出会いから出航まで
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しばらく無言の睨み合いが続いたが、せっかく店主が用意してくれたお湯も冷めてしまうし、こうなったローが一歩も譲らないということは分かっている。
折れるしかない恋歌は、ため息をついてローに背中を向けた。
ぷちぷちとブラウスのボタンを外して脱ぎ、着替えにと用意していた大きめのシャツを羽織る。
《それ貸して》
「ん?ああ」
思ったより肌がべたべたしたので、ローにジェスチャーでお湯とタオルを貸して欲しいと伝えると、絞ったタオルを渡してくれた。
「(普通に脱ぐのか…)」
自分が言ったこととはいえ、こんなにあっさり脱ぐとは思っていなかったローは、一瞬見えた恋歌の背中に視線を向けてしまい意識を飛ばしていた。
火傷がないか心配なのは本当なので、脱げと言った言葉の中にやましい気持ちは一切なかったが、目の前で年頃の女、ましてや恋歌に服を脱がれるとどきどきしてしまうのは仕方のないことだった。
《どうかした?》
「いや…」
いつの間にかシャツのボタンを止めずに、手で胸元を押さえて振り向いていた恋歌に、ぼーっとしていたのを心配され目の前で手を振られた。
一度息を吐いて、紅茶をかけられた場所である胸元のシャツを少しずらすと、若干ではあるが赤くなっている。
「この程度なら薬を塗っときゃ治る」
鞄から軟膏の容れ物を取り出し、塗ってやろうと指に軟膏をとり、赤くなっている箇所に触れた。
『ん…』
「…え?」
『(しまっ…!)』
思ったよりひんやりとした感覚に、思わず声が出てしまい、ローが驚きで固まった。
「恋歌…今…」
『(こ、こんなはずじゃ…)』
初めてローに聞かれる声がこんな声になるとは思わず、恥ずかしさでぶわっと赤くなり、口を押えて椅子から立ち上がる。
≪今のは…その…≫
手話も指文字も頭が回らずうまく使えない。
あたふたしている恋歌に、ローも椅子から立ち上がって近づいていく。
「恋歌」
ローと視線を合わせる事ができない恋歌の顎を掴んで上を向かせる。
恥ずかしさで赤くなった頬に潤んだ瞳。
その姿に心臓がぎゅっと縮み、息がしにくくなるほど鼓動が早まる。
そして先ほど初めて聞いた声は、透き通るような声で、一瞬だったとはいえ心に残る声だった。
「(もう一回…ちゃんと聞きてぇ…)」
理由があって話せない恋歌に、言ってはいけない事だとはわかってはいるが、ちゃんと聞きたいと思ってしまう声。
だが、それは恋歌の事を考えればローが我慢をしなければいけなかった。
視線を泳がせて困っている恋歌を見下ろし、大きなため息をつくと、恋歌の顎から手を離した。
「悪い
これやるから寝る前にもう一回塗れ
悪化するようなら診療所に来い」
塗ってくれた軟膏の入った容器を恋歌に渡し、頭を一度撫でて更衣室から出て行った。
『(今日からアミの家にお泊りで良かった…)』
ローが更衣室から出ていった直後、顔を赤くしたままその場に座り込む。
この状態のまま一緒の家に帰り、一緒に夕飯を食べたり、次の日の朝に一緒に出勤することなどできるはずもない。
しばらくじっと考え事をしていると、かなり時間が経っていたらしく、店主が心配して呼びに来るまで、床に座り込んだままだった。
恋歌がアミの家に止まる初日の夜。
「な、なぁ…ローさんどうしたんだ?」
「知らねぇよ!」
帰ってきてから夕飯を食べ終わり、もう寝るだけとなった今まで、ローはずっとぼーっとしていた上に、返事も生返事。
最初は恋歌がいないからかと思っていたが、それとは別の理由がありそうだと直感で感じ取った。
「なぁなぁ、ローさん元気ないけどどうかしたのか?」
「ん?
