風邪
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女と別れた後、無言で整備された山道を登っていると、ふと前を歩いていた男が振り返った。
「あんた、名前は?」
話しかけられると思っていなかった恋歌は、慌ててノートを取り出して自分の名前を書いて見せた。
「恋歌な
おれはエージ
この薬草が必要って事は誰かが”青年病”に罹ったのか?」
エージと名乗った男の言葉に頷くと、自分から聞いてきたはずなのにふぅん、と興味なさそうに前を向いた。
「今歩いてるところは整備されてるけど、薬草がある場所は自然を崩さないように人の手は入れてない
あー…しんどくなったら言えって言おうと思ったけど、あんた喋れないんだったな…」
たしかに最初の頃よりは舗装がされていない場所を歩いており、足元が不安定になってきた。
船内でしているように足元を浮かせれば問題ないが、エージの前で魔法を使う事は出来ない。
「仕方ない
ほら、掴んでろ」
『……』
目の前に手を差し出され、大好きな人の手ではない事に一瞬固まったが、善意でしてくれている事だとわかり、遠慮がちにエージの手に自分の手を重ねた。
「しんどくなったら強く握るなり手を引くなりしろ」
口調はきついが女の言うとおり悪い人ではないのだろうと、頷いて返せばエージは恋歌の手を引いて歩き始めた。
「無愛想なガキだな」
今まで黙っていたシリウスがくあ、とあくびをしながらエージの背中に向かって呟いたが、それに恋歌は苦笑いでしか返す事が出来ない。
先導しながら舗装されていない傾斜を歩き5分程経った頃、少し拓けた場所に出た。
「恋歌が探してるのはこれだろ?」
エージが自分の足元を指さすとそこには恋歌が探し求めていた薬草が生えていた。
「必要な分だけ取って
じいさんに渡せば調薬してくれる」
その言葉に頷いた恋歌は、するりと手を離されそっと地面に膝をついた。
『(えっと…たしか1人分はこのぐらい…)』
必要な量だけとろうと丁寧に薬草を摘み、鞄の中に詰め込んでいく。
「…恋歌さぁ、その眼鏡でちゃんと見えてんの?」
薬草を摘んでいる姿をじっと見ていたエージが、疑問に思った事を聞けば顔を上げて頷きが返ってきた。
「ふーん…でも邪魔じゃ…」
すっ、と無意識に伸ばされた手は恋歌の眼鏡に向かったが、それが触れる前に恋歌がばっ、と勢いよく顔を引いた。
「そんな警戒すんなよな
別に取って眼鏡を壊そうってわけじゃねぇんだし」
分厚すぎる眼鏡が邪魔ではないかと純粋に思っただけだったのだが、そこまで警戒されると逆に取りたくなってしまうのが人間の心情。
「…隙あり!!」
『!!』
また薬草を摘もうと下を向いた瞬間、エージが素早く手を伸ばして恋歌の眼鏡を奪い取った。
奪い取った勢いで眼鏡の弦が帽子に当たり、恋歌の隠していた髪がぶわっと風に靡いて広がった。
少し青みがかった美しい大きな瞳に、夕暮れの橙色が溶けたような美しい銀髪に、一瞬にして目を奪われた。
「わん!!」
「わっ…!」
恋歌の素顔を見た瞬間、固まっていたエージだったが、わたわたしている恋歌に眼鏡を返せと、シリウスがエージに飛びかかる。
子犬とはいえ顔に飛びつかれた衝撃で思わずしりもちをつき、眼鏡も手から離してしまった。
「い、てて…」
しりもちをついたエージは腰をさすりながら恋歌を見ると、シリウスが咥えた眼鏡を恋歌に返しているところだった。
「あんた、名前は?」
話しかけられると思っていなかった恋歌は、慌ててノートを取り出して自分の名前を書いて見せた。
「恋歌な
おれはエージ
この薬草が必要って事は誰かが”青年病”に罹ったのか?」
エージと名乗った男の言葉に頷くと、自分から聞いてきたはずなのにふぅん、と興味なさそうに前を向いた。
「今歩いてるところは整備されてるけど、薬草がある場所は自然を崩さないように人の手は入れてない
あー…しんどくなったら言えって言おうと思ったけど、あんた喋れないんだったな…」
たしかに最初の頃よりは舗装がされていない場所を歩いており、足元が不安定になってきた。
船内でしているように足元を浮かせれば問題ないが、エージの前で魔法を使う事は出来ない。
「仕方ない
ほら、掴んでろ」
『……』
目の前に手を差し出され、大好きな人の手ではない事に一瞬固まったが、善意でしてくれている事だとわかり、遠慮がちにエージの手に自分の手を重ねた。
「しんどくなったら強く握るなり手を引くなりしろ」
口調はきついが女の言うとおり悪い人ではないのだろうと、頷いて返せばエージは恋歌の手を引いて歩き始めた。
「無愛想なガキだな」
今まで黙っていたシリウスがくあ、とあくびをしながらエージの背中に向かって呟いたが、それに恋歌は苦笑いでしか返す事が出来ない。
先導しながら舗装されていない傾斜を歩き5分程経った頃、少し拓けた場所に出た。
「恋歌が探してるのはこれだろ?」
エージが自分の足元を指さすとそこには恋歌が探し求めていた薬草が生えていた。
「必要な分だけ取って
じいさんに渡せば調薬してくれる」
その言葉に頷いた恋歌は、するりと手を離されそっと地面に膝をついた。
『(えっと…たしか1人分はこのぐらい…)』
必要な量だけとろうと丁寧に薬草を摘み、鞄の中に詰め込んでいく。
「…恋歌さぁ、その眼鏡でちゃんと見えてんの?」
薬草を摘んでいる姿をじっと見ていたエージが、疑問に思った事を聞けば顔を上げて頷きが返ってきた。
「ふーん…でも邪魔じゃ…」
すっ、と無意識に伸ばされた手は恋歌の眼鏡に向かったが、それが触れる前に恋歌がばっ、と勢いよく顔を引いた。
「そんな警戒すんなよな
別に取って眼鏡を壊そうってわけじゃねぇんだし」
分厚すぎる眼鏡が邪魔ではないかと純粋に思っただけだったのだが、そこまで警戒されると逆に取りたくなってしまうのが人間の心情。
「…隙あり!!」
『!!』
また薬草を摘もうと下を向いた瞬間、エージが素早く手を伸ばして恋歌の眼鏡を奪い取った。
奪い取った勢いで眼鏡の弦が帽子に当たり、恋歌の隠していた髪がぶわっと風に靡いて広がった。
少し青みがかった美しい大きな瞳に、夕暮れの橙色が溶けたような美しい銀髪に、一瞬にして目を奪われた。
「わん!!」
「わっ…!」
恋歌の素顔を見た瞬間、固まっていたエージだったが、わたわたしている恋歌に眼鏡を返せと、シリウスがエージに飛びかかる。
子犬とはいえ顔に飛びつかれた衝撃で思わずしりもちをつき、眼鏡も手から離してしまった。
「い、てて…」
しりもちをついたエージは腰をさすりながら恋歌を見ると、シリウスが咥えた眼鏡を恋歌に返しているところだった。