出会いから出航まで
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《なにしてるの?》
恋歌が本を持って帰ってくると、ローがいつも店主が使っているはたきを持って、本棚の上を掃除していた。
「…バイト」
《バイト?》
「いやー、背の高いローくんがバイトしてくれて助かるよ!
僕では届かないし、恋歌ちゃんに脚立乗ってもらうのもあれだしね」
にこにことしている店主は、いつもより機嫌が良さそうに見える。
《ローがいいならいいけど…》
貴重な休みなのに、わざわざ別のところでバイトでいいのだろうかと思うが、本人が承諾したのであればいいだろうと、ローに持ってきた本はカウンターに置いて、恋歌も仕事に取り掛かる。
「恋歌ー…!げっ!」
「恋歌ちゃん!…え!?ロー!?」
「(うんうん、いい感じ)」
「(なるほどな…)」
店主から恋歌の仕事を手伝って欲しいと言われたので、恋歌の横について手伝っていると、恋歌目当てに本屋に来た男たちが現れてはローの姿を見てすぐに帰って行く。
その様子に店主は満足そうに、カウンターで恋歌の淹れた紅茶を飲んで、本を読んでいる。
ローは逃げ帰って行く男たちを見て、自分をバイトに入れた理由がわかった。
《今日はローがいてくれるから仕事が早い気がする》
「…そりゃなにより」
いつも仕事を妨害されている恋歌だが、今日に限っては誰も話しかけに来ないので、仕事がさくさくと進んでいく。
ローがいることで誰も話しかけに来ないので、ローのおかげと言えばその通りではある。
「上の方はおれがやる
恋歌は下の方だけ頼む」
《わかった》
仕入れた本の品出しも、いつもは一段だけの台に乗って出しているが、ローがいればそれが必要ない。
『(背が高いってのは便利だね)』
掃除も品出しも自分より背の高い人がいてくれるだけで仕事がはかどり、いつもより楽しい気もする。
「……なんだ」
《なんでもないよ》
一緒に働けていることが嬉しい恋歌は、下からじーっとローを見て笑っている。
手を動かせと言われ顔を無理やり下に向けられたが、それでも恋歌は楽しそうに笑っている。
「(うんうんうんうん、これぞ青春)」
その微笑ましい様子に店主は、紅茶のおかわりを頼むのをしばらく我慢した。
「お昼よ!」
ばーん、と扉を開けて入ってきたアミは、一直線に恋歌の元へ歩いてくる。
「あら、なにしてるの?」
「バイトだ
お前…もう少し静かに入ってこいよ…」
あまりにもうるさいアミの登場に、ローが眉間にシワを寄せるが、そんなのはお構いなしに恋歌の手を掴む。
「あんたも一緒に来る?」
店主の了解もなしに恋歌を連れて行こうとするが、店主がなにも言わないということは、これが日常なのだろうと、ローは行くと答えた。
「いってらっしゃーい」
ひらひらと手を振りながら見送ってくれる店主に恋歌が頭を下げて3人で町へ。
お昼ご飯をどこで食べるかを悩んだ末、ペンギンがいるレストランに行こうということになった。
「あれ、珍しい組み合わせじゃんか」
お昼時でばたばたと忙しくしているペンギンが3人の来店に気づき、席に案内をしてくれる。
「さぁ!なんにする?」
滅多に来ないローも来てくれたということで、テンションの高いペンギンは伝票を構えて注文をとる。
注文をペンギンに伝え、仕事に戻って行った。
しばらくして料理が運ばれてきたので、少し談笑を交えながら食事を進めていると、扉が大きな音を立てて開けられた。
何事かと店中の人が視線を向けると、そこにはしばらく姿を見せなかったゴスロリ少女がいた。
『(嫌な予感…)』
「この町の女は扉を静かに開けられねぇのか」
「それは誰の事を言っているのかしら?」
食事をもぐもぐと食べながら、誰かを探している様子のクロエを見て、逃げようかどうしようかと考えたが、席を立つ前にクロエと視線が合ってしまった。
「ちょ、ちょっとあんた!
