出会いから出航まで
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ローは恋歌が何がしたいかわからないが、倒れたら運んでやるために木箱にもたれながら、後ろで腕を組んで見守っている。
「恋歌のやつなにしてんだ?」
倒した者たちを全員一纏めに縛り、マシューだけは逃げないようにとマストにくくりつけてある。
「さぁな」
木箱の中で座り込んでいる恋歌は、ぐるっと木箱の内側を見渡した後、ある一点を見つめてじっと静止している。
「…恋歌、ここに…いたんじゃな…?」
ヴォルフの声に振り向いた恋歌は、笑顔で泣きながら頷いた。
「そうか…」
ヴォルフも木箱の中に入り、しゃがんで恋歌の肩を抱いてやる。
「そうか…!
よかった…!よかったな…!」
目頭を押さえて泣くヴォルフに、意味のわからない4人は顔を見合わせてそっと木箱の中に入る。
ぐるっと中を見渡しても木目しかなく、2人がなぜ泣いているのかわからない。
『…ただいま』
「「「!!」」」
恋歌が声を出した直後、木箱の内側から光が溢れ出してきた。
その光がおさまった後、力尽きたように恋歌が倒れ、ヴォルフがしっかりと支えた。
「よく頑張った…
よし、後始末をして帰るぞ
ほれ、さっさと恋歌を運ばんか」
ヴォルフに呼ばれ、ローの背中に恋歌を乗せると、木箱から出て背伸びをする。
「これだけでかい船ならどこかに電伝虫があるはずじゃ
海軍に連絡して、ラッドのやつにも連絡をしておけ」
ヴォルフに言われた通りにばたばたとロー以外の3人が動き出し、そばからいなくなった。
「今更恋歌もお前たちに隠し事はせんじゃろう…
目が覚めたら話を聞いてやれ」
「ああ」
背中に感じる温もりと重さをしっかり背負い、後始末を終えた後、6人で家に帰った。
その日の朝。
『(そっか…
戻って…これたんだ)』
陽が昇ってしばらくした頃、恋歌は自分の部屋で目を覚ました。
身体を起こせば不調はなにもなく、どこか清々しい気持ちですらある。
部屋の中には誰もいないが、下でみんなが騒いでいる声が聞こえる。
ベッドからおり、そのまま寝てしまっていたため着替えることはせずに、リビングへと向かう。
とんとん、と階段を降りると、恋歌が起きてきたと言うことに気づいて、騒いでいた声が静まり返る。
「おはよう」
《おはよう》
「見てこれ!おれが書いたんだ!」
ベポが見せてきたのはオムレツ。
ケチャップを使ってクマが描かれているが、ふにゃふにゃの線で描かれている為かろうじてクマに見える程度。
《上手だね》
「だろ!?」
「ほんと恋歌はベポに甘いよなー」
いつものように用意された朝食、いつも通り話しかけてくれるみんな、いつも通りの自分の席。
「いいからさっさと座れ
飯が冷める」
ローに注意され全員が席につき、朝食を食べ始める。
いつも通りの騒がしい食卓、いつも通りの優しい人たち。
ぽたぽたと流れ落ちる涙は、ブラウスに染みを作っていく。
最悪、戻ってこれないと思っていた。
まだまだ制御し切れない魔法に、少ない魔力。
それで勝てる相手だとも思っていなかった。
「…恋歌」
拭うことをしなかった涙を、ローに親指で拭われ、ふっと優しく笑いかけられた。
「おかえり」
「「「おかえり!」」」
あの戦いが夢だったのではと思うほどいつも通り。
『…うん、ただいま』
勝手に出て行った自分を迎えにきてくれ、再び迎え入れてくれたことに心から感謝した。
朝食後、ラッドに事情を説明して、全員1日休みにしてもらったため、恋歌の話を聞くために、リビングに残る。
ヴォルフも話が終わるまでは、いてくれると言ってくれた。
『まずは、勝手に出て行って、ごめんなさい
力を貸してくれて、ありがとう』
机にあたるギリギリのところまで頭を下げると、全員が気にするなと笑ってくれた。
「ていうか…普通に話して、大丈夫なのか?」
ペンギンが言葉を選ぶように恋歌に問うと、首を横に振られた。
《正直まだ使いこなせてないからずっとっていうのは…怖いかな
でも、お礼は直接言葉で言いたかったから》
「そっか」
手話があるから平気だと言ってくれるペンギン。
「でもあれだな…綺麗な声だから、聞くとどきどきすんな…」
胸に手を当てて照れたような顔をするシャチ。
「そうだよなー
おれもどきどきした………なんか、すいません…」
「「なんで謝った!?」」
どきどきしてすいませんと謝る可愛いベポ。
「変なところで弱気なやつじゃ
あれだけの魔法を使えるようになったんじゃから、もっと自信を持て」
顔には出ていないが、成長を喜んでくれるヴォルフ。
「喋りてぇ時に喋ればいい
あの声は大事な時用にとっとけ
