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小さな友情

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手術室に入れば室内には誰もおらず、薄暗い室内にぽつんと大きな犬が寝かされている。

「呼吸は安定してる

身体の中に2つあった内臓は1つが機能しなくなってたから取り除いておいた」

魂が身体に1つになったからなのか、元々正常に機能していた2つの臓器は1つが機能していなかった。

それが身体に害を与えているというわけではなかったが、不要なものはない方がいいだろうと、恋歌が眠っている間にローが手術をしてくれていた。

『ありがとう』

「…お前が救った命だ

恋歌が助けなきゃおれの処置は意味のないものだった」

『ううん、わたしに手術は、できない

だから、ローに、ありがとうって、言いたいの』

「…そうか」

笑って礼を言ってくる恋歌になぜか少し気恥ずかしくなったローは、ぽん、と恋歌の背中を押した。

『また、眠っちゃったの?』

「ああ、もう身体に異常はねぇが、体力が落ちてる

飯も少しだが食ったらしいから、そのうちまた目を覚ます」

『そう…』

ふんわりとした毛並を何度か撫でるが目を覚ます気配はない。

『…星にね、最初は、魂を1つだけ、残す事は出来ないって、言われたの』

「…ああ」

犬の頭を撫でながら話しはじめた恋歌の言葉を遮る事はせず、一瞬扉の外から聞こえた音に視線を向けたが、それに何も言う事はしない。

『魂を身体から離す時は、天に昇る時

1つの身体に、魂が2つある事が、異常

だから、この世界から、その異常を取り除くために、この島の動物たちの、魂を全て、持っていくって』

緑の魔女であるランが植物たちから好かれる容姿であるのも、星の魔女である恋歌が星から好かれる容姿であることもすべて理由がある。

植物には植物の、星には星の”美しい”基準があり、1つの身体に2つの魂が宿っている事は”美しく”ない。

それが人間の実験で動物たちにとっては不本意だったとしても、星たちはそんなことまで考慮はせず、この世の理を守るために己が正しいと思うことをしてくる。

今回もそれは例外ではなく、祈り始めた当初は恋歌の祈りは星からの賛同を得る事はできなかった。

『わたしの周りに、魔方陣、いっぱい出てたと、思うんだけど…

あれね、拒否を、されてたの』

恋歌の周りに出ていた魔方陣は、星たちが魂を強制的に連れて行こうといた為に発生したものらしく、それが砕けていたのは恋歌がそれに対して拒否をし、新しい物を星が作り出していたということらしい。

『最後、諦めてくれたのは…それも、気まぐれだった』

「気まぐれ…?」

『うん…

あの魔法陣を、破壊するのも、魔力が必要だった

シリウスも、手助けしてくれて、最後は、粘り勝ちって、感じだったかな』

その時の事を思い出しているのか、自嘲気味な笑みを浮かべる。

「それでこいつが助かったならいいだろ」

『…その時にね、星に、言われたことがあるの』

「…なんて、言われたんだ」

『今この世界に、星の魔女は少なく、この祈りができる魔女も、ほとんどいない…

だからこれからの、成長に期待を込めて、慈悲を与えた、だけなんだって』

恋歌とシリウスから星は気まぐれだという話は聞いていたが、今回も結果的には気まぐれであり、数の少なくなった星の魔女に貸しを作っただけ。

『別に、見返りに、何かをしろって、言われたわけじゃ、ないけど…

わたしじゃ、できることまだまだ、少ないんだなって…改めて思った』

「……」

『でも…だからこそ…』

ぐっと拳を握りしめた恋歌は、ローとしっかり視線を合わせて、少し頬を膨らませて怒っているような表情を浮かべた。
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