みんな順番に並んでるんだ
ちゃんと並んでくれよ」
並んでいる人たちを押しのけて、店内にはいってこようとするクロエをペンギンが止める。
「は?あんた誰」
「誰って…ここの店員だけど…」
ク「わたしはロー先生と…そこのインチキ占い師に用があるのよ」
「ローさんと…インチキ占い師って、誰だ?」
そんな話など聞いた事がないと、ペンギンが首を傾げるが、クロエはペンギンを押しのけて、 恋歌たちが座っている席に向かってこようとする。
「ちょっと!ちゃんと並べって!!」
「うるっさいわね!
ロー先生には話があるんだから通しなさいよ!」
店の入り口で争っている二人を、店内の客は他人事のように見ている。
「あんたに用事だって」
「俺には用事はねぇ」
ペンギンが大変な思いをしているにもかかわらず、アミとローは普通に食事を続けている。
≪ペンギンの事助けてあげないの?≫
「……」
ローの腕をつついて目を見つめると、大きなため息をついて視線を店の入り口へ向けた。
「何の用だ」
「あ、ロー先生ぇ!
診療所に行ったら今日はおやすみだって聞いたんでぇ!」
「要件を言え」
「(恋歌以外の女には手厳しい事…)」
無駄話など一切するつもりのないローは、さっさと話を済まそうとしている。
「えっとぉ…明日の美女コンテストのペア、あたしのパートナーにはローさんを指名したんで、それを伝えに来ました!」
「「「は?」」」
言っちゃった、と言いながら楽しそうにしているクロエとは対照的に、ローだけではなく店内の人間すべての行動が止まった。
「おれを…指名しただと…」
「はい!だから明日はあたしとずっと一緒にいてくださいね!」
このコンテストは男が女を誘いエントリーするのが暗黙の了解ではあるが、逆の事も可能ではある。
エントリーしたい女が男のパートナーを選ぶことができる。
元々このコンテストは小さな町で、カップルを誕生しやすくする為にパートナー制を設けたのが始まり。
ここ数年はアミの独壇場ではあったが、クロエはコンテストの趣旨を逆手に取り、自分でローをパートナーに指名した。
「そ、れは…」
ちらっと恋歌の方を見るが、何を考えているかわからない表情をしている。
「俺に拒否権はねぇのか」
「ええー!!なんで拒否するんですかぁ!?」
「できるのか、できねぇのか」
「出来ない事はないですけどぉ…
あたしの方からコンテストの棄権をしないとだめなんです」
「うそだろ…」
こんな形で巻き込まれるとは思っていなかったローは、唖然とした顔でペンギンに助けを求めるように視線を向けたが、ペンギンにも良い策はないようで首を横に振られた。
「あんたもその制度知ってたんだ
どうせ祭りの前日まで黙ってたのも考えがあってのことでしょうしね」
「ふふふ、年増にしては察しがいいわね
そうよ
前日なら今からどうしようもないでしょ?」
「だから…誰が年増だっての…」
コンテストにエントリーするパートナー同士は基本的に一緒にいなければいけないという決まりがある。
だが、男側が逃げるという事はこのコンテストではタブーとされている。
「ロー先生は逃げませんよね?」
「……ちっ」
ローは全く納得はしていないが、この町に住んでいる以上、町の決まりには従うつもりでいる。
「そこのインチキ占い師はコンテストにもエントリーしてないんでしょ?
ロー先生は明日あたしがもらうわ」
ぐいっと服を掴まれて顔を近づけながら得意げに笑うクロエに、恋歌はクロエの胸を押して離れた。
≪私の占いは星に聞いた結果
自分の望んだ結果ではなかったからといってインチキというのはやめて≫
ノートに字を書いてクロエに見せると、はっと鼻で笑われた。
「なにそれ!このタイミングであんたの言いたいことがそれ!?
元からあんたの占いなんて信じてなかったけど、そんなことどうでもいいわ
後ね、この間も言ったけどあたしに言いたいことがあるなら、ちゃんと!声に出して!文句言いなさい
それ以外は受け付けてないわ」
それだけを言うと満足したのか、ローににこやかにまた明日と手を振りながら嵐のように去って行った。
「ローさん…明日一日の辛抱だ…」
「…明日おれは風邪をひく予定ということにならねぇか」
「その場合あの子がヴォルフの家まで来ちまうからやめてくれ」
恋歌が本を持って帰ってくると、ローがいつも店主が使っているはたきを持って、本棚の上を掃除していた。
「…バイト」
《バイト?》
「いやー、背の高いローくんがバイトしてくれて助かるよ!
