出会いから出航まで

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「なるほどな…ガキはガキなりにいろいろ背負って生きているということか」

「ガキって言うんじゃねぇ

トラファルガー・ロー、それが俺の名前だ」

少年、もといローはガキと呼ばれることが嫌なようで、やっと名前を口にした。

「ローか、なかなかイカす名前を授かったな

で、つまるところ、今のお前は天涯孤独の身で、行先も目的もないと、そういう理解でいいのか?」

そのヴォルフの問いに考えるように俯いたが、返事は返ってこない。

「この先、どうしたいと思ってるんじゃ」

「わからねぇよ」

「だったら…

お前の目的、やりたいことが見つかるまではここに置いてやるわ」

「い、いいのか?」

「この子も居候じゃ

今更1人増えたところでなにも変わらん」

ぐりぐりとヴォルフに頭を撫でられている恋歌は、その力が強すぎるのか少し嫌そうな顔をしている。

「ただし、」

その後ヴォルフは最初に恋歌について言ったように、ギブ&テイクの話をした。

それがヴォルフの不器用な優しさだとわかったローはこの家に来て初めて笑顔を見せてくれた。

ローがヴォルフの手伝いとは何をすればいいのかということを確認し、ヴォルフと恋歌の自己紹介がまだだったことに気づいた。

「この子の名前は恋歌

2年ほど前からの居候じゃ

魔女ということも基本的には他言してやるな」

「たしかに…魔法が使える奴なんか聞いたことねぇもんな…

お前もいろいろあるってことか」

恋歌のことについては簡単に他言しないと約束し、続いてヴォルフのことを聞いた。

自称天才発明家であるヴォルフは疑いの目を向けるローの前に発明品を箱に入れて持ってきた。

「ん?」

ヴォルフが発明品を広げた瞬間恋歌が椅子から立ち上がって距離をとった。

恋歌のやつ、どうしたんだ?」

「あー…一度わしの発明品の暴走に巻き込まれてな…

危うく恋歌の髪が全部無くなるところだったんじゃ…」

「……」

それは逃げても仕方ないとは思ったが、そんな危険な発明の手伝いはしたくない。

発明品をガラクタやゴミと言われたヴォルフは次々とローに新しい発明品を見せて説明するが、ローの認識は変わらなかった。

「まぁこれでわしの偉大さをお前も理解したと思うが…」

「してねぇよ

1ミリたりともしてねぇよ」

「取り敢えず明日以降、お前には研究の手伝いをしてもらうからな

恋歌はこの通りわしの研究の手伝いはしてくれないんじゃ…」

「そりゃそうだろ…」

女にとって命より大事とも表現される髪を全て無くしてしまうところだったのだから。

「おい、ガラクタ屋」

「じいさんよりひどい呼び方になったな!」

「…とりあえず、あらためて助けてくれたことには礼を言う

恋歌も俺を見つけてくれてありがとう

ここに置いてもらえるのは正直ありがてぇ

これからよろしく頼む」

そう言ってローはヴォルフに右手を差し出した。

ヴォルフは分と鼻を鳴らして笑い、その手を握り返した。

「たっぷりこき使ってやるわい!そうでないとギブ&テイクにならんからな!!」

「わかってる

恋歌もよろしくな」

ヴォルフの後に恋歌にローが手を差し出すと、笑顔でその手を握り返した。
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