出会いから出航まで
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本を全て読み終わり、ぱたんと閉じて外を見ると、いつも通りどんよりとした雲があり、星は見えない。
『(よし)』
気合いを入れるために頬を叩いた恋歌は、本を魔法で空間に収納し、そっと窓を開く。
いつもならもう全員が寝静まっている時間なので、家の中は静まり返っている。
『(あまり今魔力を使いたくないけど…仕方ない)』
二階にあてがわれている自分の部屋の窓から飛び降り、風の魔法で衝撃を和らげて着地する。
『(えっと、商船は確かこっちに停泊してるんだよね…)』
出来る限り足音を殺して走り、商船が停まっている場所へと急ぐ。
数十分ほど走ったところにある港に、大きな商船が停泊している。
見たことのない船なので、これで間違いないだろうと、バレないように身を潜める。
『(あの中に…まだ…残っていれば…)』
心臓のあたりが熱くなってきたので、気休めとはわかっているが、落ち着かせるために胸元の服を強く握りしめる。
1人ということが、こんなにも心細いことだったのかと、今までみんなにどれだけ支えられてきたのかを実感する。
何かあっても助けてもらえない。
相談もできない。
その不安が足取りを重くさせるが、甘えるなと自分に叱責をする。
『(大丈夫…わたしだって…今まで何もしなかったわけじゃないんだ)』
もっと船に近寄るために、見つかりにくい場所を走り抜け、船までもう少しというところまで来た。
『(見張りがいるか…
【アリエス】)』
掌の上だけに魔法陣を展開させ、頭の中で牡羊座の星座に呼びかけると、魔法陣から白い靄が出てくる。
それを風の魔法で風向きを調整し、商船に向かって全体に広がるように送り込む。
ばたばたと見張りが倒れていく音を聞いて顔を覗かせると、見える範囲には起きている者は誰もいなくなった。
『(魔法って隠密行動に向かないよね)』
魔法陣を発動するのも光が漏れる上に、魔力を温存しようとして杖を使うにも、身の丈ほどもあるので使いにくい。
船の近くまで行き、タラップから上がるのは危険だと思い、今度は足元に魔法陣を発動させる。
『(【レプス】)』
うさぎ座の星座に呼びかけ、脚力を強化し、一気に甲板まで飛び上がった。
とん、と軽く甲板に着地すると、見張りは見渡す限り全員が眠っている。
『(船が広すぎる…
虱潰しに探せるか…)』
一人で探すには広すぎる船に心が折れそうになったが、何日かかろうと探さなければいけない。
まずは甲板に出ている大量の木箱から確認をしようと、小さいものから大きいものまで中を確認していく。
中には武器や宝石、本、食べ物など、今日町で見かけたものが入っている。
『(あ、った…)』
そして、ある木箱を開けた時、目当てのものを見つけて身体が固まった。
また溢れてきた涙を拭って、箱の中を隅々まで見渡した。
『(こんな小さな木箱に…入ってたんだね…)』
「やはりお嬢さんも魔女の一族だったんだね」
箱の中を見渡していると、後ろから声をかけられる。
その声は今日聞いたばかりのもので、焦ることなくゆっくりと振り返った。
『(やっぱりこの人…わたしが魔女だってわかってた…)』
振り返った先にいたのは、本をくれた商人。
また貼り付けたような笑みを向けてくるが、それはもう不快にしか感じない。
「あの本はね、魔女を釣るための餌なのさ
魔女にしか伝えられていないとされている文字で書かれた本を読むことができるということは魔女の証
まさかこんな小さな町に隠れているとは思わなかったがね」
にやにやと品定めでもするような視線を向けてくるので、背筋がぞわっとし、後退するように足を下げていく。
「その銀髪と黒い瞳、それに…喋らないところを見ると、お嬢さんは星の魔女かな?」
『(この人…魔女について詳しすぎる…)』
元々人数の少ない魔女のことを、特徴を見ただけでどの魔女か当てることができる人物など限られている。
「まぁそれは紋章を見ればわかることだけどね
大人しくしていれば悪いようにはしない」
簡単に見せることのない紋章のことまで知っているとなれば、それを見てきたということ。
悔しさか、悲しさか、同情か、哀れみか、怒りかもうわからないが、ぎりっと歯を食いしばり、杖を召喚して握り締める。
大人しくしないとわかった商人は、呆れたようなため息をついた。
「魔女ってのはどいつもこいつも聞き分けがねぇから嫌なんだよ
マシュー!!出番だ!!」
『(マシュー…って…まさか)』
商人の声に反応するようにばきばきと甲板を突き破って下から現れた大柄な男。