僕では届かないし、恋歌ちゃんに脚立乗ってもらうのもあれだしね」
にこにことしている店主は、いつもより機嫌が良さそうに見える。
《ローがいいならいいけど…》
貴重な休みなのに、わざわざ別のところでバイトでいいのだろうかと思うが、本人が承諾したのであればいいだろうと、ローに持ってきた本はカウンターに置いて、恋歌も仕事に取り掛かる。
「恋歌ー…!げっ!」
「恋歌ちゃん!…え!?ロー!?」
「(うんうん、いい感じ)」
「(なるほどな…)」
店主から恋歌の仕事を手伝って欲しいと言われたので、恋歌の横について手伝っていると、恋歌目当てに本屋に来た男たちが現れてはローの姿を見てすぐに帰って行く。
その様子に店主は満足そうに、カウンターで恋歌の淹れた紅茶を飲んで、本を読んでいる。
ローは逃げ帰って行く男たちを見て、自分をバイトに入れた理由がわかった。
《今日はローがいてくれるから仕事が早い気がする》
「…そりゃなにより」
いつも仕事を妨害されている恋歌だが、今日に限っては誰も話しかけに来ないので、仕事がさくさくと進んでいく。
ローがいることで誰も話しかけに来ないので、ローのおかげと言えばその通りではある。
「上の方はおれがやる
恋歌は下の方だけ頼む」
《わかった》
仕入れた本の品出しも、いつもは一段だけの台に乗って出しているが、ローがいればそれが必要ない。
『(背が高いってのは便利だね)』
掃除も品出しも自分より背の高い人がいてくれるだけで仕事がはかどり、いつもより楽しい気もする。
「……なんだ」
《なんでもないよ》
一緒に働けていることが嬉しい恋歌は、下からじーっとローを見て笑っている。
手を動かせと言われ顔を無理やり下に向けられたが、それでも恋歌は楽しそうに笑っている。
「(うんうんうんうん、これぞ青春)」
その微笑ましい様子に店主は、紅茶のおかわりを頼むのをしばらく我慢した。
「お昼よ!」
ばーん、と扉を開けて入ってきたアミは、一直線に恋歌の元へ歩いてくる。
「あら、なにしてるの?」
「バイトだ
お前…もう少し静かに入ってこいよ…」
あまりにもうるさいアミの登場に、ローが眉間にシワを寄せるが、そんなのはお構いなしに恋歌の手を掴む。
「あんたも一緒に来る?」
店主の了解もなしに恋歌を連れて行こうとするが、店主がなにも言わないということは、これが日常なのだろうと、ローは行くと答えた。
「いってらっしゃーい」
ひらひらと手を振りながら見送ってくれる店主に恋歌が頭を下げて3人で町へ。
お昼ご飯をどこで食べるかを悩んだ末、ペンギンがいるレストランに行こうということになった。
「あれ、珍しい組み合わせじゃんか」
お昼時でばたばたと忙しくしているペンギンが3人の来店に気づき、席に案内をしてくれる。
「さぁ!なんにする?」
滅多に来ないローも来てくれたということで、テンションの高いペンギンは伝票を構えて注文をとる。
注文をペンギンに伝え、仕事に戻って行った。
しばらくして料理が運ばれてきたので、少し談笑を交えながら食事を進めていると、扉が大きな音を立てて開けられた。
何事かと店中の人が視線を向けると、そこにはしばらく姿を見せなかったゴスロリ少女がいた。
『(嫌な予感…)』
「この町の女は扉を静かに開けられねぇのか」
「それは誰の事を言っているのかしら?」
食事をもぐもぐと食べながら、誰かを探している様子のクロエを見て、逃げようかどうしようかと考えたが、席を立つ前にクロエと視線が合ってしまった。
「ちょ、ちょっとあんた!