その方が星に願いってのをする時に価値があがるんじゃねぇか?」
「たしかに!」
いつも優しい言葉をくれるロー。
自分の過去の話をしても、この5人なら受け入れてくれるとわかる。
《ありがとう
わたしの、昔の話聞いてくれる?》
前置きを置いて、恋歌はゆっくりとした動作で、止まることなく話をする。
ヴォルフの元にやってきたのは、今から約5年前。
それは星の導きに従ってのことだった。
《わたしはある島の魔女の村で家族4人で暮らしてた
お父さんは緑の魔法の適性があって、お姉ちゃんがお父さんと同じ緑の魔法、お母さんがわたしと同じ星の魔法の適性がある魔女だった
魔女の髪と瞳の色は魔法の適性によって決まる
だからお母さんとわたしは髪と瞳の色が一緒で、お父さんとお姉ちゃんは緑の髪に茶色の瞳
これがわたしの家族
お母さんは自分の声を完璧にコントロールできてたから、普通に喋ってたけど、わたしはコントロールできるまであまり喋っちゃだめって言われてたし、魔女同士は声を出さなくても意思疎通できるから特に困ったことはなかった》
手話をローと出会ってから覚えたのも、魔女同士では声が必要ないため。
あの頃は今後もずっと必要ないと思っていた。
《村には15人ぐらいの魔女がいて、魔女じゃない人も10人ぐらいいたと思う
その中でわたしと同じ星の魔女は、お母さんとわたしと、村の長だったおばあちゃん
おばあちゃんの星魔法は、歴代一って言われるほどでね
人の運命すら視れる人だった
声の出し方も、魔法の使い方も、星の見方も…全部おばあちゃんとお母さんに教えてもらったものなんだ
幸せだった
それがずっと続くと…思ってたんだよ…》
手の動きが止まった恋歌の頭にぽん、と優しい手が置かれる。
ローに頭を撫でられているとわかり、息を吐いて続きを話す。
《ある日突然…1人の魔女の魔力が暴走したの
その魔女は火の魔法を使う魔女で、村はあっという間に炎に包まれた
でもその暴走は…仕組まれたものだった…
わたしたちは最初それに気づかなくて…暴走した魔女を止めようとしたの
魔女は魔力を使い切ったら意識を失う
だからなんとかして魔力を使い切らせようと…応戦した
みんな…みんな魔法で、子どもたちと魔法を使えない人たちを守ってくれた》
うまく魔法を使えない恋歌も、恋歌より幼い子どもたちも、魔法が使えない者たちも、大人の魔女が魔法で守ってくれていた。
そして暴走した魔女の魔力が尽き、意識を手放したところで、マシューが現れた。
「恋歌のやつなにしてんだ?」
倒した者たちを全員一纏めに縛り、マシューだけは逃げないようにとマストにくくりつけてある。
「さぁな」
木箱の中で座り込んでいる恋歌は、ぐるっと木箱の内側を見渡した後、ある一点を見つめてじっと静止している。
「…恋歌、ここに…いたんじゃな…?」
ヴォルフの声に振り向いた恋歌は、笑顔で泣きながら頷いた。
「そうか…」
ヴォルフも木箱の中に入り、しゃがんで恋歌の肩を抱いてやる。
「そうか…!
よかった…!よかったな…!」
目頭を押さえて泣くヴォルフに、意味のわからない4人は顔を見合わせてそっと木箱の中に入る。
ぐるっと中を見渡しても木目しかなく、2人がなぜ泣いているのかわからない。
『…ただいま』
「「「!!」」」
恋歌が声を出した直後、木箱の内側から光が溢れ出してきた。
その光がおさまった後、力尽きたように恋歌が倒れ、ヴォルフがしっかりと支えた。
「よく頑張った…
よし、後始末をして帰るぞ
ほれ、さっさと恋歌を運ばんか」
ヴォルフに呼ばれ、ローの背中に恋歌を乗せると、木箱から出て背伸びをする。
「これだけでかい船ならどこかに電伝虫があるはずじゃ
海軍に連絡して、ラッドのやつにも連絡をしておけ」
ヴォルフに言われた通りにばたばたとロー以外の3人が動き出し、そばからいなくなった。
「今更恋歌もお前たちに隠し事はせんじゃろう…
目が覚めたら話を聞いてやれ」
「ああ」
背中に感じる温もりと重さをしっかり背負い、後始末を終えた後、6人で家に帰った。
その日の朝。
『(そっか…
戻って…これたんだ)』
陽が昇ってしばらくした頃、恋歌は自分の部屋で目を覚ました。
身体を起こせば不調はなにもなく、どこか清々しい気持ちですらある。
部屋の中には誰もいないが、下でみんなが騒いでいる声が聞こえる。
ベッドからおり、そのまま寝てしまっていたため着替えることはせずに、リビングへと向かう。
とんとん、と階段を降りると、恋歌が起きてきたと言うことに気づいて、騒いでいた声が静まり返る。
「おはよう」
《おはよう》
「見てこれ!おれが書いたんだ!」
ベポが見せてきたのはオムレツ。
