出会いから出航まで
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『(こんなもんかな)』
アミの家にしばらく泊まるために、荷物を用意していると、こんこんと扉がノックされた。
扉を開けると言い表しにくい顔をしたローが立っていた。
《どうしたの?》
「…聞きてぇことがある」
《取り敢えずどうぞ》
部屋にローを通せば、バッグに荷物を詰めているのを見て、顔をしかめた。
「…今朝のこと、怒ってるわけじゃねぇんだよな?」
《今朝のこと?
怒るところあった?》
「関係ないならいい…」
あんなことをしてしまった日の夜に、しばらく出ていくと言われて、自分のせいなのではと思っていたが、違うようで安心した。
「しばらくってのはどれぐらいなんだ」
《アミはいつまでいてくれてもいいって言ってくれてるんだけどね
最大で2週間かな》
「そんなに…か…」
一先ず祭りまでが最長かと思い言ってみたが、ローはその期間の長さに驚いて、少し落ち込んでいるように見える。
『(わ…)』
今朝から様子のおかしいローに、何かあったのかと下から覗き込むと、むぎゅっと音が出そうなぐらい強く抱きしめられた。
「(恋歌が…この家からいなくなる…
そんなこと考えた事もなかった…)」
『(ほんとにどうしたんだろう…)』
当たり前だと、恋歌が側にいることは変わらないことだと思っていたが、それが急に当たり前ではなくなる。
今生の別れでもない上に、町では会える。
だが、どうしようもなく寂しい。
腕の中にある温もりがなくなる。
それが唐突すぎて、頭の整理ができていない。
ぽんぽんと背中を優しく叩かれ、あやされているとわかっているが、簡単に手放せそうにない。
「何かあったらおれに言え
早く帰ってきてもいいからな」
心配してくれているとわかり、昔よりがっちりした身体にすり寄ると、ローも抱き締める力を強める。
『(わたしはわたしの信じる運命を貫き通すよ…)』
恋歌もこの温もりを簡単に手放すつもりはない。
アミの家への宿泊を決めたのは、クロエを前にすると、どうしても弱気になってしまう自分を叱責するため。
優しい同居人たちの運命も、自分自身の運命も、ヴォルフとの約束を果たし、大事な人との約束を果たすために。
次の日の朝は恋歌の荷物がいっぱいだったので、一度ローがアミの家に立ち寄り、荷物を持ってついてきてくれた。
「あら、荷物持ちご苦労様」
「うるせぇ
何かあればすぐに連れて帰るからな」
「はいはい」
若干不機嫌気味のローに苦笑いしながら、恋歌の荷物を入れてもらう。
《ありがとう》
「そういやあんたに聞きたいことあるんだけど」
「なんだ」
「クロエって女知ってる?」
すごい直球で聞くなと思ったが、考えてみればローからクロエのことをどう思っているかというのは、聞いたことはなかったなと視線をローへ向ける。
「ああ、毎日診療所に来る女だな
回診の時も帰りにもよく見かける
正直鬱陶しくなってきたところだ
そいつがどうかしたか?」
「いや…見事に付き纏われてるなって思って少し同情をね…」
『(そっか…ローからしたらそういう風に見えてるんだね)』
取り敢えずはローからクロエに良い印象はなさそうでほっとした。
「まさか…まだあいつにちょっかいかけられてんのか?」
「誰の所為よ!誰の!!」
「は?」
アミに怒鳴られ、ぽかんとした顔をしていると、アミの口を恋歌が塞いでいた。
「あ、ごめん
つい…」
「今のは…どういうことだ…」
《なんでもないよ》
ローとアミの間に入って、愛想笑いをするが、ローは納得のいっていない顔をしている。
「ふん、はっきりしないでふらふらしてるあんたに言うことなんかないわよ!
恋歌のことはわたしに任せてさっさと仕事行きなさい!」
「お、おい!」
ぐいぐいとローの背中を押して、無理やり家から追い出して、アミはふうと息を吐いた。
「ごめんね
余計なこと言っちゃった」
《ううん、大丈夫
ありがとうね》
自分のために言ってくれた事なので、大丈夫だと笑顔で返し、仕事に行くためにアミが準備をするというので、リビングで待っているようにと言われた。
『(今日の夜は星が見えるといいな)』
雲ひとつない晴天の空を見て、初めての友人宅でのお泊まりに少しだけ夜が楽しみになった。
アミの家にしばらく泊まるために、荷物を用意していると、こんこんと扉がノックされた。
扉を開けると言い表しにくい顔をしたローが立っていた。
《どうしたの?》
「…聞きてぇことがある」
《取り敢えずどうぞ》
部屋にローを通せば、バッグに荷物を詰めているのを見て、顔をしかめた。
「…今朝のこと、怒ってるわけじゃねぇんだよな?」
《今朝のこと?