みんな順番に並んでるんだ
ちゃんと並んでくれよ」
並んでいる人たちを押しのけて、店内にはいってこようとするクロエをペンギンが止める。
「は?あんた誰」
「誰って…ここの店員だけど…」
ク「わたしはロー先生と…そこのインチキ占い師に用があるのよ」
「ローさんと…インチキ占い師って、誰だ?」
そんな話など聞いた事がないと、ペンギンが首を傾げるが、クロエはペンギンを押しのけて、 恋歌たちが座っている席に向かってこようとする。
「ちょっと!ちゃんと並べって!!」
「うるっさいわね!
ロー先生には話があるんだから通しなさいよ!」
店の入り口で争っている二人を、店内の客は他人事のように見ている。
「あんたに用事だって」
「俺には用事はねぇ」
ペンギンが大変な思いをしているにもかかわらず、アミとローは普通に食事を続けている。
≪ペンギンの事助けてあげないの?≫
「……」
ローの腕をつついて目を見つめると、大きなため息をついて視線を店の入り口へ向けた。
「何の用だ」
「あ、ロー先生ぇ!
診療所に行ったら今日はおやすみだって聞いたんでぇ!」
「要件を言え」
「(恋歌以外の女には手厳しい事…)」
無駄話など一切するつもりのないローは、さっさと話を済まそうとしている。
「えっとぉ…明日の美女コンテストのペア、あたしのパートナーにはローさんを指名したんで、それを伝えに来ました!」
「「「は?」」」
言っちゃった、と言いながら楽しそうにしているクロエとは対照的に、ローだけではなく店内の人間すべての行動が止まった。
「おれを…指名しただと…」
「はい!だから明日はあたしとずっと一緒にいてくださいね!」
このコンテストは男が女を誘いエントリーするのが暗黙の了解ではあるが、逆の事も可能ではある。
エントリーしたい女が男のパートナーを選ぶことができる。
元々このコンテストは小さな町で、カップルを誕生しやすくする為にパートナー制を設けたのが始まり。
ここ数年はアミの独壇場ではあったが、クロエはコンテストの趣旨を逆手に取り、自分でローをパートナーに指名した。
「そ、れは…」
ちらっと恋歌の方を見るが、何を考えているかわからない表情をしている。
「俺に拒否権はねぇのか」
「ええー!!なんで拒否するんですかぁ!?」
「できるのか、できねぇのか」
「出来ない事はないですけどぉ…
あたしの方からコンテストの棄権をしないとだめなんです」
「うそだろ…」
こんな形で巻き込まれるとは思っていなかったローは、唖然とした顔でペンギンに助けを求めるように視線を向けたが、ペンギンにも良い策はないようで首を横に振られた。
「あんたもその制度知ってたんだ
どうせ祭りの前日まで黙ってたのも考えがあってのことでしょうしね」
「ふふふ、年増にしては察しがいいわね
そうよ
前日なら今からどうしようもないでしょ?」
「だから…誰が年増だっての…」
コンテストにエントリーするパートナー同士は基本的に一緒にいなければいけないという決まりがある。
だが、男側が逃げるという事はこのコンテストではタブーとされている。
「ロー先生は逃げませんよね?」
「……ちっ」
ローは全く納得はしていないが、この町に住んでいる以上、町の決まりには従うつもりでいる。
「そこのインチキ占い師はコンテストにもエントリーしてないんでしょ?
ロー先生は明日あたしがもらうわ」
ぐいっと服を掴まれて顔を近づけながら得意げに笑うクロエに、恋歌はクロエの胸を押して離れた。
≪私の占いは星に聞いた結果
自分の望んだ結果ではなかったからといってインチキというのはやめて≫
ノートに字を書いてクロエに見せると、はっと鼻で笑われた。
「なにそれ!このタイミングであんたの言いたいことがそれ!?
元からあんたの占いなんて信じてなかったけど、そんなことどうでもいいわ
後ね、この間も言ったけどあたしに言いたいことがあるなら、ちゃんと!声に出して!文句言いなさい
それ以外は受け付けてないわ」
それだけを言うと満足したのか、ローににこやかにまた明日と手を振りながら嵐のように去って行った。
「ローさん…明日一日の辛抱だ…」
「…明日おれは風邪をひく予定ということにならねぇか」
「その場合あの子がヴォルフの家まで来ちまうからやめてくれ」