恋歌がランに魔力を渡した後は、ローが怪我の治療の為に2人を引き離しに来たため、今は誰からも見えない死角でローの治療を受けている。

ペンギン、シャチ、ベポの3人は既にローの治療を受け終わっており、ウィリアムの手伝いをするために避難所内をうろちょろしており、シリウスは泣き疲れて眠ってしまったメアリの元にいる。

「ほら、シャツ脱げ」

『うん』

恋歌を人目につかない場所に連れてきたのは、シャツを脱がなければ手当てできない場所からも血が滲んでいるのを見つけていたから。

目の前でシャツを脱ぎ下着姿になった恋歌はローに背中を向け、少しひんやりとする消毒液が背中の傷をなぞっているのを感じる。

おそらく建物に弾き飛ばされた時に着いた傷で、少しぴりっとした痛みがあるが、耐えられないわけではなくぼーっと目の前の何もない空間を見つめている。

「足も診せろ」

背中は消毒の後に軟膏を塗っただけで手当は終わり、合流した時から足を庇っている事は気づいていたため、次は足だと言えば脱いだシャツを軽く羽織ってから振り向いた。

「また銃で撃たれたのか」

『…うん』

スカートから覗く白い脚に一筋赤い線があり、もう出血は止まっているが傷を負ってからも戦ってしまったため傷口が泥で汚れてしまっている。

「傷口を洗い流す

これも脱げ」

真水を用意し始めたローは濡れないようにニーハイを脱ぐようにと指示すると、傷がある方の靴とニーハイを脱いだ。

硬く絞った清潔なタオルで恋歌の傷とその周りの汚れを拭ってやると、恋歌がぴくりと反応したのがわかった。

「どうした」

『え…あ、ううん

なんでもない…』

「……」

ぱっと視線を逸らした恋歌の顔は少し赤く染まっており、なにかしてしまったかと思ったがその理由は一瞬で理解できた。

タオルではなく掌で撫でるように脚を触れば、また恋歌の身体がびくりとはねた。

「じっとしてろ」

『あ、ご、ごめん…』

顔を真っ赤にしてみないようにぎゅっと目を閉じている恋歌に加虐心が刺激されたが、まずは治療を終わらせようと消毒を済ませて傷には包帯を巻いた。

「他に怪我したところはねぇか」

『うん、もうないよ

ありがとう』

元々ウィリアムにも少し治療をしてもらっており、腕にはローが巻いていない包帯が巻かれている。

足を治療してもらわなかったのは恋歌が歩けないほどの怪我ではないと判断して治療をお願いしなかったから。

それにあの時はすべての傷を治療してもらう時間もなかった。

それを今少し後悔しているところではある。