ケチャップを使ってクマが描かれているが、ふにゃふにゃの線で描かれている為かろうじてクマに見える程度。
《上手だね》
「だろ!?」
「ほんと恋歌はベポに甘いよなー」
いつものように用意された朝食、いつも通り話しかけてくれるみんな、いつも通りの自分の席。
「いいからさっさと座れ
飯が冷める」
ローに注意され全員が席につき、朝食を食べ始める。
いつも通りの騒がしい食卓、いつも通りの優しい人たち。
ぽたぽたと流れ落ちる涙は、ブラウスに染みを作っていく。
最悪、戻ってこれないと思っていた。
まだまだ制御し切れない魔法に、少ない魔力。
それで勝てる相手だとも思っていなかった。
「…恋歌」
拭うことをしなかった涙を、ローに親指で拭われ、ふっと優しく笑いかけられた。
「おかえり」
「「「おかえり!」」」
あの戦いが夢だったのではと思うほどいつも通り。
『…うん、ただいま』
勝手に出て行った自分を迎えにきてくれ、再び迎え入れてくれたことに心から感謝した。
朝食後、ラッドに事情を説明して、全員1日休みにしてもらったため、恋歌の話を聞くために、リビングに残る。
ヴォルフも話が終わるまでは、いてくれると言ってくれた。
『まずは、勝手に出て行って、ごめんなさい
力を貸してくれて、ありがとう』
机にあたるギリギリのところまで頭を下げると、全員が気にするなと笑ってくれた。
「ていうか…普通に話して、大丈夫なのか?」
ペンギンが言葉を選ぶように恋歌に問うと、首を横に振られた。
《正直まだ使いこなせてないからずっとっていうのは…怖いかな
でも、お礼は直接言葉で言いたかったから》
「そっか」
手話があるから平気だと言ってくれるペンギン。
「でもあれだな…綺麗な声だから、聞くとどきどきすんな…」
胸に手を当てて照れたような顔をするシャチ。
「そうだよなー
おれもどきどきした………なんか、すいません…」
「「なんで謝った!?」」
どきどきしてすいませんと謝る可愛いベポ。
「変なところで弱気なやつじゃ
あれだけの魔法を使えるようになったんじゃから、もっと自信を持て」
顔には出ていないが、成長を喜んでくれるヴォルフ。
「喋りてぇ時に喋ればいい
あの声は大事な時用にとっとけ
その方が星に願いってのをする時に価値があがるんじゃねぇか?」
「たしかに!」
いつも優しい言葉をくれるロー。
自分の過去の話をしても、この5人なら受け入れてくれるとわかる。
《ありがとう
わたしの、昔の話聞いてくれる?》
前置きを置いて、恋歌はゆっくりとした動作で、止まることなく話をする。
ヴォルフの元にやってきたのは、今から約5年前。
それは星の導きに従ってのことだった。
《わたしはある島の魔女の村で家族4人で暮らしてた
お父さんは緑の魔法の適性があって、お姉ちゃんがお父さんと同じ緑の魔法、お母さんがわたしと同じ星の魔法の適性がある魔女だった
魔女の髪と瞳の色は魔法の適性によって決まる
だからお母さんとわたしは髪と瞳の色が一緒で、お父さんとお姉ちゃんは緑の髪に茶色の瞳
これがわたしの家族
お母さんは自分の声を完璧にコントロールできてたから、普通に喋ってたけど、わたしはコントロールできるまであまり喋っちゃだめって言われてたし、魔女同士は声を出さなくても意思疎通できるから特に困ったことはなかった》
手話をローと出会ってから覚えたのも、魔女同士では声が必要ないため。
あの頃は今後もずっと必要ないと思っていた。
《村には15人ぐらいの魔女がいて、魔女じゃない人も10人ぐらいいたと思う
その中でわたしと同じ星の魔女は、お母さんとわたしと、村の長だったおばあちゃん
おばあちゃんの星魔法は、歴代一って言われるほどでね
人の運命すら視れる人だった
声の出し方も、魔法の使い方も、星の見方も…全部おばあちゃんとお母さんに教えてもらったものなんだ
幸せだった
それがずっと続くと…思ってたんだよ…》
手の動きが止まった恋歌の頭にぽん、と優しい手が置かれる。
ローに頭を撫でられているとわかり、息を吐いて続きを話す。
《ある日突然…1人の魔女の魔力が暴走したの
その魔女は火の魔法を使う魔女で、村はあっという間に炎に包まれた
でもその暴走は…仕組まれたものだった…
わたしたちは最初それに気づかなくて…暴走した魔女を止めようとしたの
魔女は魔力を使い切ったら意識を失う
だからなんとかして魔力を使い切らせようと…応戦した
みんな…みんな魔法で、子どもたちと魔法を使えない人たちを守ってくれた》
うまく魔法を使えない恋歌も、恋歌より幼い子どもたちも、魔法が使えない者たちも、大人の魔女が魔法で守ってくれていた。
そして暴走した魔女の魔力が尽き、意識を手放したところで、マシューが現れた。