出会いから出航まで
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目の前に現れた男に昔出会ってから、名前を忘れたことなどなかった。
昔より背が高くなった恋歌と比べても、倍以上はある背丈に、筋肉で盛り上がった身体。
『(マシュー…!)』
「あ?この女…どっかで見たことあるような…」
「似たような魔女なんざたくさんいたからな
いちいち覚えてないだろ」
「それもそうか!」
下品に笑う2人に杖を握る力がどんどん強くなる。
ここで声を出せば以前と何も変わっていないと、唇を噛み締めて飛びかかりたいのを抑える。
「血が出る
やめとけ」
『(え…なんで…)』
杖を握る手に、温かい手が乗せられ、耳に馴染んだ声と魔力に振り向くと、いつもの5人がいた。
「いやー、恋歌意外とすばしっこいのな」
「ほんとほんと
ついていくのも精一杯だった」
「ふん、わしが何年護身術を教えて鍛えとると思っとるんじゃ」
「えー、でも恋歌力はないよ?」
「「クマと比べるな!」」
「…すいません」
いつもの調子で話を続ける4人と、まだ手を握ってくれているローに視線を向ける。
「言ったよな?
何かあれば言えって
1人で抱え込むな」
優しい言葉に思わず涙が出そうになるが、敵を前にして泣いている場合ではないと、ぐっと涙を堪える。
「なんだこいつら…
いつの間に…」
「こいつらも魔女を狙ってるって事か?」
「…恋歌、こいつらがお前さんの探していたやつで間違い無いな?」
ヴォルフの言葉に頷くと、事情を知らない4人は、どういうことかと首を傾げる。
「恋歌が探していた…?」
「こやつらは奴隷を扱う商人
そして、恋歌がうちに来る前、恋歌のいた魔女の村を襲ったやつらじゃ」
「「「「!?」」」」
話せない恋歌の代わりに、ヴォルフが説明をするが、唐突に告げられた内容に驚く。
「村を襲った…?
ああ…!思い出したぞ!
嘘つくなって!!じじい!
あの村を滅ぼしたのはそこの女だろうが!!」
心当たりが多すぎて、どの村のことかと記憶を掘り起こしたマシューは、恋歌を指さしてげらげらと笑う。
「全然話が見えねぇ…」
「ああ…けど、恋歌が村を滅ぼすなんてこと…するはずが…」
「恋歌は理由もなくそんなこと絶対にしない!ヴォルフだって嘘はつかない!
お前こそ嘘つくな!!」
今まで恋歌と過ごしてきて、そんなことをするはずがないとわかっている。
たとえそれが事実だとしても、何か理由があったのだと信じている。
「正確に言えばたしかにそやつの言う通り、村を滅ぼしたのは恋歌じゃ
だがな、先に村を襲い、恋歌以外の魔女を拐い、恋歌の父親を目の前で殺したのは貴様じゃろうが!!」
「男の魔女に価値はねぇからな
見せしめの為に殺してやった!」
「お前…自分が…何言ってんのかわかってんのか…?」
想像もしていなかった壮絶な過去に、全員が怒りで震えている。
ヴォルフの元に来たのは9歳の時。
9歳の時に自分以外の村の全員を拐われ、父親を目の前で殺されたということ。
「そしたらその女が暴走しやがってよ
俺たちを村から追い出せって声を出しやがったから、それを叶えられちまって、俺たちを狙って攻撃してきやがったから逃げるしかなかった
魔女の中でも貴重な、星の魔女だってのに取り逃しちまったんだよ
だから、村を滅ぼしたのはそこの女ってわけだ」
「そんなの!当然じゃないか!!
恋歌は何も悪くない!!」
ベポはぼろぼろと泣きながら、恋歌にこれ以上話を聞かせないようにするために抱え込む。
なにも話さない恋歌は、なにを考えているかわからない。
「さてはお前ら星の魔女の価値をしらねぇんだな?」
「価値?」
やれやれと首を振り、ベポが抱えている恋歌を見下すように笑う。
「無知ってのは恐ろしいな
魔女なんて珍しい種族が無価値なわけねぇだろ!