ああ…ちょっとな」
ベポが純粋に心配して聞いてみるが、答えはもらえなかった。
「なにか悩みがあるなら聞くよ!」
「そうそう!」
ベポに便乗してペンギンとシャチが声をかけてくれたので、ローは話すべきか少し考えた後、口を開いた。
「お前ら…恋歌の声って聞いた事あるか?」
「いや…ないけど…」
「そう言われてみれば笑い声も驚いた声とかも全然聞いた事ないよな」
「うんうん」
やっぱり恋歌関係だったか、とは思ったが、ちゃかしていい雰囲気ではなかったので、真剣に返答をする。
「今日…恋歌の声を聞いた」
「「「え!?」」」
思いがけない言葉に三人がローに顔を近づける。
「な、なんで!?」
「ど、どんな声だった!?」
「ローさんだけ羨ましい!!」
「なんで…っつーと、恋歌が火傷したってんで、軟膏を塗ってやったんだ
そしたらまぁ…ちょっと声が漏れて…
声は…こう…心にすっ、てはいってくるような…綺麗な声だったな」
ぽかんとする三人に、ここまで詳しく話すべきではなかったかと後悔したが、時すでに遅し。
「おれも聞きてぇ!!」
「なんでおれはそこにいなかった!!」
「そんな綺麗な声なら名前呼んでもらいたいなー」
シャチとペンギンは泣き崩れ、ベポは羨ましそうにローを見つめている。
「おまえら…うるせぇな…」
一気に騒がしくなった三人にため息をつくが、三人の反応がおもしろくてつい顔がにやけてしまった。
その後はヴォルフがうるさいと部屋に怒鳴り込んでくるまで、ローに恋歌の声について三人が質問攻めを続ける事になった。
折れるしかない恋歌は、ため息をついてローに背中を向けた。
ぷちぷちとブラウスのボタンを外して脱ぎ、着替えにと用意していた大きめのシャツを羽織る。
《それ貸して》
「ん?ああ」
思ったより肌がべたべたしたので、ローにジェスチャーでお湯とタオルを貸して欲しいと伝えると、絞ったタオルを渡してくれた。
「(普通に脱ぐのか…)」
自分が言ったこととはいえ、こんなにあっさり脱ぐとは思っていなかったローは、一瞬見えた恋歌の背中に視線を向けてしまい意識を飛ばしていた。
火傷がないか心配なのは本当なので、脱げと言った言葉の中にやましい気持ちは一切なかったが、目の前で年頃の女、ましてや恋歌に服を脱がれるとどきどきしてしまうのは仕方のないことだった。
《どうかした?》
「いや…」
いつの間にかシャツのボタンを止めずに、手で胸元を押さえて振り向いていた恋歌に、ぼーっとしていたのを心配され目の前で手を振られた。
一度息を吐いて、紅茶をかけられた場所である胸元のシャツを少しずらすと、若干ではあるが赤くなっている。
「この程度なら薬を塗っときゃ治る」
鞄から軟膏の容れ物を取り出し、塗ってやろうと指に軟膏をとり、赤くなっている箇所に触れた。
『ん…』
「…え?」
『(しまっ…!)』
思ったよりひんやりとした感覚に、思わず声が出てしまい、ローが驚きで固まった。
「恋歌…今…」
『(こ、こんなはずじゃ…)』
初めてローに聞かれる声がこんな声になるとは思わず、恥ずかしさでぶわっと赤くなり、口を押えて椅子から立ち上がる。
≪今のは…その…≫
手話も指文字も頭が回らずうまく使えない。
あたふたしている恋歌に、ローも椅子から立ち上がって近づいていく。
「恋歌」
ローと視線を合わせる事ができない恋歌の顎を掴んで上を向かせる。
恥ずかしさで赤くなった頬に潤んだ瞳。
その姿に心臓がぎゅっと縮み、息がしにくくなるほど鼓動が早まる。
そして先ほど初めて聞いた声は、透き通るような声で、一瞬だったとはいえ心に残る声だった。
「(もう一回…ちゃんと聞きてぇ…)」
理由があって話せない恋歌に、言ってはいけない事だとはわかってはいるが、ちゃんと聞きたいと思ってしまう声。
だが、それは恋歌の事を考えればローが我慢をしなければいけなかった。
視線を泳がせて困っている恋歌を見下ろし、大きなため息をつくと、恋歌の顎から手を離した。
「悪い
これやるから寝る前にもう一回塗れ
悪化するようなら診療所に来い」
塗ってくれた軟膏の入った容器を恋歌に渡し、頭を一度撫でて更衣室から出て行った。
『(今日からアミの家にお泊りで良かった…)』
ローが更衣室から出ていった直後、顔を赤くしたままその場に座り込む。
この状態のまま一緒の家に帰り、一緒に夕飯を食べたり、次の日の朝に一緒に出勤することなどできるはずもない。
しばらくじっと考え事をしていると、かなり時間が経っていたらしく、店主が心配して呼びに来るまで、床に座り込んだままだった。
恋歌がアミの家に止まる初日の夜。
「な、なぁ…ローさんどうしたんだ?」
「知らねぇよ!」
帰ってきてから夕飯を食べ終わり、もう寝るだけとなった今まで、ローはずっとぼーっとしていた上に、返事も生返事。
最初は恋歌がいないからかと思っていたが、それとは別の理由がありそうだと直感で感じ取った。
「なぁなぁ、ローさん元気ないけどどうかしたのか?」
「ん?
ああ…ちょっとな」
ベポが純粋に心配して聞いてみるが、答えはもらえなかった。
「なにか悩みがあるなら聞くよ!」
「そうそう!」
ベポに便乗してペンギンとシャチが声をかけてくれたので、ローは話すべきか少し考えた後、口を開いた。
「お前ら…恋歌の声って聞いた事あるか?」
「いや…ないけど…」
「そう言われてみれば笑い声も驚いた声とかも全然聞いた事ないよな」
「うんうん」
やっぱり恋歌関係だったか、とは思ったが、ちゃかしていい雰囲気ではなかったので、真剣に返答をする。
「今日…恋歌の声を聞いた」
「「「え!?」」」
思いがけない言葉に三人がローに顔を近づける。
「な、なんで!?」
「ど、どんな声だった!?」
「ローさんだけ羨ましい!!」
「なんで…っつーと、恋歌が火傷したってんで、軟膏を塗ってやったんだ
そしたらまぁ…ちょっと声が漏れて…
声は…こう…心にすっ、てはいってくるような…綺麗な声だったな」
ぽかんとする三人に、ここまで詳しく話すべきではなかったかと後悔したが、時すでに遅し。
「おれも聞きてぇ!!」
「なんでおれはそこにいなかった!!」
「そんな綺麗な声なら名前呼んでもらいたいなー」
シャチとペンギンは泣き崩れ、ベポは羨ましそうにローを見つめている。
「おまえら…うるせぇな…」
一気に騒がしくなった三人にため息をつくが、三人の反応がおもしろくてつい顔がにやけてしまった。
その後はヴォルフがうるさいと部屋に怒鳴り込んでくるまで、ローに恋歌の声について三人が質問攻めを続ける事になった。