別人であって欲しいと思うが、見た目も、名前も、禍々しいまでの魔力も、全てが記憶と一致する。
『(よし)』
気合いを入れるために頬を叩いた恋歌は、本を魔法で空間に収納し、そっと窓を開く。
いつもならもう全員が寝静まっている時間なので、家の中は静まり返っている。
『(あまり今魔力を使いたくないけど…仕方ない)』
二階にあてがわれている自分の部屋の窓から飛び降り、風の魔法で衝撃を和らげて着地する。
『(えっと、商船は確かこっちに停泊してるんだよね…)』
出来る限り足音を殺して走り、商船が停まっている場所へと急ぐ。
数十分ほど走ったところにある港に、大きな商船が停泊している。
見たことのない船なので、これで間違いないだろうと、バレないように身を潜める。
『(あの中に…まだ…残っていれば…)』
心臓のあたりが熱くなってきたので、気休めとはわかっているが、落ち着かせるために胸元の服を強く握りしめる。
1人ということが、こんなにも心細いことだったのかと、今までみんなにどれだけ支えられてきたのかを実感する。
何かあっても助けてもらえない。
相談もできない。
その不安が足取りを重くさせるが、甘えるなと自分に叱責をする。
『(大丈夫…わたしだって…今まで何もしなかったわけじゃないんだ)』
もっと船に近寄るために、見つかりにくい場所を走り抜け、船までもう少しというところまで来た。
『(見張りがいるか…
【アリエス】)』
掌の上だけに魔法陣を展開させ、頭の中で牡羊座の星座に呼びかけると、魔法陣から白い靄が出てくる。
それを風の魔法で風向きを調整し、商船に向かって全体に広がるように送り込む。
ばたばたと見張りが倒れていく音を聞いて顔を覗かせると、見える範囲には起きている者は誰もいなくなった。
『(魔法って隠密行動に向かないよね)』
魔法陣を発動するのも光が漏れる上に、魔力を温存しようとして杖を使うにも、身の丈ほどもあるので使いにくい。
船の近くまで行き、タラップから上がるのは危険だと思い、今度は足元に魔法陣を発動させる。
『(【レプス】)』
うさぎ座の星座に呼びかけ、脚力を強化し、一気に甲板まで飛び上がった。
とん、と軽く甲板に着地すると、見張りは見渡す限り全員が眠っている。
『(船が広すぎる…
虱潰しに探せるか…)』
一人で探すには広すぎる船に心が折れそうになったが、何日かかろうと探さなければいけない。
まずは甲板に出ている大量の木箱から確認をしようと、小さいものから大きいものまで中を確認していく。
中には武器や宝石、本、食べ物など、今日町で見かけたものが入っている。
『(あ、った…)』
そして、ある木箱を開けた時、目当てのものを見つけて身体が固まった。
また溢れてきた涙を拭って、箱の中を隅々まで見渡した。
『(こんな小さな木箱に…入ってたんだね…)』
「やはりお嬢さんも魔女の一族だったんだね」
箱の中を見渡していると、後ろから声をかけられる。
その声は今日聞いたばかりのもので、焦ることなくゆっくりと振り返った。
『(やっぱりこの人…わたしが魔女だってわかってた…)』
振り返った先にいたのは、本をくれた商人。
また貼り付けたような笑みを向けてくるが、それはもう不快にしか感じない。
「あの本はね、魔女を釣るための餌なのさ
魔女にしか伝えられていないとされている文字で書かれた本を読むことができるということは魔女の証
まさかこんな小さな町に隠れているとは思わなかったがね」
にやにやと品定めでもするような視線を向けてくるので、背筋がぞわっとし、後退するように足を下げていく。
「その銀髪と黒い瞳、それに…喋らないところを見ると、お嬢さんは星の魔女かな?」
『(この人…魔女について詳しすぎる…)』
元々人数の少ない魔女のことを、特徴を見ただけでどの魔女か当てることができる人物など限られている。
「まぁそれは紋章を見ればわかることだけどね
大人しくしていれば悪いようにはしない」
簡単に見せることのない紋章のことまで知っているとなれば、それを見てきたということ。
悔しさか、悲しさか、同情か、哀れみか、怒りかもうわからないが、ぎりっと歯を食いしばり、杖を召喚して握り締める。
大人しくしないとわかった商人は、呆れたようなため息をついた。
「魔女ってのはどいつもこいつも聞き分けがねぇから嫌なんだよ
マシュー!!出番だ!!」
『(マシュー…って…まさか)』
商人の声に反応するようにばきばきと甲板を突き破って下から現れた大柄な男。
別人であって欲しいと思うが、見た目も、名前も、禍々しいまでの魔力も、全てが記憶と一致する。