はゆっくりと頷いた。
徐々に近づいてくるローの顔に、なぜか恋歌は自然に目を閉じ、優しく重なる唇を受け入れた。
「(唇って…柔らけぇんだな…)」
初めて魔力の供給という理由以外で重ねた恋歌の唇は思ったより柔らかく、以前のように意識を持っていかれる感覚はないが、別の気持ちよさがある。
柔らかい唇を堪能するように甘噛みをしたり舐めたりしていると、しばらくして肩を叩かれたため唇を離した。
「…ふっ」
顔を真っ赤にして息を切らしている恋歌を見て、キスをしている間ずっと息を止めていたんだとわかり、無意識に笑ってしまった。
「恋歌、あの方法は正しい方法なんだな?」
視線を泳がせている恋歌の頭を自分の胸に引き寄せて頭を撫でてやり、聞きたかったことを確認すると、こくん、と頷きが返ってきた。
『(やっぱり…ローの魔力は気持ちいい…)』
「魔力が欲しい時は言え
いつでもやる」
触れている箇所から魔力がゆっくりと流れてきており、撫でられている手の心地よさに目を閉じて、もう一度頷いた。
その翌日から朝の出勤時にはローの荷台に恋歌が乗るようになり、ペンギンとシャチはほっと胸をなでおろした。
ただ一つわからないのは、ローの機嫌がいつもより良いように見えた事だが、それについてはまぁいいかと追求する事はしなかった。
帰りはいつも待ってくれている誰かと帰っていたが、あの日からロー以外の3人の予定を聞いて、3人の誰かと帰る約束をしている。
ベポはまだ自転車の2人乗りに不安があるので、主にペンギンかシャチだったが、ベポしか時間が合わない時でもローに頼むことはなかった。
家での会話も少なくなり、視線すら合わなくなってきたような気さえする。
「お、おい…そろそろローさんの機嫌が…」
「わかってるって!
けど…俺たちにはどうしようも…」
夕食の支度をしているベポと恋歌はリビングにはいないが、リビングではローの機嫌がマックスに悪く、重苦しい空気が流れている。
原因は恋歌だとわかっているが、恋歌も頑なに避けている理由を言わないので、解決方法がわからない。
「…なんじゃガキども
辛気臭い顔しおって…」
最後に帰ってきたヴォルフが、重苦しい雰囲気に首を傾げながらリビングに入ってくる。
この時ばかりはペンギンとシャチには、ヴォルフが救世主に見えた。
「ほれ、ここにシワばかり寄せとると、こういう顔になるぞい」
「うるせぇ…」
ぐりぐりとローの眉間のシワを解してくるヴォルフの手を軽く払い、ローは小さくため息をついた。
「女に相手にされないぐらいで情けないやつじゃ」
「は?」
「いいかクソガキ
時には力づくで話をする場所を設けるのも大切じゃ
特に…言葉数が少ないあの子の場合はな」
「ガラクタ屋…」
ローが不機嫌な理由は何年も一緒に過ごしてきたからわかっている。
ローが自分のアドバイスを受け入れるかはわからないが、恋歌の事はこの中で一番長く見てきている。
何か言いたそうにローが口を開いたところで、キッチンからベポと恋歌が料理を持ってきたため、話は中断されることになった。
夕食後。
『おやすみ』
「「「おやすみー」」」
風呂も入り終わったパジャマ姿の恋歌に挨拶をし、自分の部屋に戻っていく背中を見送る。
「おれたちも寝るか」
「だなー」
同室の2人も寝ると言って部屋に戻っていく。
「ローさん、おれたちも寝る?」
「ああ」
読んでいた医学書を閉じ、ベポと一緒に席を立って、自分たちの部屋に戻る階段を上がるが、部屋の前で足を止めた。
「ローさん?」
「悪いベポ
先に寝ててくれ
後から戻る」
「?
