小さな友情

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「キャプテン!!海が見えた!!」

「ああ!」

走り続ける事約数分。

森を抜け砂浜に出ると、先ほどの奇襲が嘘のようにぴたりと止まり、波の音だけが聞こえる程静かになった。

「…もう追ってこないね」

「ああ…

なんだってんだ、この森は…」

朝にあった不気味な雰囲気もなくなり、今は昨日上陸したときのような普通の森の雰囲気が漂っている。

恋歌、怪我は?」

『わたしは、大丈夫』

抱えていた恋歌をそっと砂浜におろし、鳥に襲われた時に怪我をしていないかを確認すると、少しかすり傷ができているが大きな怪我はなさそうでほっと息をはく。

「おい駄犬

お前らは怪我してんだろ」

「…おれは恋歌の傍にいれば回復する

こいつを診てやれ」

つん、と恋歌の腕の中にいるシリウスをつついてから声をかけるが、おにぎりの方はまだ震えておりべったりと恋歌に引っ付いている。

それを引き剥がすようにひょい、と抱えてやれば白い毛が少し血で赤く染まっており、触れている手からがたがたと震えている振動が伝わってくる。

「…見たとこ致命傷はねぇ

船に戻って手当てしてやる

駄犬、お前もだ」

「……」

一先ず今すぐ治療をしなければならない傷はないと判断し、おにぎりより傷の多いシリウスも恋歌の近くにいれば回復するとはいえ、ひとまず診せろと言えばものすごく嫌そうな表情を浮かべた。

「行くぞ」

おにぎりを抱えたローはあたりを見渡して現在地を確認し艦まで戻るために足を進める。

「ほんとにおにぎりはここで過ごしてたのかな…」

「…さぁな」

ローの傍も安心するのか小さな体を丸めて腕の中にすっぽり収まっているおにぎりは、どうやって今までここで生きてきたのかさらにわからなくなった。

「おれが動物の言葉もわかるクマだったらよかったのに…ごめん…」

「なんで急に落ち込んでんだ!!」

急に落ち込み始めたベポにローが怒鳴り、元気づけるように背中を強く叩いた。

「こいつの反応を見るにこの森に知り合いはいなさそうだ」

森に入ってもおにぎりの反応は初めて来たように視線を彷徨わせており、罠に引っかかったり、他の獣たちから逃げる術を持っていないところを見ると、どうにもこの森で生活していたようにも見えない。

「おそらく何かが原因で飼い主か親とはぐれたんだろ」

「そっか…じゃあ近くの島まで送ってあげてもいい?」

「ああ」

一度ここまでかかわったからにはローもおにぎりをこの島に見捨てていく事はしない。

「一番近い島を探す

頼んだぞ」

「あ、アイアイ!!」

航海士であるベポの航海術を頼りにしていると、もう一度背中を叩いてやるとびしっとポーズを決めて返事をした。

「あ!戻ってきた」

「シリウスとおにぎりぼろぼろじゃん!」

「救急箱とってくる!」

戻って来るまで外を警戒して艦を守っていろと指示を受けていたシャチとペンギンは、全員無事に戻ってきた事に一先ずほっと胸をなでおろした。
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