特に星の魔女は価値が高い
歳のいった魔女は、銀髪を切り刻み、目をくり抜いてやった
銀髪もかつらとして高く売れる上に、目はコレクターに売れるんでな
若い女はそのまま奴隷として売り払ってやったよ!
こいつらは星を魅了すると言われた声の持ち主!
家族は助けて欲しいと懇願する声も、泣いた声も、怒りの声ですら美しいとされる「…もういい」」
ぺらぺらと得意そうに語るマシューに、全員の怒りは爆発寸前だった。
「お前の話はもういい
時間の無駄だ」
「ま、そういうわけでおれたちはその女がほしい
大人しく渡してくれりゃお前らに危害は加えねぇし、分け前だって…「いるかよそんなもん!」」
恋歌をマシューから守るように下がらせ、ベポが抱えたまま威嚇をする。
いつの間にかマシューの横から消えた商人が、甲板に人を集めてきており、周りを囲まれた。
「つまり恋歌は…こいつに復讐しにきたってことでいいんだな」
ローの言葉に頷くと、全員が戦闘態勢に入る。
《みんなは関係ないから帰って!
わたしが…わたしがやらなきゃいけないの…》
ベポの腕から抜け出し、自分の都合でみんなに怪我をして欲しくないと、敵と5人の間に立つ。
「文句は後で聞く
おれたちは…恋歌と、一緒に戦うためにここにきた」
《でも…》
「その男はお前がけじめをつけろ
他はおれたちが片付ける」
甲板にいるのはマシューを抜いて20人程度。
それを相手にしてくれるという言葉に、しばらく考え、頼むという意味を込めて、頭を下げた。
「帰ったら夕飯残してあるからちゃんと食えよ!!」
「明日はとびっきり可愛くしてやるからな!」
「明日はおれの食事当番だから好きなもの作ってやるぞ!」
「ガキどもうるさいわい!
さっさと片付けて帰るぞ
わしは眠い」
「占わなくてもわかるだろ?
俺たちの日常は明日もいつも通りだ」
この5人と出会えたこと、背中を預けられる人がいること、無条件で信じられる人ができたこと全てに感謝して、マシューと向き合う。
『(絶対に…負けない…)』
がぁん、と杖の先を甲板に叩きつけて、恋歌の足元に魔法陣が浮かび上がったのを合図に、他の戦闘が始まった。
『【サジタリウス】』
マ「お、一丁前に魔法が使えるようになってやがる」
価値が上がったと唇を舐めるマシューに、射手座の力を借りた恋歌は、魔法で作った弓矢を構える。
「おっと…」
一度打っただけの矢が無数に広がり、マシューに向かっていくが、巨大な身体からは考えられないほど身軽で、すべてを紙一重で避けていく。
「この程度の魔法しか使えないんじゃまだまだだな!!」
すべての矢を掻い潜り、恋歌に拳を振り上げる。
『【タウロス】』
「お、」
その拳を牡牛座の力を借りて、自分の力を増加させた手で受け止める。
『(いった…!)』
だが、それでも力負けし、腕がぎしぎしと軋む音がする。
「おれに力で勝とうなんざ、100年はぇよ!」
『(!!)』
マシューが拳を振り切ったため、恋歌は吹き飛ばされマストに衝突した。
「「「恋歌!!」」」
だが、直撃前に風の魔法で衝撃を緩和したため無傷で済んだ。
甲板に足をつけた直後、また魔法陣を発動させる。
『【レオ】』
足元の魔法陣とは違う場所から獅子座のライオンが飛び出し、マシューに飛びかかる。
「…恋歌って…こんな戦える子だっけ?」
「ちょうどおれもそれ思ってた」
普段鍛錬では一番弱い恋歌が、今魔法を駆使してこの中で一番強い敵に立ち向かっている。
マシュー以外には強い者はおらず、ほぼ片付いている。
昔より背が高くなった恋歌と比べても、倍以上はある背丈に、筋肉で盛り上がった身体。
『(マシュー…!)』
「あ?この女…どっかで見たことあるような…」
「似たような魔女なんざたくさんいたからな
いちいち覚えてないだろ」
「それもそうか!」
下品に笑う2人に杖を握る力がどんどん強くなる。
ここで声を出せば以前と何も変わっていないと、唇を噛み締めて飛びかかりたいのを抑える。
「血が出る
やめとけ」
『(え…なんで…)』
杖を握る手に、温かい手が乗せられ、耳に馴染んだ声と魔力に振り向くと、いつもの5人がいた。
「いやー、恋歌意外とすばしっこいのな」
「ほんとほんと
ついていくのも精一杯だった」
「ふん、わしが何年護身術を教えて鍛えとると思っとるんじゃ」
「えー、でも恋歌力はないよ?」
「「クマと比べるな!」」
「…すいません」
いつもの調子で話を続ける4人と、まだ手を握ってくれているローに視線を向ける。
「言ったよな?