アイアイ」
こんな夜中にどうしたのかと疑問に思ったが、深くは追求せずベポは部屋に入った。
「(ったく…仕方ねぇ…)」
こんこん、と恋歌の部屋の扉を叩けば、中から足音が聞こえがちゃりと扉が開かれる。
「…話がある」
『…』
断れなさそうな雰囲気に小さく頷いた恋歌は、どうぞと身体を横に避け、ローを部屋に通した。
ベッドに横並びに座り、すこしの沈黙の後ローが口を開いた。
「最近、おれを避けてるよな?」
ローのその言葉に恋歌は肩を揺らし、また小さく頷いた。
≪ごめんなさい…≫
「それはいい
ただ、理由もわからねぇまま避けられるのは…正直きつい」
その言葉を聞いて、申し訳ない事をしたと、すべてを話す事を決めて、事の発端となった本を取り出した。
「それは…?」
≪この本魔女の身体の仕組みについて書いてあるの≫
「身体の仕組み!?」
その本の内容はローがずっと知りたかった事で、恋歌から本を受け取るが、魔女の文字で書かれている為、ローには読むことはできない。
「恋歌、これ翻訳してくれねぇか!?
魔女の身体の仕組みを理解してりゃお前に何かあった時…?」
これで恋歌が何かあった時に処置が出来ると、興奮したように恋歌に顔を近づけると、ぼんっと顔を赤くして遠ざけるように胸を押された。
「わ、悪い…」
そういえば避けられていたんだったと思いだし、気持ちを落ち着かせて恋歌から離れる。
ぱらぱらと読めない本を捲っていると、挿絵のあるページがある為そこで手を止めた。
そのページだけでも理解できないかとじっと見ていると、すっと恋歌の手が視界に入ったので、顔をあげる。
≪マシューとの戦いの時…ローがわたしに…魔力をくれたよね?≫
ロー「あ、ああ」
徐々に染まっていく頬につられてローの顔も少し赤くなるが、これだけで避けられていた理由がわかった。
≪その本にも…そのことが書いてて…
思い出しちゃったの…≫
「…嫌だったのか?」
やっぱりか、と予想通りの理由と、大きく首を何度も横に振る姿を見て、嫌われたわけではなかったのだとほっとした。
≪恥ずかしかっただけ…≫
「そうか…」
赤くなった顔を隠すように俯いてしまった恋歌の頭を見下ろし、もじもじとしている恋歌の手を握ると、びくっと身体を揺らした。
「恋歌…」
本を横に置いて、恋歌の顔を見る為に頬に手を当てて視線を合わせる。
『(な、なに…?
心臓が…うるさい…)』
真剣な顔をしているローの視線から目を逸らす事が出来ず、ばくばくと鳴る心臓を落ち着かせる為に胸に手を当てる。
「嫌じゃ…なかったんだよな?」
それが何を意味するのかがわかった恋歌はゆっくりと頷いた。
徐々に近づいてくるローの顔に、なぜか恋歌は自然に目を閉じ、優しく重なる唇を受け入れた。
「(唇って…柔らけぇんだな…)」
初めて魔力の供給という理由以外で重ねた恋歌の唇は思ったより柔らかく、以前のように意識を持っていかれる感覚はないが、別の気持ちよさがある。
柔らかい唇を堪能するように甘噛みをしたり舐めたりしていると、しばらくして肩を叩かれたため唇を離した。
「…ふっ」
顔を真っ赤にして息を切らしている恋歌を見て、キスをしている間ずっと息を止めていたんだとわかり、無意識に笑ってしまった。
「恋歌、あの方法は正しい方法なんだな?」
視線を泳がせている恋歌の頭を自分の胸に引き寄せて頭を撫でてやり、聞きたかったことを確認すると、こくん、と頷きが返ってきた。
『(やっぱり…ローの魔力は気持ちいい…)』
「魔力が欲しい時は言え
いつでもやる」
触れている箇所から魔力がゆっくりと流れてきており、撫でられている手の心地よさに目を閉じて、もう一度頷いた。
その翌日から朝の出勤時にはローの荷台に恋歌が乗るようになり、ペンギンとシャチはほっと胸をなでおろした。
ただ一つわからないのは、ローの機嫌がいつもより良いように見えた事だが、それについてはまぁいいかと追求する事はしなかった。