怒るところあった?》
「関係ないならいい…」
あんなことをしてしまった日の夜に、しばらく出ていくと言われて、自分のせいなのではと思っていたが、違うようで安心した。
「しばらくってのはどれぐらいなんだ」
《アミはいつまでいてくれてもいいって言ってくれてるんだけどね
最大で2週間かな》
「そんなに…か…」
一先ず祭りまでが最長かと思い言ってみたが、ローはその期間の長さに驚いて、少し落ち込んでいるように見える。
『(わ…)』
今朝から様子のおかしいローに、何かあったのかと下から覗き込むと、むぎゅっと音が出そうなぐらい強く抱きしめられた。
「(恋歌が…この家からいなくなる…
そんなこと考えた事もなかった…)」
『(ほんとにどうしたんだろう…)』
当たり前だと、恋歌が側にいることは変わらないことだと思っていたが、それが急に当たり前ではなくなる。
今生の別れでもない上に、町では会える。
だが、どうしようもなく寂しい。
腕の中にある温もりがなくなる。
それが唐突すぎて、頭の整理ができていない。
ぽんぽんと背中を優しく叩かれ、あやされているとわかっているが、簡単に手放せそうにない。
「何かあったらおれに言え
早く帰ってきてもいいからな」
心配してくれているとわかり、昔よりがっちりした身体にすり寄ると、ローも抱き締める力を強める。
『(わたしはわたしの信じる運命を貫き通すよ…)』
恋歌もこの温もりを簡単に手放すつもりはない。
アミの家への宿泊を決めたのは、クロエを前にすると、どうしても弱気になってしまう自分を叱責するため。
優しい同居人たちの運命も、自分自身の運命も、ヴォルフとの約束を果たし、大事な人との約束を果たすために。
次の日の朝は恋歌の荷物がいっぱいだったので、一度ローがアミの家に立ち寄り、荷物を持ってついてきてくれた。
「あら、荷物持ちご苦労様」
「うるせぇ
何かあればすぐに連れて帰るからな」
「はいはい」
若干不機嫌気味のローに苦笑いしながら、恋歌の荷物を入れてもらう。
《ありがとう》
「そういやあんたに聞きたいことあるんだけど」
「なんだ」
「クロエって女知ってる?」
すごい直球で聞くなと思ったが、考えてみればローからクロエのことをどう思っているかというのは、聞いたことはなかったなと視線をローへ向ける。
「ああ、毎日診療所に来る女だな
回診の時も帰りにもよく見かける
正直鬱陶しくなってきたところだ
そいつがどうかしたか?」
「いや…見事に付き纏われてるなって思って少し同情をね…」
『(そっか…ローからしたらそういう風に見えてるんだね)』
取り敢えずはローからクロエに良い印象はなさそうでほっとした。
「まさか…まだあいつにちょっかいかけられてんのか?」
「誰の所為よ!誰の!!」
「は?」
アミに怒鳴られ、ぽかんとした顔をしていると、アミの口を恋歌が塞いでいた。
「あ、ごめん
つい…」
「今のは…どういうことだ…」
《なんでもないよ》
ローとアミの間に入って、愛想笑いをするが、ローは納得のいっていない顔をしている。
「ふん、はっきりしないでふらふらしてるあんたに言うことなんかないわよ!
恋歌のことはわたしに任せてさっさと仕事行きなさい!」
「お、おい!」
ぐいぐいとローの背中を押して、無理やり家から追い出して、アミはふうと息を吐いた。
「ごめんね
余計なこと言っちゃった」
《ううん、大丈夫
ありがとうね》
自分のために言ってくれた事なので、大丈夫だと笑顔で返し、仕事に行くためにアミが準備をするというので、リビングで待っているようにと言われた。
『(今日の夜は星が見えるといいな)』
雲ひとつない晴天の空を見て、初めての友人宅でのお泊まりに少しだけ夜が楽しみになった。