少しの言葉でも慣れるまでは家の中だけで話すと決め、町ではいつも通りに仕事をこなしていった。

ヴォルフからもらった本を寝る前に読むことを日課とし、今日も部屋で1人本を読んでいた。

本の内容は星の魔女の魔法の使い方から、別の魔女の魔法の使い方、魔女の身体について、魔力についてなど、今まで知らなかったものばかり。

また戦うことがあった時、今度はみんなを助けられるようにと、密かに魔法の練習も続けている。

『（他の魔女の魔法は練習しないと無理か…）』

魔力量を増やす方法も載っているが、一朝一夕には無理。

だが、他の魔法も使えればきっと役に立つはずと、魔力量を増やす方法も試している。

ぱたん、と読み終わった本を閉じて、月の位置を見て時間を確認し、もう少し読んでから寝ようと、次の本を取り出した。

『（えっと…この本は…）』

ぱらぱらとページをめくり、あるページでぴたっと手が止まった。

そのページの内容を何回も読み直し、記憶を遡ってぼんっと顔を赤くした。

『（わ、忘れてた…！！）』

本を読むどころではなくなった恋歌は、布団を頭からかぶり、ぎゅっと目を閉じた。







『（うー…全然寝れなかった…）』

一度思い出してしまったので、それが頭から離れず、全く寝付けなかった。

欠伸をしながら着替え、朝食当番のため、準備のためにリビングに降りる。

誰もいないリビングを抜け、キッチンに入り、朝食の魚を焼き始める。

『（眠い…眠気覚まし何かあったかな…）』

ヴォルフの農園を借りて、紅茶の茶葉をオリジナルで栽培し、ストックとして置いている。

意外とみんなにも好評なので、誰でも飲めるようにしてあるのだが、その中から眠気覚ましの効能がある茶葉を取り出して、魚の火加減を調節しながら一息つく。

『（よし）』

紅茶を飲み終え、軽く両頬を叩いて眠気を飛ばし、焼けた魚を皿に乗せ、机に並べていく。

米を全員分器によそっていると、ばたばたと階段を降りてくる音が聞こえてくる。

『おはよう』

「「「おはよう！！」」」

「おはよ」

この声に出しての挨拶も恒例になってきた。

3人が元気に挨拶を返してくれ、一番後ろのローは小さく挨拶を返す。

がたがたと4人が椅子に座り、最後にヴォルフが降りてきて、椅子に座ったところで配膳を終えた恋歌も座り、全員で朝食を食べ始める。

食べ終えた後はいつも通り、自転車へ仕事のために町へ。

「よし、行くぞ」

「お？」

「は？」

恋歌を乗せるためにぽん、と荷台を叩いたローだったが、なぜか恋歌はペンギンの腕に抱きついた。

「どうした？

今日はおれがいいのか？」

冗談半分で聞いてみると、何度も頷きが返ってきたので、どういうことだと全員で顔を見合わせる。

「…まぁいい

行くぞ」

なんだか心臓のあたりがもやっとしたが、遅刻するわけにはいかず、恋歌はペンギンに任せて、自転車を漕ぎ始めた。