何かあれば言えって
1人で抱え込むな」
優しい言葉に思わず涙が出そうになるが、敵を前にして泣いている場合ではないと、ぐっと涙を堪える。
「なんだこいつら…
いつの間に…」
「こいつらも魔女を狙ってるって事か?」
「…恋歌、こいつらがお前さんの探していたやつで間違い無いな?」
ヴォルフの言葉に頷くと、事情を知らない4人は、どういうことかと首を傾げる。
「恋歌が探していた…?」
「こやつらは奴隷を扱う商人
そして、恋歌がうちに来る前、恋歌のいた魔女の村を襲ったやつらじゃ」
「「「「!?」」」」
話せない恋歌の代わりに、ヴォルフが説明をするが、唐突に告げられた内容に驚く。
「村を襲った…?
ああ…!思い出したぞ!
嘘つくなって!!じじい!
あの村を滅ぼしたのはそこの女だろうが!!」
心当たりが多すぎて、どの村のことかと記憶を掘り起こしたマシューは、恋歌を指さしてげらげらと笑う。
「全然話が見えねぇ…」
「ああ…けど、恋歌が村を滅ぼすなんてこと…するはずが…」
「恋歌は理由もなくそんなこと絶対にしない!ヴォルフだって嘘はつかない!
お前こそ嘘つくな!!」
今まで恋歌と過ごしてきて、そんなことをするはずがないとわかっている。
たとえそれが事実だとしても、何か理由があったのだと信じている。
「正確に言えばたしかにそやつの言う通り、村を滅ぼしたのは恋歌じゃ
だがな、先に村を襲い、恋歌以外の魔女を拐い、恋歌の父親を目の前で殺したのは貴様じゃろうが!!」
「男の魔女に価値はねぇからな
見せしめの為に殺してやった!」
「お前…自分が…何言ってんのかわかってんのか…?」
想像もしていなかった壮絶な過去に、全員が怒りで震えている。
ヴォルフの元に来たのは9歳の時。
9歳の時に自分以外の村の全員を拐われ、父親を目の前で殺されたということ。
「そしたらその女が暴走しやがってよ
俺たちを村から追い出せって声を出しやがったから、それを叶えられちまって、俺たちを狙って攻撃してきやがったから逃げるしかなかった
魔女の中でも貴重な、星の魔女だってのに取り逃しちまったんだよ
だから、村を滅ぼしたのはそこの女ってわけだ」
「そんなの!当然じゃないか!!
恋歌は何も悪くない!!」
ベポはぼろぼろと泣きながら、恋歌にこれ以上話を聞かせないようにするために抱え込む。
なにも話さない恋歌は、なにを考えているかわからない。
「さてはお前ら星の魔女の価値をしらねぇんだな?」
「価値?」
やれやれと首を振り、ベポが抱えている恋歌を見下すように笑う。
「無知ってのは恐ろしいな
魔女なんて珍しい種族が無価値なわけねぇだろ!
特に星の魔女は価値が高い
歳のいった魔女は、銀髪を切り刻み、目をくり抜いてやった
銀髪もかつらとして高く売れる上に、目はコレクターに売れるんでな
若い女はそのまま奴隷として売り払ってやったよ!
こいつらは星を魅了すると言われた声の持ち主!
家族は助けて欲しいと懇願する声も、泣いた声も、怒りの声ですら美しいとされる「…もういい」」
ぺらぺらと得意そうに語るマシューに、全員の怒りは爆発寸前だった。
「お前の話はもういい
時間の無駄だ」
「ま、そういうわけでおれたちはその女がほしい
大人しく渡してくれりゃお前らに危害は加えねぇし、分け前だって…「いるかよそんなもん!」」
恋歌をマシューから守るように下がらせ、ベポが抱えたまま威嚇をする。
いつの間にかマシューの横から消えた商人が、甲板に人を集めてきており、周りを囲まれた。
「つまり恋歌は…こいつに復讐しにきたってことでいいんだな」
ローの言葉に頷くと、全員が戦闘態勢に入る。
《みんなは関係ないから帰って!
わたしが…わたしがやらなきゃいけないの…》
ベポの腕から抜け出し、自分の都合でみんなに怪我をして欲しくないと、敵と5人の間に立つ。
「文句は後で聞く
おれたちは…恋歌と、一緒に戦うためにここにきた」
《でも…》
「その男はお前がけじめをつけろ
他はおれたちが片付ける」
甲板にいるのはマシューを抜いて20人程度。
それを相手にしてくれるという言葉に、しばらく考え、頼むという意味を込めて、頭を下げた。
「帰ったら夕飯残してあるからちゃんと食えよ!!」
「明日はとびっきり可愛くしてやるからな!」
「明日はおれの食事当番だから好きなもの作ってやるぞ!」
「ガキどもうるさいわい!
さっさと片付けて帰るぞ
わしは眠い」
「占わなくてもわかるだろ?
俺たちの日常は明日もいつも通りだ」
この5人と出会えたこと、背中を預けられる人がいること、無条件で信じられる人ができたこと全てに感謝して、マシューと向き合う。
『(絶対に…負けない…)』
がぁん、と杖の先を甲板に叩きつけて、恋歌の足元に魔法陣が浮かび上がったのを合図に、他の戦闘が始まった。
『【サジタリウス】』
マ「お、一丁前に魔法が使えるようになってやがる」
価値が上がったと唇を舐めるマシューに、射手座の力を借りた恋歌は、魔法で作った弓矢を構える。
「おっと…」
一度打っただけの矢が無数に広がり、マシューに向かっていくが、巨大な身体からは考えられないほど身軽で、すべてを紙一重で避けていく。
「この程度の魔法しか使えないんじゃまだまだだな!!」
すべての矢を掻い潜り、恋歌に拳を振り上げる。
『【タウロス】』
「お、」
その拳を牡牛座の力を借りて、自分の力を増加させた手で受け止める。
『(いった…!)』
だが、それでも力負けし、腕がぎしぎしと軋む音がする。
「おれに力で勝とうなんざ、100年はぇよ!」
『(!!)』
マシューが拳を振り切ったため、恋歌は吹き飛ばされマストに衝突した。
「「「恋歌!!」」」
だが、直撃前に風の魔法で衝撃を緩和したため無傷で済んだ。
甲板に足をつけた直後、また魔法陣を発動させる。
『【レオ】』
足元の魔法陣とは違う場所から獅子座のライオンが飛び出し、マシューに飛びかかる。
「…恋歌って…こんな戦える子だっけ?」
「ちょうどおれもそれ思ってた」
普段鍛錬では一番弱い恋歌が、今魔法を駆使してこの中で一番強い敵に立ち向かっている。
マシュー以外には強い者はおらず、ほぼ片付いている。